社内報とは?効果的な社内報のポイント。組織に導入する目的と運用のコツ

2022-12-21

大後 ひろ子

C-OLING代表 ブランディングコンサルタント

組織組織開発

社内報とは、企業の経営方針や目標を伝えたり、そのための取り組みや社員の紹介などを共有するための社内広報のひとつです。新聞や冊子のような紙媒体で全社員に配布されるものが主流でしたが、最近では社内報アプリや動画でのメッセージ配信といった、WEBでの社内報発行を導入する企業も増加傾向にあるなど、社内報の形態は多岐にわたっています。

社内報によって企業としてのメッセージを発信することで「企業理念が浸透しない」「部署間での連携がうまく取れていない」「社内風土が醸成されない」といった、企業が抱える様々な課題の解決が期待されています。

今回の記事では、効果的な社内報のポイントや社内報制作の流れについて具体的に解説していきます。
  

社内報とは?

まずは社内報の目的と、その種類について解説します。

社内報の目的

企業の成長促進のためには、組織としての目的や、そのために何を従業員たちに求めているかを定期的に伝えていくことが不可欠です。しかし、部署間の交流が少なかったり、日々の業務に追われていると、会社全体でどのような取り組みが行われているのか、どのような社員が活躍しているのかを知る機会がないケースが多いのです。社員にとって、そのような自分と会社との関係や、共に働く社員の存在に対して希薄になる状態が続くと、会社への帰属意識の低下につながります。

そこで、社内報は、下記の5つのような帰属意識を高めるために用いられます。


①経営理念・企業ビジョンの浸透
社内報によって定期的に経営理念・企業ビジョンを共有することは、社員にとって受け取りやすいものになります。そのため、堅苦しくない発信と受け取りによって、経営理念・企業ビジョンが浸透しやすい環境を作ります。

②自社の取り組みの把握 
社員が日々の業務を行う上で知っておくべき業績や戦略、そのための行動指針といった、経営目標達成のための情報を共有します。

③社内情報の共有
他部署の新製品や新たな取り組みなど、部署をまたいだ専門知識や事例を共有することで、イノベーションが起こりやすい環境を作ります。

④社内コミュニケーションの活性化 
各部署の社員の紹介や、共通の話題となるトピックスを盛り込んだコンテンツを提供します。

⑤社員モチベーションの向上
部署や個人の業績の紹介や、資格取得といった成果を発表できるコンテンツを用意することで、モチベーション向上につながります。

社内報の種類

社内報を始めるにあたって、 どのような媒体を選ぶのか考えます。

  1. 紙:掲示板への貼り出し形式
  2. 紙:冊子形式
  3. WEB:社内アプリ
  4. WEB:動画サービス

大きく分けて紙媒体とWEB媒体での発信方法がありますが、どちらにもメリット・デメリットが存在します。媒体の選定の際に重要な事は、自社の社員にとってどの媒体を選ぶことが、受け取りやすい環境を作れるかを重視して選ぶことです。

効果的な社内報のポイント 
 

 

企業と社員の絆を強めるために、効果的な社内報を運用する重要なポイントについて解説します。

ターゲットと目的

社内報に限らず何かを発信する最大の目的は、読者の意識や行動の変化を促すことです。そのため一方的なメッセージの押し付けは、人の行動変容を促すことにはなりません。

社内報を始める際には、読者となってほしい社員が「どのような社員」であるかを明確にすることが重要です。次にその社員に起こして欲しい「意識や行動の変化」を社内報の目的として明文化します。それらを組み合わせることで、自社の社内報の方向性を導き出すことができます。

目標

次に社内報の効果測定ができるように目標の共有を行うことも重要です。社員に起こして欲しい「意識や行動の変化」が実際に実施できているか、測定するためにもアンケートの実施やインタビューの活用も視野に入れた運用が効果的です。

運用媒体

社内報のターゲットと目的、また効果測定できる目標が定まったら、運用媒体を決定します。紙もしくはWEB、または両者を合わせた運営の仕方を決定し、それぞれの方針や年間のテーマを決めていきます。

運用頻度・体制

次に運用頻度や体制を決めていきます。この運用に関して社内で運営メンバーを選出する場合は、現状の業務と無理に兼務させることは避けましょう。社内報には、インタビューや原稿制作、添削や制作といった多岐にわたる業務が発生します。そのため、兼務によって現状の業務の生産性を下げることにつながります。そのため社内メンバーを登用する場合でも、まずは一連の流れに慣れるまでは、社内報制作に実績のある外部パートナーを活用することで導入をスムーズにできます。

