マイクロマネジメントとは?組織への弊害・部下への悪影響。解決策を解説

2022-12-21

大後 ひろ子

C-OLING代表 ブランディングコンサルタント

組織組織開発

マイクロマネジメントとは、上司が部下の行動を逐一チェックし、過度に細かく部下を管理・統制を行うマネジメントスタイルのことを指します。このマイクロマネジメントは、真面目なマネージャーが陥ってしまうケースが多く、部下の成長や組織の成果に対してネガティブな影響を及ぼしてしまいます。

今回の記事では、マイクロマネジメントが起こる背景から、ビジネスにおける悪影響、そして上司ができるマイクロマネジメントの対策について解説していきます。

マイクロマネジメントとは?

「マイクロマネジメント」は、昔からある問題ですが、昨今でのリモートワークの普及に伴って、あらためて上司による部下への過度な管理、マイクロマネジメントによる弊害に注目が集まっています。

マイクロマネジメントの概要

マイクロマネジメントでは、上司が部下の行動を逐一チェックし、過度に細かく部下を管理・統制を行います。

このマネジメント方法は、業務のゴールだけでなく詳細なプロセスの指示を行い、さらに業務の途中経過の間に進捗を何度も確認を行います。そこで仮に進捗が発見された場合には、業務を行う本人ではなく、マネージャーが考えた改善案が指示されるものです。

このような過干渉な管理方法は部下に精神的な負担をかけ、モチベーションの低下、さらにはメンタルに支障をきたし、離職に繋がる可能性もあります。それだけでなく、マイクロマネジメントを行った上司自身がパワハラで訴えられるケースもあるのです。

マイクロマネジメントが起こる背景

マイクロマネジメントが起こる背景には、「上司が安心感を得るため」というケースが少なくありません。そのようなケースが発生する背景について解説します。

①リモートワークの普及 

マイクロマネジメントが増えている原因の一つとして「リモートワークの普及」が挙げられます。急速に普及したリモートワークによって、ミーティングの際にしか姿を見ることができない部下に対して、業務のゴールに直接関係ない進捗確認や、感情的な指導が行われる現象が急増しています。これはリモートワークに対するマネジメント体制が確立されていないため、自身の管理職としての仕事に対する安心感を得るために、行われているケースが多いのです。

②仕事量の増加 

マイクロマネジメントが増えている背景には、人材不足・働き方改革による「仕事量の増加」が挙げられます。また社員のライフワークバランスの向上のために、残業時間削減によって、今までより短い時間で業務を完了させなければならなくなりました。
そのため、組織の目標達成のために、上司が部下の進捗を逐一管理するマイクロマネジメントが行われるケースが増えています。

③中途採用による人材の多様化 

マイクロマネジメントが行われる背景には、「中途採用による人材の多様化」も挙げられます。昨今の終身雇用制度の崩壊により、入社から定年までその企業で務め上げる人材は減ってきています。そのため、中途採用の社員が企業のルールや風土に慣れるまで、上司はマイクロマネジメントで対応してしまうというケースが増加しています。

マイクロマネジメントが起こす悪影響
 

 

マイクロマネジメントが起こす企業や組織への悪影響について解説します。

信頼関係を壊す

チームの生産性向上には、上司と部下の信頼関係が必要不可欠です。しかし、細かな指示に従うことを望むマイクロマネジメントでは、上司がいつまでも「仕事ができない」と部下を見下しているような状況を生み出します。その状況が続くと、信頼関係が構築できず、組織はうまく機能しなくなります。

部下の成長阻害 

チームの生産性向上には、個々の従業員の主体性が欠かせません。しかしマイクロマネジメントでは、上司が個々の従業員に裁量権を与えません。そのため、部下が「自分で考えて動く」ことや「新しいことにチャレンジする」というモチベーションの向上を阻害します。その結果、業績向上のためのマネジメントのはずが、指示を待つばかりの受動的な人材を生み出してしまうのです。

