組織風土の意味と、取り組みに向けた注意点を解説。風土の醸造する3つの要素とは?
2022-09-28
大後 ひろ子
C-OLING代表 ブランディングコンサルタント
組織組織開発
「組織風土」はシンプルに表現すると、組織を構成するメンバーで黙示的に共有されている暗黙のルールや考え方などの「価値観」です。
「困ったことは抱え込まず、すぐに相談する」
「エース社員と他の社員のモチベーションの差が激しい」
「事業部間の連携が取れて、社内の風通しが良い」
こういったプラスの要素もマイナスの要素も、どちらも組織風土の一つと言えます。言語化していなくても組織内に存在するパターン化された「いつもの流れ」などの小さな物事が積もり、今のあなたの会社の組織風土を形成しています。
組織を成長させるトップリーダーたちが注目する組織風土。その理由は、組織風土はメンバーの行動や感情にも影響を及ぼし、結果的に業績を大きく左右するものだからです。しかし、組織風土はとても曖昧に捉えがちな項目です。今回は基礎知識から習得していきましょう。
組織風土度の基礎知識
組織を成長させるトップリーダーたちが注目する組織風土。その理由は、組織風土はメンバーの行動や感情にも影響を及ぼし、結果的に業績を大きく左右するものだからです。しかし、組織風土はとても曖昧に捉えがちな項目です。なので今回は基礎知識から習得していきましょう。
組織風土の意味
「組織風土」とはメンバー間で、今までの活動を経て黙示的に共通認識しているルールや価値観を指します。これは蓄積に基づくものなのでなかなか変えることが難しいのです。そのため、現場で醸造されている組織風土が、トップが描く組織風土とかけ離れているケースもしばしば見受けられます。
良い組織風土とは何か?
良い「組織風土」とは企業によって基準が異なります。そのために今回は経営トップとして知っておきたい良い「組織風土」を醸造するための重要な3つのポイントをお伝えします。
- 経営者が企業の向かう方向やビジョンを明確に描き、社内外に発信していること
- 経営層が現場の実態を理解していること
- メンバーが組織の目標に対して理解を示し、達成のためのルールや行動を実行すること
組織文化・社風・企業風土との違い
「組織風土」と似た言葉に、組織文化・社風・企業風土といった言葉があります。それぞれどういう意味を持つのか解説していきましょう。
組織風土
今までの経験を経て根付いた価値観。(黙示的に共有されているため変えることの難しい。)
組織文化
企業に所属するメンバー内で共有されている価値観や行動原理。(目標や時代によって変化する。また企業理念と現場とで理想と実体がかけ離れていることもある。)
社風
組織文化から感じ取れる企業の雰囲気や空気感
企業風土
組織風土が現場からのマクロな視点に対して、企業全体に視点を当てたマクロ視点からの風土。
組織風土を構成する3つの要素
組織風土は次の3つの要素から構成されます。1つ目が「ハード」、2つ目が「ソフト」、3つ目が「メンタル」。この章では3つそれぞれの要素の内容を理解しましょう。
①ハード
「ハード」は組織風土を醸造する要素のうち、目に見えるものを指します。様式やルールとして組織において明文化された要素です。これらは経営者が積極的に改善することで、組織が向かうべき方向へスムーズに意思決定を行うことが可能になり、業務においても大きな変化を与えることができる要素です。
- 企業理念
- 就業規則
- 人事制度
- 人材配置
- 組織構造
- 評価制度
- 事業内容
- 業務内容
- 業務プロセス
- コンプライアンス etc
②ソフト
「ソフト」は組織風土を醸造する要素のうち、従業員一人ひとりの価値観や思考・行動や、人間関係などの目に見えない要素を指します。
- 組織内の独自のローカルルール
- チームワーク力
- 信頼関係
- 人間関係
- 上下関係
- 勢力関係
- 責任の所在
- 従業員エンゲージメント
- 組織コミットメント
- モチベーション
- 個人の価値観
- 行動様式
③メンタル
「メンタル」は目に見えないソフトの要素の中でも、さらに従業員の精神状態や心理面に大きな影響を及ぼします。感情が関わるものなので、コントロールすることはとても難しいのが特徴です。そのためこの要素の改革には多くの時間と覚悟が必要です。しかし、従業員のモチベーションを左右する重大な要素であることを認識して、以下のメンタル要素をはかる指標を覚えておくと良いでしょう。
- 言われたことをただこなすのではなく、自発的な行動ができるか
- 役職に囚われず、自分の意見を率直に言えるか
- 従業員同士でお互いに思いやり、積極的に助け合っているか
- チーム内で活発にコミュニケーションが取れているか
- 無言の圧力やしがらみがなく、自由に意見交換ができるか
- トップダウンだけではなく、挑戦や変化などボトムアップの姿勢を柔軟に受け入れられるか
