エンゲージメントサーベイとは?従業員満足度との違いと実施のステップ

2022-10-17

大後 ひろ子

C-OLING代表 ブランディングコンサルタント

組織その他

エンゲージメントサーベイは「従業員と組織のつながり」を数値化し、現状を把握するものです。リモートワークの普及によって、従業員にとって労働に対する価値観が大きく変化した現代、会社と従業員の「つながり」にも大きな変化がもとめられています。

この記事では、社員がはたらきやすいと感じる環境づくりのために注目されている「エンゲージメントサーベイ」について、基本的な意味から、実施のための7つのステップまでを詳しく解説しています。

エンゲージメントサーベイとは?

エンゲージメントサーベイは、ビジネスリーダーの間で注目されています。しかし、従業員個々のパフォーマンスを高めるためにも、エンゲージメントの向上に何をしたら良いのか頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか? まずはエンゲージメントサーベイの意味と従業員満足度の違いから確かめていきましょう。

エンゲージメントサーベイの意味

サーベイには、「調査」や「診断」という意味があります。
そこから、エンゲージメントサーベイとは、従業員の企業に対する愛着心や貢献意欲を調査し、数値化して可視化することを指します。

そもそも「エンゲージメント=engagement」とは、直訳すると「従事」「婚約」「契約」といった意味を持つ言葉です。双方の約束の意味を持つこの言葉は、「従業員」「顧客」「その他のステークホルダー」など、どの対象に対して使うのかによって目的が異なってきます。ここでは従業員に対するエンゲージメントに着目します。

「従業員満足度」との違い

従業員エンゲージメントと似た言葉で「従業員満足度」というものがあります。

従業員満足度は職場環境や社内の人間関係、働きがい、福利厚生、給与などの要素で計測される従業員の満足度を指します。いわゆる「職場の居心地の良さ」を測るものです。従業員満足度の高さは、社員の職場環境への安心感につながります。

一方、従業員エンゲージメントが高い場合は、従業員自ら業績アップのための生産性向上を目指します。なぜなら企業の事業内容に対して貢献度が高いので、進んで創意工夫を行う意欲があるからです。

こういった意味で「従業員満足度」と「従業員エンゲージメント」は、違う意味を持ちながら切り離せない関係であることは確かです。

サーベイによってエンゲージメントが高まることのメリット

従業員エンゲージメントが高いということは、ただ個人が組織に帰属しているだけではなく、双方の利益や成長に対して貢献し合う関係を構築できます。

①従業員のモチベーション維持・向上

エンゲージメントサーベイを実施することで、従業員が抱える問題を素早く見つけることができます。経営トップやマネジメント層はこれらの問題に対して適切なフォローを行うことで、従業員のモチベーションを維持することができるのです。組織として信頼関係を構築できるようになると、従業員はやりがいを感じ高いモチベーションを持って業務に取り組むことができるのです。

②生産性向上

エンゲージメントが高い企業では、個々の生産性・チームでの生産性も高い傾向があります。それは、サーベイで得た可視化された情報を、人事や職場環境の施策に組み込むことで、人材の最適配置を行っているからです。また、これらの施策を行うことで、従業員同士のコミュニケーションが活性化し、イノベーションを起こすことができる生産性の高い環境を実現することができるのです。

③離職率低下

サーベイによって従業員エンゲージメントを高めることができると、離職率を低下させられるという調査結果もあります。エンゲージメントが高いことは会社に対して愛着があり、自分の与えられた役割に対してやりがいを感じている状態です。

離職率の低下や定着率の向上に向けて、成長してきた従業員がより良い待遇を求めて離職する兆候がないか定期的なサーベイを行い、企業や仕事に対する意思を把握することにも有効です。

④リファラル採用

人材獲得が難しい現代において、注目が集まっているリファラル採用。既存の社員に候補者を推薦・紹介してもらうこの採用形式は、エンゲージメントの高い社員が、自分がよく理解している自分物に対して、自社を推奨するためマッチングの確率が高くなります。その結果、効果的な採用活動が可能になります。

