主体性とは? 自主性との違い、企業で主体性を育てる実践方法を解説
2022-11-17
大後 ひろ子
C-OLING代表 ブランディングコンサルタント
組織人材育成・マネジメント
主体性とは、「周囲の意見や指示に頼らずに、自らの意志や判断に基づいて責任を持って行動すること」です。仕事やプライベートを充実させるために欠かせない素質の一つです。近年では学校教育にも主体性を重要視する方針が定められるなど、日本においてもより重要なものに位置づけられるようになりました。
今回の記事では主体性の基本的な意味から主体性のある人の特徴、自主性との違いや、組織において主体性がある人物を育てる方法について解説します。
主体性とは
主体性の定義と類義語である「自主性」との違いについて解説します。
主体性の定義
主体性は、英語では「Independence」と表記し、「責任を持って、自分の意志や判断に基づき行動すること」を指す言葉です。
つまり「主体性を求められている」状態は、「何をすべきか自ら考えて行動すること」が求められている状態を指します。 組織においては、主体性を持った業務への取り組みというのは、「その場にその人がいれば問題ない」という状態を作ることです。その結果、トップやリーダーがひとつひとつ指示を出す時間が削減されるため、業務全体の効率が改善されます。
自主性との違い
「自主性」とは、自分の判断で行動することです。主体性と自主性を比べてみると「自分の判断で行動する」点では共通している言葉ですが、主体性には「自分の行動に責任を負う」という部分が強調されます。
自主性:あらかじめ目的やゴールが決められていることに対して自分の判断で行動する
責任やリスクが比較的少ない。
主体性:目的やゴールも自分で定め、自分の判断で行動する
責任やリスクも大きい。
主体性の対義語
主体性の対義語には「受動性」「協調性」があります。
これらを組織や集団において「指示待ち」や「思考停止」などと捉えられることが多くあります。
「受動性」「協調性」はどちらも、上司や先輩など誰かの指示がない限り行動を起こさず、自分の考えや判断をもとにして行動する性質を意味する主体性とは、対照的な言葉です。
主体性がある人の特徴
主体性がある人の特徴を5つのポイントから解説します。
責任感が強い
主体性がある人は自ら引き受けたことに対して最後まで責任を負う強い責任感を持っています。その原動力には、子供のような知的好奇心があります。物事に対して進んで関わりを持ち自分なりに考え理解しようと行動を起こします。 物事と深く関わりを持つことで、その対象に対して強い責任感が生まれます。
成長意欲がある
主体性のある人は指示をされる前に自ら考え取り組む姿勢を持っています。そのため1業務に対する強い責任感や課題の特定、解決策を考え行動する習慣を送ります。たとえ失敗をしても、次回に生かせるよう、課題を分析して改善点を考え、対策を講じるなど自ら積極的に動くことができる成長意欲があります。
自己肯定感が強い
自己肯定感とは、思うような成果が得られなくても「自分の存在には価値がある」と自分自身を認め尊重できる感覚のことです。 主体性のある人は自らの判断に基づき行動するため、物事には想定外のトラブルがあることを理解しています。そのためトラブルや失敗に対してもチャンスと捉える積極的な思考を持つことができます。
行動や発言が積極的
主体性のある人は自らの判断・行動によって業務に取り組むため、ささいなことでも成功体験を蓄積しやすく自信を持って行動や発言を行うことができます。 また自らの行動によって、成果を上げることで周囲から評価を得られ、さらなる自信につながります。このような成功体験の積み重ねによって、経験値や知識・スキルを手に入れることができます。
コミュニケーション力が高い
主体性の高い人にはコミュニケーション力が高いと言う傾向があります。それは、支持された業務をこなすだけではなく、全体を捉えて自ら判断し行動を起こすため、周囲を巻き込んで仕事をする行動の中でコミュニケーション力が培われているからです。 また、主体性の高い人同士がコミュニケーションを取ることで、相互の経験やスキル・発見を共有し、イノベーションが起こりやすい組織を作ることができます。
組織で主体性のある人物を育てる方法
組織で主体性のある人物を育てる方法について解説します。
①意見交換の場を設ける
主体性が低い人は自分で考え発言するという習慣がないケースが多いです。そこで組織運営の中に、1on1ミーティングやブレーンストーミングなどの意見交換の場を設ける仕組みを作りましょう。
目の前の問いに対して自分で考え判断し、さらに発言するという体験を繰り返すことで主体性を高めていくことができます。
②コーチングを活用する
コーチングとは相手の話に耳を傾け、観察や質問を投げかけながら、ときに提案などをして相手の内面にある答えを引き出す目標達成の手法のことです。この目的は、本人自身の「やる気を引き出す」「自発的行動を促す」ことです。