組織風土を良くすることによるメリット
従業員の行動や感情にも影響を与え、企業の業績をも左右する組織風土。この組織風土を良い形で取り入れることで起こる、6つのメリットについて解説します。
1. 従業員と企業が目指す方向性やビジョンを共有できる
「組織風土」は、企業理念やコンプライアンスとして「ハード」要素として明文化することができます。企業の目指すビジョンを「ハード」要素として従業員と共有することで、従業員は企業の目指すべき方向性を深く理解し、それに沿った行動をすることが可能になります。
2. 従業員同士の関係が活発になる
良い「組織風土」は従業員同士の人間関係も良好なものへと成長させます。上下関係・勢力関係によって質問や相談のしにくい風土では、コミュニケーションはスムーズにいきません。組織の成長には、お互いを思い、助け合い、高め合うことのできる、良い組織風土が欠かせません。
3. 従業員の働きやすい職場環境をつくれる
「組織風土」が良いものであれば、従業員にとって働きやすい職場環境を作れます。
ワークライフバランスが就業規則にも落とし込まれていると、従業員は仕事とプライベートの両立をはかることができ、メリハリをつけて働くことができます。また企業理念としてワークライフバランスの重視を掲げ、経営層・マネジメント層への浸透促進することで良い組織風土が醸造しやすくなります。
4. モチベーションの高い個人・組織を構築できる
良い「組織風土」が浸透している企業では、自社に誇りを持っている、モチベーションの高い従業員が多いのです。なぜなら、人は嫌いなものや無関心なものに対して頑張ることはできませんが、好きなもの・興味があるものに対してはいくらでもモチベーションが湧くからです。
良い「組織風土」が浸透している企業では従業員同士の人間関係や職場環境を生みます。また、企業の目指す方向性やビジョンを共有する仕組みを持っているので、個々人が組織の課題を「自分ごと」として捉えポジティブに取り組めるようになるのです。
5. 従業員のエンゲージメントが高まる
良い「組織風土」が浸透していると、従業員の愛着心(エンゲージメント)が高まります。良い人間関係・良い職場環境の中で、組織の課題に自分ごととしてポジティブに向き合えるようになると、目の前の仕事の意義を見出すことができます。また、ビジョンの共有によって個人の目指すべき方向にズレが生じることがなくなるのです。
その結果優秀な人材の流出を防ぐことができ、企業を成長させることができるのです。
6. 組織の生産性が向上し、業績アップができる
1~5で話したことのまとめのようになりますが、
企業の目指すビジョンが共有され、
従業員同士の関係性がよく、職場環境が整えられ、
会社に愛着を持ち、モチベーションの高い従業員が集まり、
離職せずに成長を続け、自走する組織。
このような組織は、生産性が向上し、業績がアップするのは明白ですね。
しかし、組織風土を改革することは一朝一夕で行うことはできません。次の章では、取り組みに向けた改革の進め方についてお話しします。
組織風土改革の進め方
先ほども申し上げた通り、組織風土を改革することは一朝一夕で行うことはできません。企業を根本から見直すために時間がかかることに対して覚悟する必要もあります。しかし、これからの経営トップにとって自社のビジョン達成に向けて改革は必須です。
この章では、改革のためには次の6つのステップをご紹介します。この6つを飛ばすことなく順番に策定していくことが、成功の鍵となります。
- 組織文化や企業ビジョン・行動指針を再策定する
- 経営陣から組織風土改革の目的や理由を従業員に共有する
- 経営陣から従業員に新しい企業のビジョンや行動指針について説明を行う
- 経営陣・マネジメント職から理想の組織風土醸造のためのアクションを起こす
- 組織風土が根付いているかアンケート調査を行う
- 理想の組織風土醸造のため行動指針を行なっている従業員を評価する。
まとめ
今回の記事では、組織風土は「ハード」「ソフト」「メンタル」の3つの要素から醸成されることや、良い組織風土で得られる6つのメリットなどについてお話ししました。企業と従業員が同じベクトルで進んで行ける6つのメリットを実現できるよう、まずは組織風土改革6つのステップを確認して、自社の改革がどこまでクリアできているのかをチェックすることから始めてみましょう。
WRITER
大後 裕子
C-OLING代表
生活用品メーカーで10年間企画職に従事し、企画立ち上げから海外工場との商談、販促まで商品開発のゼロから一貫して行い、多くの商品をブランディングし、リリース。 8年販売され続けるヒット商品を始め、開発商品点数累計約1,200点、約1,700店舗へ導入。ブランディングを主軸とした、経営コンサルティング、 社内教育の3つの事業を通して、多くの人の生活に豊かさを提供ができる企業を社会に増やしたいと考えています。