⑤職場人間関係や人事のトラブル予防

サーベイの質問設定によっては、職場での人間関係によるトラブル予防につなげることも可能です。サーベイを行う際に守秘義務を徹底した「匿名性」での実施を行うことで、相談しにくいパワハラやセクハラなどの問題を浮上させることもできるのです。この場合は、必ず守秘義務を徹底することをアナウンスすることで、組織の中で埋もれてしまう繊細な問題をキャッチすることにもつながります。

エンゲージメントサーベイ実施の7ステップ

エンゲージメントサーベイを実施するには大きく7つのステップがあります。まずはサーベイの目的を社内に浸透させることから始まります。

STEP 1. 調査対象従業員への実施目的の共有

エンゲージメントサーベイを効果的なものにするために、調査対象となる従業員に実施の目的を、必ずあらかじめ共有することが重要です。

また、社員が不利益を被らないために、「匿名性」「守秘義務」についてしっかりと共有することで、自主的に質問に答えやすい信頼関係を構築することが重要です。

STEP 2. サーベイの設問を決定する

エンゲージメントサーベイの質問内容を決定します。サーベイ実施には自社で行うものと外部委託があります、必ず現状の自社に合った方を選んでください。

設問の内容は、最初に今回キャッチしたい課題の対象を選定します。例えば、会社全体・部署ごと・個人など対象を設定し、それぞれの課題にあった設問を決定します。

そして、従業員が答えやすいよう、定期的な実施スケジュールの組み立てや質問数に配慮することも忘れてはいけません。

STEP 3. サーベイを実施する

設問が決定したら、実際に従業員に向けてサーベイを実施します。ここでは解答期間や注意点などを事前に周知しましょう。

STEP 4. 調査結果分析から課題を洗い出す

エンゲージメントサーベイの結果を回収し分析を行います。この時、会社全体、部署ごと、個人といったそれぞれの規模で課題を洗い出しましょう。ここで可視化された課題は、現在の会社風土を構築しているのです。

STEP 5. 課題解決に向けた施策の決定

サーベイによって明らかになった課題に対して、解決するための施策を決定します。これらの結果は、人事や経営層だけではなく、従業員全体に開示を行いましょう。そうすることで自分たちの職場環境に対して関心を持てるようになるので、従業員エンゲージメントを高める施策を後押しします。

STEP 6. 新しい施策の実施

課題解決のための施策を一度にいくつも行うと、導入に対して職場での温度差が生まれる原因になります。その結果、サーベイを実施する前より状況が悪くなってしまう可能性があります。

今回のサーベイの効果を最大限発揮できるように、課題解決に向けて戦略的に施策を一つずつ実施していきましょう。

STEP 7. サーベイの再実施

エンゲージメントサーベイは定期的に行うことが重要です。なぜなら、実施した施策について効果検証を行うことによって、次のエンゲージメント向上のための戦略を立てることができるからです。また、定期的にサーベイを行うことは、従業員にとって自分と会社の関係性を考える機会の提供にもなります。

まとめ

エンゲージメントサーベイを通して、従業員の「本音」を知ることが可能です。従業員エンゲージメントを高めるためにも、会社全体・部署・個人などのそれぞれのフェーズで抱える問題を可視化することで見えてくる課題と向き合い一つひとつ解決していくことが重要です。定期的なサーベイと課題の実施のサイクルを回しながら、効率的に事業成長を目指しましょう。
 

WRITER

大後 裕子

C-OLING代表

生活用品メーカーで10年間企画職に従事し、企画立ち上げから海外工場との商談、販促まで商品開発のゼロから一貫して行い、多くの商品をブランディングし、リリース。 8年販売され続けるヒット商品を始め、開発商品点数累計約1,200点、約1,700店舗へ導入。ブランディングを主軸とした、経営コンサルティング、 社内教育の3つの事業を通して、多くの人の生活に豊かさを提供ができる企業を社会に増やしたいと考えています。