コーチングでは、「相手の話をそのまま受け入れる」「相手のありのままを認める」ことが重要です。そのため、「なぜ失敗したのか?」と言った自責の思考を生む「なぜ?」と言う問いかけをしないように心がけましょう。質問する際は、物事を客観的に捉えられるよう「失敗した理由にはなにがあるのか?」など、「なに?」と言う言葉を使いながら傾聴を行いましょう。
人は、自分のありのままを認めてもらえると、安心感や自己肯定感が高まります。そこから次第にモチベーションを保つことができるようになり、主体的な行動を習慣づけることが可能になるのです。
③内発的動機づけを行う
内発的動機づけとは、本人の内なる「好奇心」「意欲」「関心」「楽しさ」などの欲求から生まれる動機づけのことをいいます。
人材育成のシーンにおいて、人からの評価や褒賞、報酬などを目的とした外発的動機づけを用いることがあります。外発的動機づけは行動のゴールが明確なので、スムーズに動機づけを行いやすいので即効性があります。しかし長期的にモチベーションと生産性を維持するためには、本人のやる気が常に自己生成できる内発的動機づけに着目することが重要です。
④サーバント・リーダーシップを取り入れる
サーバント・リーダーシップとは、上司が部下を支配するようなものではなく「上司やリーダーはサーバント(サポート役)となって、部下の自主性を重んじながら、チームを先導する」手法を指します。いわゆる「一人のリーダーが上に立ち、部下を引っ張っていく」リーダーシップの手法とは異なり、上司は組織や自分のミッション・ビジョンを実現させるための道具として部下がいると考えるのではないかと考えます。
サーバント・リーダーシップにおいては、ミッション・ビジョンを実現するためにメンバーが行動してくれる。だからこそそのメンバーがより活躍しやすいように環境を整え、支えるのがリーダーの役割だと考えます。UNIQLO(ユニクロ)の柳生正氏も「社長全員にお願いしたいのは、サーバントリーダーになってもらいたいということ。」と述べています。
主体性を持つためのポイント
現時点で、主体性がない人と悩む人でも「自分で考え、行動する力」を鍛えることで、主体性を持つことができるようになります。次に主体性を高めるための3つのポイントを解説します。
①自分で考えて行動する
主体性を高める最初のステップとして、「自分で考えること」に積極的に取り組みましょう。そのために組織や集団の中で指示を待つのではなく、「自分ならどうするだろうか」と考えるようにしましょう。
急に組織の中で行うことに躊躇がある場合は、仕事やプライベートの中で「この書類の見出しを大きくしたら読みやすいかもしれない」「今日のランチは気になっていたお店に出かけよう」というような些細な物事を判断するのでも構いません。自分で選択することに慣れて、小さな達成感や成功体験を蓄積することが重要です。
②目標を人に言う
個人で主体性を高める取り組みの一つに「目標を人に言う」という方法があります。 人は自らの発言に対して、「その発言を覆したくない。達成したい。」と考える性質があります。この性質を利用して達成したい目標を人に言う事はとても有効です。 人に目標を言うことで周囲から意欲がある人物と評価されるメリットもあります。
また人に直接言葉で伝えることが恥ずかしい場合は、 SNSに書き込むなどでもOKです。重要なのは、目標が人の目に触れるということです。
③フィードバックの機会を積極的にとる
個人で主体性を高める取り組みの方法として、「フィードバックの機会を積極的に取る」事はとても有効です。フィードバックには2つの種類があります。1つ目のポジティブフィードバックは、相手の行動の 良い点を評価し肯定的な言葉で成長を促すフィードバック方法です。2つ目のネガティブフィードバックは、相手の行動の改善すべき点を指摘し成長を促すフィードバック方法です。
これらの2種類のフィード バックを活用することで、自己肯定感を高めながら自分の改善点に気づくことができます。 この習慣を持つことで、次第に自分自身でもフィードバックを行えるようになります。その結果、自らの意思や判断に基づいて責任を持って行動することができるようになります。
まとめ
組織に対しても個人に対しても様々な良い影響がある主体性とは、「周囲の意見や指示に頼らずに、自らの意志や判断に基づいて責任を持って行動すること」です。これは仕事やプライベートを充実させるために欠かせない素質の一つです。
今回の記事を参考に、組織で主体性のある人物を育て、生産性の高いチームを構築していきましょう。その取り組みは従業員個人の人生の充実にもつながり、従業員エンゲージメントを高めるきっかけにもなります。
WRITER
大後 裕子
C-OLING代表
生活用品メーカーで10年間企画職に従事し、企画立ち上げから海外工場との商談、販促まで商品開発のゼロから一貫して行い、多くの商品をブランディングし、リリース。 8年販売され続けるヒット商品を始め、開発商品点数累計約1,200点、約1,700店舗へ導入。ブランディングを主軸とした、経営コンサルティング、 社内教育の3つの事業を通して、多くの人の生活に豊かさを提供ができる企業を社会に増やしたいと考えています。