アルムナイとは? 即戦力人材の確保で注目されるアルムナイ制度について解説!
2022-12-21
大後 ひろ子
C-OLING代表 ブランディングコンサルタント
組織組織開発
ビジネスにおいてアルムナイとは「退職者」を意味します。近年では、終身雇用を前提とした従来の雇用形態が崩壊し、優秀な人材を確保し続けることは年々難しくなっています。そこで注目されているのが、アルムナイの再雇用や副業などの協業、退職者とのビジネス連携といった新しい関係性の構築です。
今回の記事では、アルムナイを採用することのメリット・デメリット、また企業とアルムナイの双方に有益な関係をもたらすポイントについて解説します。
アルムナイとは?
昨今よく聞かれるようになった「アルムナイ」とは、ビジネスにおける人事領域では「企業の離職・退職した人々」を意味します。この「アルムナイ」が注目される理由について解説していきます。
人事・H Rで注目されるアルムナイとは?
「アルムナイ制度」とは、さまざまな理由で自社を退職した人を再雇用する制度のことを指し、通称「カムバック制度」「出戻り制度」などといわれています。
海外や外資系企業では、このアルムナイを再び雇用することに積極的な傾向があり、アルムナイのネットワークを事業に生かす動きもあるほどです。
それだけでなく、雇用方法の柔軟性も高いことが魅力の一つでもあります。
アルムナイ制度
- 再雇用
- 副業
- 業務提携
- 取引先化
即戦力の確保、人となりが分かった人材の確保、教育にかける時間の削減などがアルムナイの雇用の魅力と言えるでしょう。さらにこの制度を取り入れている企業は多く、ある調査によると全体の約7割の企業が退職者を再雇用した経験があるという結果があります。
アルムナイの語源
アルムナイ(alumni)とはラテン語を語源とした「卒業生」「OB,OG」を意味する複数形の英単語です。そこから、ビジネス面においては「退職者」を指しています。
アルムナイが注目される背景
終身雇用を前提とした従来の雇用形態が崩壊し、現在はさまざまな事情で退職・転職する人材の流動化が高まっています。企業ではこういった事態を避けるために、社員が退職しないよう対策を行う必要があります。しかしこうした対策は、コストの増加や業務の圧迫などが発生しやすくなる要因のひとつでもあるのです。
つまり今後の企業経営において、優秀な社員を自社だけで囲い続けることも、新規採用をするのも、両方の難易度は上がっていく事が予想されます。
そこで採用コストがかからず、ミスマッチの起きないアルムナイ制度に注目が集まっているのです。
企業とアルムナイは柔軟な関係を築くことができます。例えば、再雇用や副業などの協業だけでなく、退職したアルムナイとのビジネス連携も可能です。このように人材不足に悩む企業にとって、さまざまなメリットがあるためアルムナイ制度に注目が集まっているのです。
アルムナイ制度を活用するメリット
アルムナイ制度を活用する4つのメリットについて解説します。
①即戦力人材の確保
自社で働いた過去を持つアルムナイを再雇用や業務委託によって採用することは、社内外での経験を生かした優秀な即戦力として期待ができます。それだけでなく、アルムナイの採用は、新入社員や中途採用の教育にかかるコストも発生しづらいというメリットがあります。
②人材採用・育成のコスト削減
アルムナイ制度では、退職者本人からの応募や、在籍中の社員からの推薦で成り立つため、求人媒体を使った募集の必要がありません。さらにアルムナイの採用では、企業風土を理解した上での応募であるためミスマッチも起こりづらいのです。つまり、採用コストや研修・育成コストを大幅に削減することが可能です。
③離職率の改善
アルムナイ制度を活用することによって、在職中には聞き出すことができなかった「退職者の本音」を把握することもできます。企業はリアルな退職理由を聞き出すことで、社内評価制度や職場環境の見直しに活用することができます。そこから、同じような退職の再発を防ぎ、離職率の改善に繋げることができるのです。
④企業のブランディングの向上
アルムナイ制度を導入することで、「一度退職しても、また戻りたいと思える会社」と在籍中の社内外に印象づけることができます。そうすることで従業員エンゲージメントを高める効果もあります。また再雇用されたアルムナイが保有する社外の知見や技術を、在職者たちと共有することによって、組織内に新しいイノベーションを起こすきっかけを作ることもできるでしょう。また、業務提携という形態を取った場合、新規事業を立ち上げる際にフォローしあえる関係を構築することも可能です。
