インポスター症候群とは?その原因と対策、具体的な克服方法を解説!

2022-11-02

大後 ひろ子

C-OLING代表 ブランディングコンサルタント

組織その他

インポスター症候群とは、客観的な視点からはしっかりと評価を得られているのにもかかわらず、自分自身を過小評価してしまう心理状態を指します。
また、インポスター症候群は自身の内面に関わるものなので、自覚しにくいという問題があります。組織で優秀な人材も、自分自身を過小評価してしまうので、モチベーションの低下につながる可能性があります。

今回の記事では、インポスター症候群の基本的な意味から、陥りやすい人の特徴、克服のための方法について解説します。

インポスター症候群とは?

まずはインポスター症候群の基本的な意味と、注目される背景について解説します。

インポスター症候群とは何か

インポスター症候群は別名「詐欺師症候群」とも呼ばれています。
ビジネスシーンにおいて、インポスター症候群は仕事で成功し、客観的な視点からはしっかりと評価を得られているのにもかかわらず、自分自身を過小評価してしまう心理状態です。自身の実力で獲得した成功体験に対して、「今回は運がよかっただけ」「周りの協力のおかげ」とばかり捉え、自己を正しく評価できない状態です。

インポスター症候群の背景 

インポスター症候群は、1978年に臨床心理学者であったポーリン・R・クランスとスザンヌ・A・アイムスによって提唱されました。インポスター症候群は自覚症状がないことが多いため、この症候群にある人は、常に不安やストレス、自尊心の低さ、抑うつ、恥ずかしさ、疑いなどに苦しむケースが多いのです。

また、インポスター症候群は、特に社会的に成功した女性に多いとする研究発表もあります。例えば、Facebook初の女性役員であるシェリル・サンドバーグも自らの著書でインポスター症候群を告白しています。

社会のグローバル化に伴って、従業員の働き方改革・女性活躍推進に取り組む企業にとって、本人が正しい自己評価をできる仕組み作りが求められています。

インポスター症候群に陥りやすい人の特徴 

インポスター症候群は男女問わず陥るものです。しかし、自覚症状が出にくいという問題があります。ここでは、インポスター症候群に陥りやすい人の特徴について解説していきます。

勤勉で完璧主義

能力が高い人は、「自分が無能だと思われたくない」という恐れが前提にあります。そのため熱心に仕事に打ち込み成果をあげるので周りからは評価されますが、「ポジティブな気持ちで仕事に向き合っていないこと」に対して罪悪感を持ってしまいます。

また成功しても「今回はラッキーだった」と結論づけ、失敗に対しても「やっぱりそうだ」と自分を追い込んでしまいがちです。

チャレンジしない 

インポスター症候群の人は、失敗を恐れているので、チャレンジを避ける傾向にあります。上司やチームメンバーから「君ならできる」と言われても、自己評価が低いため自信を持ってチャレンジできません。また失敗の原因が自分自身にあることを極度に恐れているため、事前準備を後回しにして、失敗を準備不足のせいにしてしまうこともあります。  

褒められるのが苦手

インポスター症候群の人は、成功の要因を自分ではない他のものにすり替えようとします。他人からの賞賛に対して自己否定したり、褒められるのが苦手な傾向があります。

成功に不安を感じる 

インポスター症候群の人は、成功に不安を感じます。成功によって周囲からの評価が変わってしまい、「嫌われるのではないか?」という不安を抱えてしまいます。この状態が進むと、自分の変化自体を恐れるようになります。

インポスター症候群を克服する方法
 

 

人のパフォーマンスを大きく下げる要因の一つになるインポスター症候群に対する克服方法
について解説します。

現在に集中して、未来を心配しすぎない

インポスター症候群に悩む人は、ネガティブな思考にとらわれて、未来に対して不安にかられてしまいがちです。この場合、まずは目の前にあることに集中して、今持っている自分の能力や価値、環境への感謝を感じるように心がけましょう。その際、周囲からの視線や将来への不安などはシャットアウトすることが有効です。

過去を振り返り、自分を認める

インポスター症候群に悩む人には「成長過程で自分の能力や存在を否定されるような経験をした」という人が一定数います。この場合は、その時の自分や周囲の言動を振り返ってみましょう。そこで過ぎ去った過去を、きちんと過去として捉えることができるようになれば、現在の自分を認められるようになり、インポスター症候群を防ぐことができます。

自分も人も褒める習慣を作る

インポスター症候群に悩む人には、自分で自分をほめる習慣が有効です。日本でインポスター症候群を抱える人は、仕事やプライベートで褒められたときに、謙虚な応対をしたほうが良いとすり込まれていることが原因とも考えられます。 そこで「自分はほめられるようなことをやった」という自己肯定感を高めるためにも自分で自分をほめる習慣が有効なのです。