社内報を運用する目的を達成から逆算し、必要なコンテンツの量や、運用にかかわる人員や費用から算出して決定していきましょう。

コンテンツ

年間を通じたコンテンツを明確にすることによって、制作に携わる関係者全員と「社内報の目的」をぶらさずに運用することができます。社内報を通じた企業風土醸成のためには、一つのテーマに対しても、「目的を達成する切り口」を念頭において制作していくことが重要です。

社内報制作の流れ
 

 

社内報を制作するための具体的な流れについて解説していきます。

編集組織の選定

社内報の運用において、先にも述べたように、兼務によって現状の業務のパフォーマンスを下げない人員配置を心がけましょう。また外部サポートを起用する際は、社内でハンドリングを行う担当者やチームを選定します。

年間企画の立案 

社内報運用の目的を編集組織メンバーで共有し、3ヶ月・半年・1年単位で企画を立案します。自社の創立記念日や、イベントなどの年間スケジュールを考慮しながら、掲載する記事やコンテンツの方向性を、各号の掲載内容を立案していきます。

社内・社外のスケジューリング

各号の特集記事や連載記事の内容によって、執筆の依頼先や取材先を決定します。その際、ライター、カメラマン、デザイナーなどの外部サポートと連携が必要な場合は、双方のスケジュールを早めに調整しておきましょう。

原稿の作成・納品

行ったインタビューや撮影を元に、原稿の執筆や媒体のビジュアルデザインなどの制作を行います。社内報運用の目的とブレが生じていないか確認しながら校正を複数回行い、直し漏れのない完成したデータを最終承認者へ納品します。

印刷またはアップロード

最終承認者へ納品された原稿の、紙媒体への印刷、もしくはWEB媒体へアップロードを行います。どちらも読者にとって読みやすいタイミングで届くように、時間やスケジュールを調整して行うことが重要です。

読まれる社内報制作のために

読者である社員が読みたくなる社内報制作のためのポイントについて解説します。

媒体の工夫

読者である社員が社内報を読みやすくするためには、媒体の工夫が欠かせません。例えば、移動が多い営業担当を抱える組織では、持ち歩きに不便な紙媒体ではなく、社内アプリなどのWEB媒体の方が読みやすいコンテンツになります。また、社内での業務が多い部署では、掲示板に貼りだすことで、コミュニケーションの活性化を促すことにつながります。自社の業務実態に合わせて媒体の工夫を行うことは必要不可欠です。

親しまれる工夫

社内報に対して親しみを感じてもらうために、社員が参加できるコンテンツを設けることもひとつの方法です。例えば、会社周辺のランチ情報や、ペットや子供の写真コーナーなどを設けて、役職や部署関係なく、様々な社員のメンバーに親近感が湧く工夫をしましょう。

さまざまな社員を紹介する

社内報では役職者だけではなく、年齢や性別に関係なくできるだけ様々な社員を紹介するようにしましょう。そうすることで「自分にインタビューが来たらどう答えよう」と日々の仕事に張り合いが生まれ、モチベーションアップにもつながります。

まとめ

良い社内報とは、社員と企業の絆を強めるものです。経営の方向性やビジョン、そして企業理念を社員に浸透させることで社内の一体感を生むことにつながります。また、その一体感は、組織の生産性を高め、業績向上にもつながります。

そのためには、経営層からの一方的なメッセージの発信ではなく、社員が手に取って読みたいと思える社内報を作ることが不可欠です。社内報を発行する目的を明確にし、社員と共有していきたい内容を、わかりやすいコンテンツと言葉で作成することは重要です。また、社員が手に取りやすいように紙やWEBなどの媒体を選定したり、発信する時期や時間を工夫することによって、受け取りやすい社内報を作っていくことができます。

今回の記事を参考に、社員と企業の絆を強める社内報の作成への第一歩として、まずは
自社で社内報に取り組む「目的」について考えてみてはいかがでしょう?

WRITER

大後 裕子

C-OLING代表

生活用品メーカーで10年間企画職に従事し、企画立ち上げから海外工場との商談、販促まで商品開発のゼロから一貫して行い、多くの商品をブランディングし、リリース。 8年販売され続けるヒット商品を始め、開発商品点数累計約1,200点、約1,700店舗へ導入。ブランディングを主軸とした、経営コンサルティング、 社内教育の3つの事業を通して、多くの人の生活に豊かさを提供ができる企業を社会に増やしたいと考えています。