このように社内外に対して、企業成長に向けて柔軟な姿勢を持った企業としてのブランディングにつながります。
アルムナイ制度を活用するデメリット
一方アルムナイに対する施策に取り組むデメリットについて、考えられる3つの項目について解説します。
ネガティブイメージ
アルムナイ人材の採用は、まだまだ認知度の低いものです。そのため、職場によっては「一度退職した人」というネガティブなイメージを持たれてしまう可能性があります。アルムナイ人材の採用を行う場合は、社内教育を施すなどしてアルムナイという概念に対する理解を深めることが重要です。
現役社員のモチベーション低下
アルムナイ人材への待遇に対する在職者が不満を持つ場合があります。アルムナイ人材の採用は人間関係でも能力面でも高待遇となるケースが多いため、在職者に取ってはその待遇に対して不満を感じ、モチベーションの低下につながることがあります。
また「退職してもいつでも復帰できる」と思われてしまう可能性があるため、再雇用の条件設定や復職までのフローを明確に定義し、在職中の社員への説明も十分に行うことで、モチベーションの低下を抑えることができるでしょう。
情報漏洩のリスク
アルムナイ人材の採用には、元社員とはいえ社内の機密情報などが漏洩するリスクがあることを忘れてはいけません。元社員であるとついつい情報に対するガードが緩みがちですが、再雇用や副業、業務提携といったそれぞれの形態に対して、情報をどこまで開示するのか、どのように管理するのかといった対策が必要です。
アルムナイ活用のポイント
アルムナイ人材の採用は、自社で能動的にスタートすることができます。優れた人材と継続的に関係性を保つためのポイントについて解説します。
イグジットマネジメントに注力する
アルムナイ人材の採用には、「イグジットマネジメント(雇用における出口管理)」に注力しましょう。アルムナイ制度で退職者を採用し、その後もパフォーマンス高く活躍してもらうためには、そもそも円満退職していることが前提と言えます。
イグジットマネジメントとは、円満退職実現のために役立てられる計画・管理法を指します。一例では、退職時・退職後のステップアップ支援などを取り入れることで、企業に対する不満や不信感を減らし、退職後の不安を軽減することで円満退職の実現を目指すものです。
ダイバーシティ的視点を浸透させる
退職理由として「育児・介護のためフルタイムで働けない」「いずれは起業をしたい」と考える一人一人の個性を尊重し、再雇用ではなく副業や兼業、フリーランスなどの形態を提示することで、双方にとって満足度の高い人材採用を実現することができます。自社の負担にならない程度のバリエーションを用意することで、優秀な人材との関係を維持することが可能になります。
つながり続けたい企業価値・人材育成を目指す
アルムナイとよい関係性を保ち続けるには、アルムナイから「繋がっていたい!」と思う人材の育成や企業価値の創造が必須です。就労の形が多様化する現代において、学び直しや家庭の事情、キャリアアップのための他者への転職を選択した人材に対して、ネガティブなイメージを持つ風土がある会社では、アルムナイの活用は難しいと言えます。
企業としてつながり続けたいメリットや、企業文化の醸成に注力することで、アルムナイとのより良い関係を構築することができるでしょう。
まとめ
労働市場の流動化が激しくなった現代において、今後アルムナイ人材の採用は一般的なものになっていくでしょう。すでに、退職者が集うイベントの開催や、企業サイトに退職者との共有ページを作成している企業もあります。
「採用コストを削減したい!」「即戦力がほしい!」と考えている企業は、この機会に、アルムナイ採用の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
WRITER
大後 裕子
C-OLING代表
生活用品メーカーで10年間企画職に従事し、企画立ち上げから海外工場との商談、販促まで商品開発のゼロから一貫して行い、多くの商品をブランディングし、リリース。 8年販売され続けるヒット商品を始め、開発商品点数累計約1,200点、約1,700店舗へ導入。ブランディングを主軸とした、経営コンサルティング、 社内教育の3つの事業を通して、多くの人の生活に豊かさを提供ができる企業を社会に増やしたいと考えています。