オンボーディングとは?新卒・中途社員の早期戦力化のカギ!実施プロセスを解説

2022-11-28

大後 ひろ子

C-OLING代表 ブランディングコンサルタント

組織組織開発

オンボーディングとは、新入社員・中途社員の早期の即戦力化を促し離職を防ぐための、教育・育成プログラムの1つです。オンボーディングは、人材の流動化が加速する現代において、企業にとって不可欠な活動と言えるでしょう。

今回の記事では、オンボーディングを実施することによって得られる組織のメリットや、実施のためのプロセスをステップに沿って解説します。

オンボーディングとは?

オンボーディングとは英語では「On-boarding」と表記します。もともとは「飛行機や船に搭乗する」という意味からうまれた造語で、欧米ではすでに多くの企業が取り入れている仕組みです。

オンボーディングの目的

オンボーディングの目的は、新しく入ったメンバーを早期戦力化することです。

この活動を日本では「新人研修」や「OJT」という言葉と混同されがちですが、海外で発生した「オンボーディング」の定義はもっと広く、「情報の提供」や「価値観の共有」に重きが置かれます。

その意味は、企業のミッションやビジョン、社内制度や評価制度、行動指針、部署やチームの人間関係などに当たります。

オンボーディングの概要は今述べたとおり、新入社員に対する組織としての支援活動を意味します。日本では「新人研修」や「OJT」という言葉が一般的で、オンボーディングもイコールで捉えられがちです。しかし、海外で発祥した本来のオンボーディングはより広義で、さらに「情報の提供」や「価値観の共有」に重きが置かれています。 

新入社員や 中途社員にとってはこうした情報や価値観を早期に知ることで、組織内での行動の指針が定まり、業務面での即戦力化につながります。また組織の人間関係や風土を知ることによって組織の中で自分らしくアクションを起こすことができます。

 

オンボーディング実施のメリット

 

 

オンボーディング実施は、経営における様々な方面へ良い影響を与えます。

①採用コストの削減

社員の離職率が低下することで、採用活動に必要なコストを削減することができます。 離職率の高い企業にとって採用にかける金銭的コスト・時間的コストを必要最低限に抑えることにつながります。

②生産性向上

効果的にオンボーディングを実施することができれば、新入社員や中途社員の方もパフォーマンスを短期間で発揮できる仕組みが作れます。早期戦力化によって指導担当社員の時間も有効に使うことができ、組織全体で総合的に生産性を高めることができます。

③人材育成のアップデート

本来のオンボーディングでは、上司と部下の面談やミーティング、またキャリア相談などの幅広い施策が含まれます。「新人研修」や「OJT」といった 従来の人材育成の枠を取り払い、自社が求める人材の早期戦力化の仕組みを見直すことで、自社の人材育成をより効果的なものにアップデートすることができます。

④従業員エンゲージメントの向上

企業が従業員エンゲージメント向上を目指す場合、新入社員や中途社員に対して企業カルチャーを理解できる機会が必要です。 先に述べたような面談やミーティングを通して、仕事へのやりがいや人事評価などの職場環境全体を把握することで、方向性が定まった生産性の高い仕事をすることができるので、長期的なエンゲージメントの向上につながります。

オンボーディング実施のプロセス

組織でオンボーディング実施ためのプロセスをステップごとに解説します。

目的設定

オンボーディングにおける目的設定では下記の項目を明確にすることが重要です。

教育担当者は、企業の経営方針に向けた早期戦力化に向けて、伝えるべき「情報の提供」や「価値観の共有」について熟知しておくことがポイントです。

環境構築

「情報の提供」や「価値観の共有」を効果的に実施するためには、コミュニケーションが十分に取れるサポート環境が必要です。1on1ミーティングやメンター制度の導入や、社内ポータルやSNSツールの中から、自社の業務スタイルにあったものを採用しましょう。 また新入社員や中途社員がチームや会社に慣れるまで、メンバーを受け入れるチームの職場環境やフォロー体制も重要です。

プラン作成 

オンボーディングを効果的に行うためには、入社当日・ 1週間・ 1ヵ月・半年・一年位と、それぞれのタイミングで達成するべき項目を明確にしたプランを作成しましょう。

オンボーディングは長期的な取り組みですが、スケジュールを定めることは、教育担当者にとっても教育の指針となります。

プラン見直し

先に立てたプランは作成した人事担当や教育担当だけではなく、新入社員や中途社員の業務に関わる全ての従業員と共有し、ズレや無理がないことを確認することが重要です。 実際に業務にあたる現場の理解や納得を得ておくことで、 新しく加わったメンバーに対する歓迎やポジティブなサポートの文化醸造にもつながります。