組織全体のパフォーマンス低下

マイクロマネジメントによる管理下では、部下は新しいアイデアを実現できなくなります。組織の成長には、多角的な視点や、個々のメンバーの知識や意見を尊重することが重要ですが、マイクロマネジメントを行う上司は部下をただの「作業要員」として扱うため、上司の指示以上の発想や、イノベーションを起こすことができなくなります。

組織全体のメンタルへの悪影響

マイクロマネジメントによって管理される部下たちは、自分が「信頼されていない」「自分の選択に自信が持てない」「監視されている」といったマイナスの感情を抱きます。これらの感情は大きなストレスとなって、うつ症状など深刻なメンタルの不調を引き起こす原因にもなります。

上司の生産性低下

マイクロマネジメントは、部下だけでなく上司自身にも悪影響を与えます。部下を管理することに注力するあまり、本来管理職として果たすべき、事業に対する計画立案を行う重要な時間を割いてしまうのです。この謝った時間管理の方法は、短期的な悪影響だけではなく、中長期的に組織の生産性や成長の阻害につながります。

上司ができるマイクロマネジメントの対策
 

 

企業や組織の生産性向上を阻害しないために、上司ができるマイクロマネジメントの対策について解説します。

部下の自主性を重んじる

上司は部下に対して、業務の目的や最終的なゴール、遵守すべき規則やルールを提示し、 仕事の進め方については部下の自主性を重んじるようにしましょう。部下の自主性を重んじることで、ミスや思い通りにいかないこともあるかもしれませんが、長期的な視点で組織の力を強めるために、「任せる」という選択肢を選んでみましょう。

評価制度を見直す 

マイクロマネジメントに陥らないために、評価制度を見直すことも効果的です。そのために業務の権限を一部譲渡し、部下自身が自主的に考えたアイデアや新しい手法によって、成果をあげられるような評価制度を設けることも重要です。

思い込みをやめる

上司がマイクロマネジメントに陥らないためには「自分にはできたから、部下もできて当たり前」という考えをなくすことが重要です。人には個性があり、得意や不得意な分野が存在します。部下のできない部分を見つけて追求するより 一人ひとりに寄り添い、得意分野に対して裁量権を持たせられるマネジメントに切り替えると良いでしょう。


オープンクエスチョンを心がける

オープンクエスチョンとは、「はい」「いいえ」などの選択肢がなく、回答者が自由に考えて答える質問のことです。上司がマイクロマネジメントに陥らないために、部下へ質問する際は、このオープンクエスチョンを心がけましょう。例えば部下のミスに対して、「これについて、どう思いますか?」「今後どうしていく予定ですか?」などのような質問を習慣化することで、部下が自ら考える力を養います。その結果部下は自らの力で、事前にミスを回避するように成長を促すことができます。

まとめ

マイクロマネジメントは、部下のモチベーション低下や成長の妨げになるだけではなく、上司の生産性までも低下させ、組織全体のパフォーマンスを落とすという悪影響があります。 こういった事態を避けるためにも 部下の主体性を尊重し、相互に信頼関係を構築することが重要です。

ただし部下に仕事を任せる際は、ただ放任的に任せるのではなく、成果主義の考え方に基づいて裁量権を譲渡し、成果を評価できる制度を導入することが重要です。

今回の記事を参考に、リモートワークや新しい人事配置の際にも、中長期的な成長を望める組織づくりのためのマネジメントについて考えてみてはいかがでしょうか?
 

WRITER

大後 裕子

C-OLING代表

生活用品メーカーで10年間企画職に従事し、企画立ち上げから海外工場との商談、販促まで商品開発のゼロから一貫して行い、多くの商品をブランディングし、リリース。 8年販売され続けるヒット商品を始め、開発商品点数累計約1,200点、約1,700店舗へ導入。ブランディングを主軸とした、経営コンサルティング、 社内教育の3つの事業を通して、多くの人の生活に豊かさを提供ができる企業を社会に増やしたいと考えています。