ワークライフバランス?正しい意味と、企業・個人で実現するための対策を解説
2022-10-24
大後 ひろ子
C-OLING代表 ブランディングコンサルタント
組織組織開発
ワークライフバランスとは、一人一人の仕事と生活のバランスを指します。2007年には内閣府が定めた「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」が公布されましたが、うまく導入できていない企業や個人がまだまだ多いのが現状です。
今回の記事では、ワークライフバランスの正しい意味や企業での導入に向けてのポイント、そして個人でできるポイントについて解説していきます。
ワークライフバランスとは?
多くの企業で取り組みが始められており、働く個人にも根付いてきたワークライフバランスの意味や歴史について解説します。
ワークライフバランスの定義
ワークライフバランスとは、日本語に訳すと「生活と仕事の調和・調整」となります。
また、内内閣府 男女共同参画局から公布されている「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」によると、ワーク・ライフ・バランスが実現した社会では「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」であると定義づけされています。
ワークライフバランスの歴史
ワークライフバランスという言葉が生まれたのは、1980年代のアメリカ合衆国だと言われています。当時のアメリカ合衆国では、女性がビジネス社会に進出するようになり、仕事と子育ての両立が社会問題になりました。
そこでアメリカ政府は「ワーク・ファミリー・バランス」や「ワーク・ファミリー・プログラム」といった施策を行いました。これらの支援によって、女性たちが子育てをしながらでも仕事を続けられるようになっていった動きが、ワークライフバランスの始まりと言われています。
ワークライフバランスの考え方は世界で広まり、今では女性の仕事と子育てに関する事だけではなく、子供の有無・性別に関係なく全ての人にとって重要なものになりました。
また日本では、1990年代にワークライフバランスが意識されるようになりました。
ワークライフインテグレーションとの違い
ワークライフバランスと似ている言葉として、「ワークライフインテグレーション」という言葉があります。 ワークライフインテグレーションはワークライフバランスを発展させた考え方と言われています。
ワークライフバランスは生活と仕事を両輪として捉えて、2つのバランスが崩れてしまうと双方に悪影響がでてしまう、という考え方です。一方ワークライフインテグレーションは、仕事とプライベートを分けて考えずに、双方を「インテグレーション(統合)」させて生活の質を向上させようとする考え方です。
ワークライフバランスのメリット
仕事と生活の両方に影響を与えるワークライフバランスのメリットについて解説していきます。
①女性社員の定着
女性社員の離職の原因として、キャリアアップやキャリアチェンジ以外に出産・育児・介護の問題があります。この課題解決は、女性リーダー・管理職の育成にもつながります。
現状では第一子誕生後に復職する女性は、約6割を占めると言う調査結果があります。その理由は、自分で子育てをしたいというポジティブな理由を除くと、企業の復職後育児支援や、示時短勤務などの働き方への理解がないことが多く、ワークライフバランスを保てないと判断し、離職の選択に至ってしまっているようです。
企業として出産・育児・介護に対して、建設的な理解と適切な支援を行い、柔軟な働き方の提案をすることで女性社員の定着を目指すことを心がけましょう。
②従業員のモチベーション向上
内閣府で公開している調査結果では「既婚・独身問わず、男女ともに、ワーク・ライフ・バランスが図られていると考える人の方が仕事への意欲が高い傾向にある」というものがあります。
ワーク・ライフ・バランスが整うと、プライベートの時間が確保できるので、趣味や自己啓発などを行えるようになり、人生全体の充実を感じられるようになります。その結果、仕事も生活にも良い効果が生まれるのです。
③労働生産性の改善
社会的なマクロな視点も、一企業としてのミクロな視点からも、経済・経営の好循環を生み出すためには、労働生産性を高め企業収益を改善していくことが重要です。
そのためにも業務の無駄の見直しによって、労働時間の削減や、在宅勤務や時短勤務、退職者の復帰などの施策によって、ワークライフバランスの改善をすることで、企業の労働生産性の向上を生み出すことができます。
④離職率の低下
本人の望むポジティブなキャリアアップやキャリアチェンジ以外の出産、育児、介護などが離職は、社員にとっては自身のキャリアを断念することになり、企業にとっては優秀な人材を失うことになります。
ライフワークバランスへの配慮は、企業にとっても優秀な人材流出を防ぐためにも必要な取り組みなのです。
⑤優良企業のイメージを醸造
世界ではSDGsに代表されるような、これからの企業のあり方に対して力を入れている企業に投資する動き(ESG投資)が進んでいます。これらの動きは、株主や投資家だけではなく、取引先や採用活動中の人材にも影響を与えています。
ワークライフバランスを尊重する企業には社会的信用を感じられるため、これからの企業先手における良いイメージを醸成することができるのです。
ワークライフバランスが注目される背景
日本のみならず、世界の企業でもワークライフバランスが注目される背景について解説します。
①少子化による出産・育児環境改善への対策
