プロパー社員とは?その特徴と、中途社員や非正規雇用社員との違いを解説
2022-12-21
大後 ひろ子
C-OLING代表 ブランディングコンサルタント
組織組織開発
プロパー社員とは、企業によって定義が異なりますが、主に下記の3つの意味で使用されるケースが多いです。
- 「中途社員に対して、新卒で採用された生え抜きの社員のこと」
- 「パート社員や非正規雇用の社員に対して、正社員(正規雇用)のこと」
- 「出向社員や協力会社などの駐在している外部からのスタッフに対して、自社の社員のこと」
企業や業種によってこれら3つの意味は異なりますが「プロパー社員」という言葉の使い方において共通しているメリットや注意点が存在します。
今回の記事では、その意味や背景、プロパー社員を育成するメリットやデメリット、そして企業が「プロパー社員」「プロパー社員」という言葉を使うときの注意点について解説していきます。
プロパー社員とは?
まずは「プロパー社員」の言葉の概要と、その言葉ができた背景について解説します。
プロパーとは
プロパーとは、英語で「proper」と表記し、「固有の・適切な・正確な」という意味があります。日本の「プロパー」という言葉に対して、ビジネスにおいても「固有」や「専門性」の意味を多く含む使い方がされてきました。アパレル業界では値下げをしない正規価格の商品に対して「プロパー価格」という言葉を使っています。
他にも「その分野に精通している専門家」という意味での使われ方もしています。たとえば、人事部門のプロパーは人事の専門家を指し、研究部門のプロパーというと研究の専門家という意味になります。
プロパー社員の概要
「プロパー社員」は日本企業で下記の3つの意味で使用されることが多いです。
- 「中途社員に対して、新卒で採用された生え抜きの社員のこと」
- 「パート社員や非正規雇用の社員に対して、正社員(正規雇用)のこと」
- 「出向社員や協力会社などの駐在している外部からのスタッフに対して、自社の社員のこと」
業界や職種において上記の3つの使われ方はそれぞれなので、関係者に誤解や間違った認識を与えないよう、自社ではどの意味を指すのかを明言しておくことが重要です。
プロパー社員が生まれた背景
日本企業においてプロパー社員が良しとされる背景として、日本企業においてはまだまだ年功序列という考え方が根強くあることが挙げられます。企業にとっては、新入社員の時から自社の風土の中で育成できるので、自社の方向性に沿った従順な人材育成が可能になるので、経営層が思い描く管理しやすい組織構築ができると考えられています。また社員にとっては、給与や待遇が勤続年数に比例して決まることから、長くその企業に在籍していると好待遇につながりやすいので、新卒から企業に長く務めることに対してポジティブな感情を描く傾向があります。
プロパー社員の類義語
プロパー社員の類義語と共に使われる類義語について解説します。
一般的に、期間を定めずに雇われている労働者であり、就業場所において正規として雇用される社員を指します。
この時「プロパー社員」という言葉には、法的な定義があるわけではありません。先で述べたように、職場や業界によって「新卒からの生え抜きの社員」「正社員」「外部スタッフではない自社の社員」という意味を持ちます。したがって、自社の定義としてプロパー社員がどの意味を指すのかを明確にしておくことが重要です。
中途社員
中途社員とは、新卒採用以外で採用する人材を指します。中途社員を採用する目的は、欠員の補充だけではなく、変化の目まぐるしい現代で新たなビジネス環境への対応策のひとつでもあります。中途採用でいかに優秀な人材を獲得できるかは、企業の成長の鍵といえるでしょう。
その一方、企業の経営方針によっては、新卒社員(プロパー社員)と中途社員で、経験スキルとは別の基準で給与や退職金の金額に差が出る場合もあります。
非正規雇用社員
非正規雇用社員とは、アルバイトやパートタイマー、派遣社員、契約社員のように、一定期間のみの雇用契約に限定して働く社員を指します。
この非正規雇用社員と区別する際に使用される「プロパー社員」という表現には、期間を定めずに雇われている正社員という意味があるので、この場合は新卒採用も中途採用も関係なく正社員全般を意味します。
非正規雇用社員は雇用形態のほか、正社員と比べて給与が安く、労働条件が良くないケースが多く見受けられます。現代では、企業の正社員の募集人員が減り、就職できない若者が非正規雇用に流れ、安い賃金で働くというケースも問題視されています。
プロパー社員を育成するメリット
プロパー社員を育成するメリットについて解説します。
帰属意識が育ちやすい
企業がプロパー社員を育成する大きなメリットは、帰属意識の育成と言えるでしょう。 他の環境を知らない吸収率の良い状態で、自社の理念やビジョンのもとで成長していく新入社員は、会社への愛着や帰属意識が育ちやすい傾向があります。
社内での人脈を構築しやすい
プロパー社員として企業や組織に長く在籍するほど、社内での人脈が広がります。新卒入社からの生え抜きの社員にとっては、各部署に同期入社の社員や、顔見知りの先輩、お世話になった上司がいることが多いので、部署を跨いだ連携をとりやすいといったメリットがあります。
