OJTとは?研修でのメリットと効果的な進め方。OFFJTとの違いを解説!
2022-10-17
大後 ひろ子
C-OLING代表 ブランディングコンサルタント
組織人材育成・マネジメント
新入社員育成・中と社員の教育をする上で、多くの企業が取り入れているOJTですが、実際にはOJTを体系化できずに苦戦している現場も多いようです。
今回の記事ではOJTの基本的な意味に加え、現場で混同されがちなOFF-JTとの違いや、効果的なOJTのベースとなる4段階の指導についても解説していきます。
OJTとOFF-JTとは
まずは、現場で混合されやすいOJTとOFF-JTの違いとそれぞれの特性について解説します。
OJTとは
OJTとは「On-The-Job Training」の略称です。とは、実際の職務現場で業務を通して行う教育訓練のことで、通常の業務内で実施される訓練を指します。
OJTでは、上司や先輩社員等の指導担当者となって手本を見せてから、部下や新入社員に実施させて、実践的に知識やノウハウを伝えます。
ひとつ一つの業務の後に指導担当者が評価を行い、実践と完全を繰り返します。このサイクルを繰り返しながら指導内容のレベルを徐々に上げていく訓練方法です。
OFF-JTとは
OJTと内容が混同される言葉に「OFF-JT」というものがあります。
OFF-JTとは、「Off The Job Training」の略称で、研修などの実務の場を離れて行う教育訓練を指します。
OFF-JTでは知識のインプットに重きを置きます。研修のために特別な時間を設け、専門的な知識や業務内容を研修や講習会など座学形式で教えます。例えば新入社員へのビジネスマナー研修やロジカルシンキング研修、中途社員や中堅社員へのマネジメントスキル研修や人材育成研修などが挙げられます。
OJTとOFF-JTの違い
OJTとOFF-JTの大きな違いは、OJTは通常業務の一環としてアウトプットを中心に行われるのに対して、OFF-JTは研修のために特別な時間を設けてインプットに注力する点です。
人材育成に向けたOJT、OFF-JTにはそれぞれメリットや課題があるため、本人の成長を見極めながら、両者を併用することで効果的な研修を実施しましょう。
OJTのメリット
OJT制度の導入によって得られる、教えられる側と指導担当者へのメリットについて解説します。
①個人に合わせた内容やスピードで能力を伸ばす
OJTは集団で行われることの多いOFF-JTと違い、指導担当者と教えられる本人の1対1で指導する機会が多くあります。そのため、個人の習得のスピードに合わせて、内容やレベルを細かく調整することが可能です。一連の業務に対してわからないことの方が多い新入社員にとって、一つずつ不安や疑問を解消することができます。
②素早いフィードバック
業務終了後すぐに指導担当者からフィードバックが受けられることもOJTの魅力の一つです。
ドイツの心理学者、ヘルマン・エビングハウスによると、忘却曲線が表す記憶の定着率では、人間は1時間後には56%を忘れ、44%を覚えていると言われています。そのため、記憶が鮮明なうちに、良かった点・改善点を吸収することができるので業務を覚えやすい環境を作ることができるのです。
③即戦力化しやすい
企業を取り巻く環境が目まぐるしく変化する現代において、自社の業務内容を理解した上で変化に対応できる人材が求められます。OJTでは実務を通じて、指導担当者から現場での仕事のコツや、知っておくべき業界の基礎知識を教えてもらうことができます。
また、実務を取り扱う中で業務の責任感を感じながら研修を受けることができます。そのため、研修内容と実務のずれは少ない状態で研修後のスタートが切れるため、即戦力化しやすいのです。
④教える側の成長
OJTでは先輩や上司が新入社員や中途社員に指導担当者として研修を行います。そのため、指導担当者として分からない人にわかりやすく教える力を養うことができます。
そして、当たり前のように行っていた通常業務の必要性を再確認することで、理解度を高めることにもつながります。
この過程を通して、部下や後輩への指導力が向上し、管理者としてのスキルアップにもつながります。
⑤組織内コミュニケーションの活性化
OJTでは実務の中で研修を行うので、他の社員との連携の仕方を意識的に学ぶことができます。現場で誰がどのようなノウハウや権限をもっているのかを知ることで、研修後も質問や相談がしやすくなります。
また、研修中に取引先や他部署の社員とのコミュニケーションを取ることで、次第に社内での人脈も構築していけるでしょう。
