コンテクストとは?意味と使われ方、日本と世界との違いについても解説
2022-10-25
大後 ひろ子
C-OLING代表 ブランディングコンサルタント
組織その他
コンテクストとは、英語で「文脈」「脈絡」を意味する言葉です。またビジネスにおいてはコミュニケーションの基盤となる価値観・共通認識・体験などの共有度(理解度)といった意味でも使用されます。
今回の記事ではコンテクストの意味や注目される背景、またマーケティングやIT業界、建築・デザインなどあらゆるシーンでの使い方について解説します。
コンテクストとは?
昨今、コンテクストという言葉をビジネスシーンでも耳にする機会が増えてきました。元々マーケティングやIT用語として活用されてきたコンテクストの意味と類似の用語について解説します。
コンテクストとは「文脈」「脈絡」
コンテクスト(Context)とは、英語で「文脈」「脈絡」を意味する言葉です。また文章によっては「状況」や「前後関係」「背景」などの意味を含みます。そこから、特定の物事を指すのではなく、「場の空気を読む」の「空気感」というような使われ方をします。
テクストとコンテクストの違い
テクストは特定の文章を指す一方、コンテクストはその文章の文脈からなる周辺情報を指します。
たとえば「仕事でミスをしてしまった」という文章に対して、文章そのものをテクスト、ミスを起こしてしまった原因や背景がコンテクストと捉えます。
コンテクストの定義
ビジネスシーンで注目されるコンテクストの定義について解説します。
コンテクストとはコミュニケーションの基盤
ビジネスにおけるコンテクストは、IT用語として使用する「関連データ」といった意味合いが強くなります。
しかし昨今注目されているのは、コミュニケーションのシーンでのコンテクストです。コミュニケーションにおいて、「言葉では伝わりにくい物事の背景や状況判断のための材料」をコンテクストと呼びます。このようにコミュニケーションの基盤となる価値観や共通認識に対しての理解度といった意味で使用されます。
コンテクストが注目される理由
ビジネスシーンで注目されるその背景と、日本と世界のコンテクストの文化の違いについて解説します。
日本と世界のコンテクストの文化の違い
日本は「おもてなし」を代表するように「空気を察する文化」と言われます。このような文化背景には言語も関係しています。日本語は、文末に述語がくるので、言葉や相手の表情から文脈(コンテクスト)を読みとりながらコミュニケーションをとることが多い言語です。一方英語は、主語の後に動詞が続くので、相手が何を伝えたいのか理解しやすいというコミュニケーションの違いも大きく関係しています。
また国によって、その土地で発生しやすい地震や津波、川の氾濫などの天災、他にもそれぞれの国家設立までに起きた戦争などの背景によっても、コンテクストの重要性が違っているのです。
コンテクストが注目される背景
企業が目指す、グローバル展開やダイバーシティ的な人材の育成にも、コンテクストを意識した対応が必要です。
人は、コミュニケーションにおいて同じ単語を使用しても、それぞれが持つ言語や文化によって違う価値観を持って捉えます。ここから「言わなくてもわかるだろう」「言ってくれないとわからない」という双方の行き違いが生じることがあるのです。
そのため企業でも、多くを察する「ハイコンテクスト」のコミュニケーションは、これからの社会のグルーバル化においてローコンテクスト文化の中では十分に機能することが難しいのです。
「コンテクスト」の使い方
「コンテクスト」の用語としての使い方について解説します。
「コンテクストを読む」とは
「文脈」「脈絡」の意味を持つ「コンテクスト」は「読む」「共有する」などの動詞と合わせて使用されます。日本語ではよく使われる「空気を読む」という表現と同じように、「コンテクスト」も「物事を判断するために、会話の流れや状況を読み取ること」という使われ方をします。
「コンテクストの生成」とは
「コンテクストの生成」と使う場合、「文脈を作成する」という意味で使用します。「生成」には、「ものが変化して他のものになる」という意味があります。つまり「コンテクストの生成」とは、「自らの解釈や自分なりの判断を加えてその情報の文脈を再定義する」という意味になります。
ビジネス・IT用語としての「関連データ」