日本の労働人口の減少に対して、企業では優秀な人材の確保・育成が急務です。ワークライフバランスに向けた取り組みは、特に人材確保が困難な中小企業において大きなメリットをもたらします。
ワークライフバランスに向けた取り組みによって、業務の無理や無駄を見直すことができるので、業務の生産性を格段に向上させることにつながります。これらの取り組みは一朝一夕でできるものではありません。だからこそ企業にとって直近のコストではなく、未来への投資として積極的に取り組んでいくことが重要です。
②介護時代に向けた対策
少子高齢化によって、仕事を持つ多くの人が仕事と介護の両立を求められるようになります。その中でやむをえず離職を選択する社員が現れてしまわぬよう、育児介護休業法に基づく社内規定の整備が必要です。さらに、それらの取得を後押しするための企業側からの仕事と介護の両立支援の強いメッセージの発信も重要です。
社員が育児介護休暇を取得するには職場の理解が重要です。そのためには各企業内での仕事と介護の両立支援の説明会や勉強会の実施などを通して、働き続けられる環境づくりを行いましょう。
企業でワークライフバランスを実現するためには
離職率の低下・労働生産性の向上に向けて、企業でワークライフバランスを実現するためのポイントについて解説します。
①仕事と育児・介護の両立支援の導入
社員のライフステージの変化による仕事と育児・介護の両立支援のための制度の見直しが重要です。そのためにも性別に関係なく「育児休暇」「時短勤務」「在宅勤務」など多様な選択ができるよう、社内風土の醸成も同時に行います。そのためにも誰が制度を利用しても通常通り業務が回るように、業務の体系化を行いましょう。
②短時間勤務制度の導入
育児や介護によって通常の勤務時間で働くことが難しい社員が働き続けるために、数時間短縮して業務ができる短時間勤務制度はとても有効な手段です。
また、実際に多くの社員が利用できるようにするためには、従業員の多様な生活環境や働き方に合わせられるよう、短時間勤務のバリエーションを複数設定することが重要です。
③テレワーク制度の導入
テレワークを推進することによって、通勤時間の短縮ができるため個人や家族との時間を自由に活用できるようになりワークライフバランスを実現することができます。また、休業から段階的な職場復帰に向けた活用や、障害者の雇用促進など、働き方を柔軟に提示できるようになります。
一方で企業へ導入する際には、コミュニケーションの仕組みや、勤怠管理のシステムの活用にも配慮する必要があります。
④フレックスタイム制度の導入
フレックスタイム制とは、一定期間についてあらかじめ決められた総労働時間の範囲内で、始業や終業の時間を労働者が自由に決められる制度です。短時間勤務との違いは、「1日の労働時間が固定」されているかどうかです。
時短勤務は決められた時間で必ず働かなければいけませんが、フレックス制度の場合は、その日は午前中だけ勤務して、ほかの日に補填がすることも可能です。例えば、出勤後に子どもが預け先で発熱した際に、フレックスタイム制度であれば有休を取らずに迎えに行くことが可能です。
導入に向けてのポイントは、コアタイムを設けることです。チームビルディングに欠かせないコミュニケーションや一体感の醸成のために、一定の時間は従業員が一緒に働くことができる時間を確保することで、組織としての生産性維持につながります。
個人がワークライフバランス実現に向けてできること
企業での導入が遅れていると感じる場合、個人でもワークライフバランス実現に向けてできることを実施することもおすすめです。
①キャリア形成と能力開発に取り組む
企業では従来のような終身雇用、年功序列の文化が崩壊しつつあります。その中で自ら自身の市場価値を高めていくことは不可欠なのです。
そのために「不要な業務の洗い出し」や「スケジュールの見直し」「資料を整理し、時間の有効化」など、日々の業務を改善し、仕事の効率を上げましょう。また、社外での勉強会や社内のキャリア形成や能力開発の制度などを積極的に活用していきましょう。
②心身のヘルスケアが保てる働き方を考える
勤務形態や雇用形態を見直すことも、ワークライフバランス実現に向けて個人で取り組めることの1つです。 フレックスタイム制度や短時間勤務制度など、育児や介護と仕事の両立がしやすくなるよう、自分のライフスタイルに合わせた方法を考えてみましょう。
まとめ
ワークライフバランスが安定することは、社会・企業・個人のそれぞれに大きなメリットが生まれます。性別や年齢などに関係なく、誰でも様々な働き方や生き方に挑戦できる機会を作ることで、一人ひとりの経済的自立のための経済的基盤を確保できることが重要です。
そうすることによって、結婚や子育てに関して不安をなくす事ができ、家族や友人との充実した時間や、自己啓発や地域活動のための時間を持つことができます。ただ働くのではなく、自分の特性を活かして生産的に働き続けられる環境がこれからも支持されていく事でしょう。ぜひあなたの会社でも、今回の記事を参考に企業としてできることをひとつずつ実施していきましょう。
WRITER
大後 裕子
C-OLING代表
生活用品メーカーで10年間企画職に従事し、企画立ち上げから海外工場との商談、販促まで商品開発のゼロから一貫して行い、多くの商品をブランディングし、リリース。 8年販売され続けるヒット商品を始め、開発商品点数累計約1,200点、約1,700店舗へ導入。ブランディングを主軸とした、経営コンサルティング、 社内教育の3つの事業を通して、多くの人の生活に豊かさを提供ができる企業を社会に増やしたいと考えています。