アジリティとは?組織へのメリットと、アジリティを高めるポイントを解説

2022-10-24

大後 ひろ子

C-OLING代表 ブランディングコンサルタント

組織人材育成・マネジメント

ビジネスにおいて、アジリティとは激しい変化に即時に対応するための「敏しょう性」という意味で使われます。昨今ビジネスシーンで耳にすることも多くなってきたアジリティですが、その意味はまだ広く浸透していないのが現状です。

今回の記事では、アジリティの基本的な意味から企業におけるメリット、アジリティを高めるポイントについて解説していきます。

アジリティとは?
 

 

アジリティがビジネスシーンで使われるようになった経緯や、昨今注目されている背景について解説します。

アジリティの定義

ビジネスにおけるアジリティとは、「企業などが市場や世界の変化に対応する素早さや柔軟さ」を指します。また個人のビジネスパーソンにおいてはアジリティとは「変化に対してフレキシブルに対応し、自らの思考で多様な選択肢から適切に判断できる力」とされています。

もともとは、犬の障害物競技の名称としてアジリティという言葉が使われてきた歴史があります。またサッカーやバスケットボールなどのスポーツの分野においても、広く親しまれてきた言葉で、「置かれた状況に対して素早く反応し、方向・速度を変換する能力」として重要視されています。

アジリティが注目される背景

アジリティが注目される背景には、IT技術の飛躍的な進展によりビジネスを取り巻く状況変化が頻繁に起こるようになったことが挙げられます。大量に情報が溢れる現代では、現代人が1日に触れる情報量は江戸時代の一年分、平安時代の一生分とも言われています。


多くの情報から変化の予測が今まで以上に難しくなっている不確実な現代において、企業・個人のアジリティが必要とされています。

スピード(Speed)、クイックネス(Quickness)との違い

アジリティを理解する上で、混同されやすい言葉について解説します。

スピード(Speed)とは

「ビジネスはスピードが命」と言われて久しくなりましたが、本来のスピード(Speed)は純粋に速度の速さを指します。これはスポーツで表すと、短距離走中のトップスピードの速さに当たります。

クイックネス(Quickness)とは

クイックネスは、物事に対して行動する速さである「俊敏性」を指します。
スポーツで表すと、完全に止まった状態からの反応の速さと3歩目ぐらいまでの瞬発的な速さのことです。

俊敏性とアジリティの違い

アジリティはスポーツで表すと、敏捷性や機敏性、急な減速や方向転換を伴う加速を正確に行える能力を言います。

何より素早く動くことが求められるクイックネスに対して、アジリティでは複雑で緩急のある動きを求められます。

企業におけるアジリティのメリット 
 

 

ビジネスにはスピードがつきものと言われますが、現代では企業の経営環境や個人のキャリアを取り巻く状況は、今までのような年功序列や終身雇用などの確実性が薄れつつあります。

そんな現代は「VUCA(ブーカ)時代」と表現されます。    

これら4つの言葉の頭文字から取った造語です。1990年代後半のアメリカで軍事用語として使われていましたが、2010年代頃からビジネスシーンにおいても、変化が激しく、予測がつかず不安定な状況を表す用語として使われています。 

①問題解決の速さ

アジリティが高い組織には、問題解決が早いという特徴があります。アジリティが高い組織やそして個々の従業員は、置かれている状況を素早く把握し、その状況にあった最良の判断をすることができるのです。

②ビジョンや企業理念の浸透

アジリティの高い組織では、企業のビジョンや企業理念が浸透している特徴があります。企業の目指す方向性や課題が共有できていると、個々の従業員がその価値観を軸に自ら判断することができ、その結果強い組織を作ることができます。また日々の業務にも将来思考で取り組むことができるので、企業にとっても従業員にとっても生産性の高い組織を構築することができます。

③イノベーションが起きやすい

アジリティが高い組織では、コミュニケーションが活発なためチームメンバーでの情報交換が日常的に行われます。その結果、急な状況の変化にも対応できる準備を整えることができます。さらにチームメンバーでの情報交換が日常的に行われることによって、新しいアイデアが集まり、イノベーションを起こせる組織へと成長することができます。

企業のアジリティを高める方法 

様々なメリットのある企業のアジリティを高める方法について解説します。

①IT環境の整備を行う

アジリティを高めるためには、「情報の一元化」と「意思決定プロセスの簡略化」がポイントです。そのために「ITツール」の活用はとても有効です。例えば、紙での情報交換や記録・決済申請などは手間や時間がかかり、紛失などのリスクも高いため、組織のアジリティを下げることにつながります。時代や組織スケールの変化に対応できるIT環境を整えることで、組織のアジリティを高めることができます。

②現場の裁量を高める

現場の裁量を高めることは、組織のアジリティを高めるのに有効です。裁量権が小さい現場では、不測の事態が起きた際に自らの判断で動くことができなくなってしまいます。個々の従業員の裁量権を高めることで、自ら考えて動く風土を醸成することができます。

③経営理念・ビジョンの浸透

経営理念やビジョンが従業員に浸透している組織では、方向性の違う判断が少ない傾向があります。ビジネスには速い判断が求められますが、企業の求める方向性や価値観から外れた判断では、成果を上げることができません。企業は全従業員に企業理念やビジョンを共有する機会を積極的に設けることで、会社の指針を元に自ら判断し行動できる組織を醸成することができます。

④情報共有・コミュニケーション活性化の仕組みをつくる 

組織のアジリティを高めるためには、年齢・性別・役職にとらわれない情報共有・コミュニケーション活性化の仕組みを作ることが重要です。そのために上司と部下の定期的なフィードバックや、チームメンバーのアイデアを結集できるブレーンストーミングなどのコミュニケーションを取れる取り組みを行います。その結果、組織全体でメンバー同士のサポート体制や、業務の革新を生み出すことができるのです。

まとめ

アジリティは単なる速さではありません。必要なのは複雑な状況の中でも、明確な指針に対して自ら最良の判断ができる力です。変化の激しい現代は、ただやみくもに頑張るのでは、組織の生産性を高めることはできません。現場の従業員一人ひとりが、自ら状況を理解して判断することで企業を成長に導くことができます。

そのためにも企業として、判断や行動の軸となるビジョンや企業理念を明確に共有する必要があります。ぜひ今回の記事を参考に、アジリティの高い組織を目指しましょう。

WRITER

大後 裕子

C-OLING代表

生活用品メーカーで10年間企画職に従事し、企画立ち上げから海外工場との商談、販促まで商品開発のゼロから一貫して行い、多くの商品をブランディングし、リリース。 8年販売され続けるヒット商品を始め、開発商品点数累計約1,200点、約1,700店舗へ導入。ブランディングを主軸とした、経営コンサルティング、 社内教育の3つの事業を通して、多くの人の生活に豊かさを提供ができる企業を社会に増やしたいと考えています。