⑥コスト削減
OJTでは、現場の上司や先輩が職場で指導するため、人材育成に要するコストを抑えることができます。OFF-JTの場合、外部講師を招いたり、有料のセミナーへ参加したり、研修環境を準備したりする必要がありますが、社内のリソースで完結するため、削減できた経費を他のリソースに回すことも可能です。
OJT研修の4段階指導
OJT研修はアウトプットに重点が置かれた研修です。OJTは「やってみせる(Show)」「説明する(Tell)」「やらせてみる(Do)」「確認、追加指導(Check)」という基本的な4段階の指導手順で行います。
Step.1 Show(やってみせる)
まずは仕事の全体像を理解してもらいます。言葉の説明で終わらせずに、指導担当者が実際の業務を見せることで、教わる側に業務の具体的なイメージを持たせます。
Step.2 Tell(説明する)
次に具体的に意味や背景も交えながら業務の内容を説明します。この時教わる側からの質問を受け付けます。この質問を受け付けることがOJTを効果的に行うポイントになります。
Step.3 Do(やらせてみる)
教わる側に、実際に業務をやってもらいます。この時指導担当者はミスがあってもカバーをしてあげられるよう、近くに待機して、教わる側が安心して挑戦することができるようにしましょう。
Step.4 Check(評価・追加指導)
「Do」の評価を行いながら、できなかった反省点や改善点、また「Tell」で教えきれなかった、より詳細なことも教えます。ここで重要なことは指導担当者の素早い第三者視点のフィードバックによって、教わる側の習得スピードが変化することです。
OJT導入の課題
即戦力化に結びつきやすいOJTですが、導入に向けては課題もあります。
①指導担当によって効果に差がでる
指導担当者の従業員エンゲージメントや個々の能力によって、研修の効果に差が出てしまうケースがあります。
「従業員エンゲージメント」についてはこちらの記事から
従業員エンゲージメントとは?注目される背景・向上施策・メリットを解説!
②再現性が低い
通常業務の中で実施される研修のため、翌年も同じように研修を行おうとしても、業種によっては案件の違いやマーケットの変化によって、昨年と全く同じスキルや知識を教えることができないケースもあります。
③指導担当の負担が大きい
指導担当者にあたる先輩職員や上司は、自身の通常業務も兼務しています。そのため研修期間中は、指導内容の策定や研修効果の分析などの業務が増え、負担が大きくなってしまいます。
④企業として指導担当の通常業務外手当が必要になる。
指導担当者が研修や指導に割く時間が、通常業務時間外にまで及んでしまった場合は、企業として残業代などの別途手当を用意する必要が出てきます。
フィードバックで成果が変わる
指導担当者にも教わる側にも、通常業務に対してイレギュラーの多いOJTですが、効果を最大化するためにはフィードバックの質を上げることが重要です。アウトプットとフィードバックを繰り返すことで、実践で役立つスキルを身につけることができるのです。
また、適切なフィードバックを行うことで、指導担当者と教わる側の間に信頼関係を結ぶことができ、今後の業務でも大きな効果を発揮することでしょう。
まとめ
即戦力が求められる現代において、実際の業務を通して訓練を行うOJTを正しく活用することで、これからの人材育成を効果的なものにすることができるでしょう。またOJTの実施によって指導担当者の業務への習練度の向上や、仕事への魅力や、やりがいを再確認することにより従業員エンゲージメントを高めることにもつながります。
経営トップやマネジメント層は、OJTが現場で効果的に展開されるためにも、企業としてリソースの配分やOFF-JTとの併用を検討することも重要です。業種や業務によってもOJTの方法は多岐にわたります。ぜひ今回の記事を参考に、自社にあった再現性の高い人材教育について考えてみましょう。
WRITER
大後 裕子
C-OLING代表
生活用品メーカーで10年間企画職に従事し、企画立ち上げから海外工場との商談、販促まで商品開発のゼロから一貫して行い、多くの商品をブランディングし、リリース。 8年販売され続けるヒット商品を始め、開発商品点数累計約1,200点、約1,700店舗へ導入。ブランディングを主軸とした、経営コンサルティング、 社内教育の3つの事業を通して、多くの人の生活に豊かさを提供ができる企業を社会に増やしたいと考えています。