プラン実施

プランの見直し・共有ができたら、実際にオンボーディングを実施します。 オンボーディング導入後、 予想してなかったイレギュラーやうまく効果の出ない項目もあるかもしれません。その場合は、どこに課題があるのか記録を残しデータ化することが重要です。 またオンボーディングの模索中に、新入社員や中途社員にうまく効果を発揮できていない事実を「情報の伝達」をすることで、不要な不安感を生むことを避けられます。

評価・分析

オンボーディングの実施後はプランに沿ったスケジュールのポイントごとに振り返りを行います。人事担当者や教育担当者だけでなく、チームメンバーや本人にもヒアリングを行います。 この時個人の主観的な感想だけではなく、プランの中であらかじめ設定した評価指標に基づいて評価・分析を行うことが重要です。

この振り返りで得た改善策を次回につなげることで、より早い即戦力化を望めます。

オンボーディング実施のポイント 
 

オンボーディング実施のポイントについて解説します。

①事前準備の徹底

株式会社リクルートキャリアが、従業員300名以上の企業に中途入社後1~3年の方を対象にアンケート調査によると、新しく入社したメンバーのパフォーマンス発揮者の8割弱は、⼊社前に⼈事とコミュニケーションを図っていたことが明らかになりました。 その一方、パフォーマンス不⼗分者は、半数弱しか⼈事とのコミュニケーションを実施していないという調査結果が出ています。

このように、事前の受け入れ体制を徹底することで、入社当日から個人のパフォーマンスを発揮しやすい状態を用意することができるのです。

②信頼関係の構築

新入社員や中途社員にとって安心して働ける職場環境には、信頼関係の構築が欠かせません。そのためには指導担当者と指導を受ける人物の信頼関係の構築だけでなく、組織や役職、チーム内の関係性、ステークホルダー、そしてそれぞれの人物の性格や傾向なども伝えていくことで、組織内での人間関係の構築をサポートしましょう。

③教育体制を整える

新入社員の即戦力化には、まず業務遂行のために必要な能力やスキルを教育する体制が必要です。 また中途社員にとっても企業の仕組みやルール、企業の価値観などを学ぶ必要があります。OJT制度やOff-JT制度や、マニュアルの提示などを行い、わからないことがあったらすぐに質問したり、調べられる教育環境を整えることが重要です。

④スモールゴールを設定する

新入社員にとってはいきなり大きな課題を掲げられることで、 成果を得られるまでに長い時間を要する場合があります。そこで課題を細分化し、スモールゴールを設定することが有効です。小さな目標を達成する体験を積みながら最終目標を目指すことで、途中で離脱することなく、やり遂げることができます。課題に対するスモールゴールの設定は自己肯定感や仕事へのモチベーションを育むのに有効です。

⑤フィードバックの習慣化

新入社員にとっては、すべての業務にはじめてのことが多く改善すべきことが自分で見つけられない場合もあります。また中途社員にとっては以前勤めていた会社の方針とズレが生じている場合があります。そこで指導担当者はフィードバックをする仕組みを作りましょう。 周囲からフィードバックを受けることで、本人が気づくことができなかった課題や解決策を、客観的に見つけることができます。

まとめ

オンボーディングを実施する際は、対象が新卒社員なのか、中途社員なのか、新入社員全体なのかによって内容がかわってきます。オンボーディングの効果を高めるためにも、採用者を一括りに捉えるのではなく、対象に合わせた施策を実施することが重要です。

また、オンボーディングは、基本的に長期的に行うものです。 一回の新人研修を企画するのとは性質が違い、企業における人材育成の目的の見直しや、組織内での環境作りが重要です。

オンボーディングは、人材の流動化が加速する現代において、企業にとって不可欠な活動と言えるでしょう。今回の記事を参考に、自社で取り組むための仕組みやプロセスについて考えてみてはいかがでしょう。
 

WRITER

大後 裕子

C-OLING代表

生活用品メーカーで10年間企画職に従事し、企画立ち上げから海外工場との商談、販促まで商品開発のゼロから一貫して行い、多くの商品をブランディングし、リリース。 8年販売され続けるヒット商品を始め、開発商品点数累計約1,200点、約1,700店舗へ導入。ブランディングを主軸とした、経営コンサルティング、 社内教育の3つの事業を通して、多くの人の生活に豊かさを提供ができる企業を社会に増やしたいと考えています。