「コンテクスト」は、マーケティングやIT用語として「関連データ」を指す言葉でもあります。ビジネスにおいては、ただデータを用いて話を進めるのではなく、「状況に応じた判断材料・条件」という意味の用語として使われています。
建築の分野での「建物のまとまり」
建築の分野においては、一般的に「建物が作るまとまり」を意味します。主に都市計画や建造物設計の場面で登場して「景観の保存」という意味を持ちます。そこから「建物の設計する際は、街のコンテクストを読むことは基本だ」という使われ方をします。
また、「現状の背景」や「関連しているデータ」といった意味でも、「既存の建物を観察する必要がある」という意味で使われることもあります。
「コンテクスト」に関する用語
コンテクストで使われる用語とそのシーンについて解説します。
コンテクストマーケティング
コンテクストマーケティングとは、消費者がいつ、なぜ欲しいと思うのか、それはどこで買うのかなど、消費者の心情や行動を予測して行うマーケティング手法の名称です。すべての人に同じマーケティング手法を用いるのではなく、消費者の生活や価値観などを考慮してベストなものをベストなタイミングで提示することで、購買意欲を高める手法なのです。
最近では「Google AdWords」や「Amazon.com」が行う、履歴や検索結果から顧客の目的や状況を把握して商品や広告を配信する手法などが、これにあたります。
コンテクストデザイン
コンテクストデザインとは、「物事の背景に存在するであろうコンテクスト」をもとに、新たな価値をデザインすることです。例えば製作者がユーザーの現状の悩みや欲望に留意してコンテンツを制作したり、みんなが懐かしく思う共通の価値観や経験などからあるあるネタを制作したりすることも、コンテクストをうまく利用できた例だと言えます。このようなユーザーの背景や状況を汲み取り、新たなサービス・コンテンツを創造するのがコンテクストデザインです。
ハイコンテクスト
ハイコンテクストとは、ひとつひとつ言葉で説明しなくても表情や体の動き、声のトーンなどの、言葉ではない部分からの情報を得て、察し合うことができる状態を指します。
つまり、相互に共通の情報や文化的な背景に対して、深い共通理解がある状態のことです。「お腹がすいた」という発言に対して「何か食べますか?」「ご飯にいきましょうか?」というような返しができることはハイコンテクストのよい例と言えます。
また、状況や相手を見て凝った表現を用いたり、あえて直接的な表現を避けたりすることもハイコンテクストの特徴といえます。
ローコンテクスト
ローコンテクストとは、ハイコンテクストとは反対に相互の共通理解がないため、あらゆる物事を言葉で表現し、具体的に表現する状況を指します。そのためローコンテクスト文化においては、物事をわかりやすい言葉で表現することを重視するので、寡黙であることや凝った表現、空気を読むといったことを評価しません。
そのため、ローコンテクスト文化圏の人たちは、日本のビジネスコミュニケーションに対して、「依頼内容が不明確」「説明が足りない」「積極的な情報共有が少ない」「ネガティブな事柄を直接的に言わない」といった印象を持ちます。
まとめ
これからの企業の経営において、よりコンテクストを意識した対応が求められます。海外展開や外国人労働者の雇用だけではなく、これからの働き手となる若い世代がグローバルスタンダードとして学ぶダイバーシティ的教育環境では、直接的でわかりやすい言葉が必要になります。
このようなビジネスを取り巻く環境の変化に向けて、自社のビジョンや経営理念の言語化、また自社ビジネスの的確な言語表現を行うことは必須です。またその際、文化や宗教上のタブーに触れないような配慮も必要です。
相手に物事を正確に伝えるには、相手の視点から考えて十分な情報を盛り込み、話の論理性を高めることが重要です。コミュニケーションのローコンテクスト化を進めるためにも、お互いに理解できるように配慮し、言葉による情報伝達の精度を高めていきましょう。
WRITER
大後 裕子
C-OLING代表
生活用品メーカーで10年間企画職に従事し、企画立ち上げから海外工場との商談、販促まで商品開発のゼロから一貫して行い、多くの商品をブランディングし、リリース。 8年販売され続けるヒット商品を始め、開発商品点数累計約1,200点、約1,700店舗へ導入。ブランディングを主軸とした、経営コンサルティング、 社内教育の3つの事業を通して、多くの人の生活に豊かさを提供ができる企業を社会に増やしたいと考えています。