プロパー社員を育成するデメリット
プロパー社員を育成するデメリットについて解説します。
イノベーションが起こりづらい
新卒からの生え抜き社員だけの組織では、新しい発想が生まれづらい傾向があります。入社してから今までの、風土や業務の一連の流れが考え方の基準になってしまっているため、新しいことにチャレンジする習慣がないことが多いのです。
また新卒からの生え抜き社員の場合、会社からの評価を重要視する傾向があります。会社の方針に対しては素直に従う反面、会社が重要視しない事柄に対しては保守的であったり、抵抗感を示す場合が多くあります。
企業や組織においてイノベーションが必要と感じている場合は、中途社員や外部スタッフ、他業界の考え方も取り入れながら、視野を広げていく取り組みが必要になります。
中途社員や非正規雇用社員との溝ができることも
企業によっては、中途採用の社員よりも新卒からの生え抜き社員が上層部から厚遇されている場合も少なくありません。経験や実力が豊富な中途社員や非正規雇用社員の評価を正しく行わないことは、生え抜き社員との間に摩擦を生む可能性が高いのです。また、生え抜き社員には同期入社の社員や、顔見知りの上司や先輩といった広い人脈が社内にあるため、中途社員や非正規雇用社員は疎外感を感じることが少なくありません。
こういった不満はストレスとして積み重なり、人間関係やチームビルディングにおいて支障をきたします。この悪い習慣が続くと、チーム全体のモチベーションを下げる要因にもなります。
組織が「プロパー社員」という言葉を使うときの注意点
組織として業務を円滑に遂行するため、「プロパー社員」という言葉を使うときの注意点について解説します。
職場環境
プロパー社員が主に持つ「新卒からの生え抜きの社員」「正社員」「外部スタッフではない自社の社員」といった3つの意味合いと、対する社員たちは、それぞれ区別している「中途社員」「非正規雇用社員」「外部スタッフ」といった社員たちに対して、自社の方針をよく知っているため、その方針を外れるようなチャレンジや新しい取り組みに消極的な傾向があります。そのため組織の課題解決に時間がかかる場合があります。
そのため、経営トップやチームリーダーは、全ての社員に対して組織の目的や目標を共有することが重要です。そしてその目標達成に向けた、コミュニケーションの取り方を見直すことが重要です。
賃金待遇
日本企業においてはまだまだ年功序列という考え方が根強くあります。勤続年数に比例して給与や待遇が決定されます。その結果、長くその企業に在籍していた方が好待遇につながりやすいと考えられ、企業に対して従順な、いわゆる「イエスマン」ばかりが在籍してしまい、企業の成長を妨げる要因の一つにもなっています。
こういったケースを避けるためにも、採用のタイミングや雇用形態に関わらず、成果に対して賃金待遇が変動する評価基準の採用に注目が集まっています。
昇級への待遇
日本では、新卒からの生え抜きの社員が昇級しやすいといった風習が残る企業も少なくありません。この昇級に対する査定には、上司の主観が大きく反映されているケースが少なくありません。それは上司の意見に反論せず従順に従う、いわゆる「イエスマン」に対して上司が好印象を抱き、昇級に優遇されるといったケースです。
自社の業績向上を望むのであれば、組織の昇級制度に関しては、個人の能力やマネジメント能力を公正に判断し評価できる仕組みを取り入れることが必要不可欠です。
まとめ
「プロパー」また「プロパー社員」という言葉は、業界や場面によって様々な使われ方をします。そのため、企業としてこれらの言葉を使用する際は、誤解や間違った認識を与えてしまわないようにあらかじめ意味を定義し、周知することが重要です。
また「プロパー社員」とそれ以外の社員と間で確執が生まれてしまわないよう、単一的な年功序列の廃止や、評価制度の見直しなどを行い、関わりあるステークホルダーに納得される人事評価を心がけましょう。
労働人口が減少し、目まぐるしく変化する現代において、少ない人数で大きな成果を上げることが企業に求められています。そこで新卒採用の社員、中途採用、非正規雇用社員や外部スタッフなどの立場にかかわらず、経験や実力を評価される仕組みを整えることが重要です。そうすることで、職場での人間関係や個人のモチベーションを上げることができ、日々の業務に意欲的に取り組むことで業績の向上にもつながります。
今回の記事を参考に、自社でもプロパー社員とそれ以外の社員やスタッフが円滑なコミュニケーションが取れる仕組みづくりを行って、イノベーションが起きる仕組みづくりを始めてみてはいかがでしょうか?
WRITER
大後 裕子
C-OLING代表
生活用品メーカーで10年間企画職に従事し、企画立ち上げから海外工場との商談、販促まで商品開発のゼロから一貫して行い、多くの商品をブランディングし、リリース。 8年販売され続けるヒット商品を始め、開発商品点数累計約1,200点、約1,700店舗へ導入。ブランディングを主軸とした、経営コンサルティング、 社内教育の3つの事業を通して、多くの人の生活に豊かさを提供ができる企業を社会に増やしたいと考えています。