また、自分を褒めることに慣れていない人は、周りの人に感謝の気持ちを伝えたり、どんなに小さなことでも褒める習慣をつけるといいでしょう。褒める力がついてきたら、今度は自分を褒める習慣にステップアップしていくことができます。

完璧主義をやめる 

インポスター症候群に悩む人は、完璧主義をやめてみましょう。例えば、「失敗してもなんとかなると思って行動する」「完璧ではないけれど提出してみる」というような、完璧へのプレッシャーを捨てる習慣をつけましょう。完璧主義は、自分も他人も過度なプレッシャーで追い込んでしまいます。

また、とりあえずアイデア発言してみたり、完成度が低くても提出してみることで、他者とのコミュニケーションが生まれ、より良いものを生み出す機会にも恵まれます。

人から褒められたら否定せず受け入れる

自分や人を褒める習慣がついたら、相手からの賞賛を否定せずに受け入れるステップに進みましょう、特に日本人の場合、褒められてもあえて否定するような「謙遜」の文化が根付いてしまっているため、無意識のうちに自分を過小評価している人は多いのです。しかし、自分を過小評価し続けることは、自分の可能性を狭めることになります。

相手から褒められた時は、謙遜せず素直に受け止める習慣をつけることで、次第にインポスター症候群を克服できるようになります。

スモールゴール設ける
 

 

インポスター症候群の人は、最初から完璧主義を求めすぎる傾向があります。そのせいで小さな失敗を受け止めることができず、自己否定をしたりすることが癖になってしまっています。
そこで一つの達成したい目標に対して、スモールゴールを設ける習慣をつけることが有効です。どんなに小さくてもゴールを達成していくことで自己肯定力を高めていくことができます。

組織で取り入れるインポスター症候群対策

従業員の本来持つパフォーマンスを引き出すために、組織で取り入れたいインポスター症候群対策について解説します。

①同僚と比べず、相手を肯定する 

上司は、部下が行ってきた仕事や言動の中から良かった点を見つけて前向きな言葉で伝えることを心がけましょう。これをポジティブフィードバックと呼びます。ポイントは、結果の良し悪しだけでなく、取り組みに対する姿勢や考え方などの過程も評価することです。部下のモチベーションや能力の向上につながります。

②1on1ミーティング

「1on1ミーティング」とは、上司と部下が1対1で行う対話のことです。もともと米国のシリコンバレー企業が取り組みはじめたマネジメントの手法です。1on1ミーティングは、たいていの場合、週に1回、最低でも月に1回、30分ほどの短い時間で対話を実施します。

実施のポイントは「上司は話題を振るだけで、とにかく部下にしゃべらせる」ことです。そうすることによって、部下が自信を過小評価するポイントに気づくことができ、自身が認知している評価と外からの評価をすり合わせる機会を作ることができます。

③能力相応の裁量権を与える

インポスター症候群の改善には能力相応の裁量権を与えることも有効です。なぜならインポスター症候群の人は「失敗」を極端に恐れる傾向があるからです。そのため仕事では、部下が確実にこなせる裁量権の範囲を与えます。そうすることで部下は自分の責任を全うできるため、心に余裕が生まれ、次第に本来もつ能力に相応する仕事を任せることができるようになります。

まとめ

優秀な人材のインポスター症候群を防ぐことは、組織の成長のためにも重要なことであるといえます。インポスター症候群に悩む人は、不安やストレスによって、人生における幸福感を感じづらい状況にあります。これを克服して本来のパフォーマンスを発揮するためにも、組織の協力は大きな鍵を握ります。

本来モチベーションの高い人材は、自己評価を少しずつでも高める習慣を持つことで、失っていた自信の回復にもつながります。今回の記事を参考に、インポスター症候群に悩む従業員が周囲からの評価と自己評価を正しく受け止め、やりがいを感じる仕組みづくりを始めてみましょう。
 

WRITER

大後 裕子

C-OLING代表

生活用品メーカーで10年間企画職に従事し、企画立ち上げから海外工場との商談、販促まで商品開発のゼロから一貫して行い、多くの商品をブランディングし、リリース。 8年販売され続けるヒット商品を始め、開発商品点数累計約1,200点、約1,700店舗へ導入。ブランディングを主軸とした、経営コンサルティング、 社内教育の3つの事業を通して、多くの人の生活に豊かさを提供ができる企業を社会に増やしたいと考えています。