grit(グリット)とは?成功者に共通する「やり抜く力」を高める実践方法

2022-11-21

大後 ひろ子

C-OLING代表 ブランディングコンサルタント

組織人材育成・マネジメント

グリット(grit)とは、「やり抜く力」と定義され、「成功者に共通する心理特性」として、起業家、ビジネスマン、アスリート、アーティスト、学者など多岐にわたる分野から注目を集めている言葉です。

今回の記事では世界から注目を集めるグリットの基本的な意味や4つの要素から、組織や個人でグリットを伸ばすための方法について解説します。

grit(グリット)とは

世界中で注目を集めるグリットの定義や4つの要素について解説します。

グリットの定義

グリットはアメリカの心理学者であり、ペンシルヴァニア大学のアンジェラ・リー・ダックワース教授によって提唱された「非認知能力」の一種で「やり抜く力」として提唱されたものです。

人間の能力は、大きく「認知能力」と「非認知能力」の2種類に分けられます。 

 「認知能力」
IQ(知能指数)に代表されるような、点数などで数値化できる知的能力

「非認知能力」
認知能力以外の能力を広く示す言葉で、テストなどで数値化することが難しい「メタ認知」「意欲」「クリエイティビティ」などの内面的なスキル。  


心理学の研究者になる前に中学校で教師をしていたダックワース教授の、シカゴの学校での調査によると、グリットを持つ学生は退学せずきちんと卒業していく確率が高いと分かったのです。

グリットの4つの要素

グリットの4つの要素は下記の通りです。

  1. Guts(闘志):困難なことに立ち向かう能力 
  2. Resilience(復元力):失敗しても粘り強く続ける力 
  3. Initiative(自発力):「自発的に目標を定め取り組む力」
  4. Tenacity(執念) :最後までやり遂げる力  

これらの頭文字をとって「やり抜く力」と言う意味で使われています。 

gritが注目される背景
 

 

グリットの考え方では、その人が成功するかどうかは、生まれ持った才能や環境のみで決まるのではないと考えます。つまりグリット(やり抜く力)が重要であって、それは大人になってからも後天的に伸ばすことが可能だと考えられています。

企業や人も、テクノロジーの進化により目まぐるしく変化する現代において、先天的な能力より、後天的に伸ばすことができるグリットによってその人の可能性を広げることに大きな価値を感じているのです。

グリットを伸ばすための方法  

グリットを伸ばすための方法について解説します。

① “少しハードな目標“を設定する

グリットを効果的に伸ばすために最も重要な事は、成長志向を持つことです。そのために現場の自分にとって”少し"ハードな目標”を設定します。高すぎる目標設定ではなく、今取り組んでいることの延長線上にある、少し高めの目標を設定し、それに対して「どうやったらできるだろうか」と前向きに思考・行動する習慣をつけることが重要です。また、具体的な数値や期間を設定することで、目標達成の目安や次の目標も立てやすくなります。

②“少しハードな目標“は自分で選ぶ

グリットを高めるためには目標を自分で選ぶことが重要です。 本人の興味がないことでは、たとえ成功体験を積み上げても、自己肯定感・自己効力感の向上に結びつきづらいのです。 グリットの高い人は自分で定めた目標に対して、主体的に取り組みます。これは人間の特性として、自分の選択や判断に責任を持つことで「途中で諦めよう」という衝動を抑えられる効果があるからです。

③“少しハードな目標“は変えてもよいとする

自身で目標を設定して挑戦を始めてもうまく成果が出ずに、続かない場合もあります。 ここで粘りすぎてしまうと悪いグリットになってしまう可能性があります。そこでうまく続けられなかった場合は、目標を変えても良いものとします。ただしその時の条件として自分が決めた具体的な数値や期間に対して自分の行った行動を分析することが重要です。次の成果に結びつけるためにも客観的なデータを取る習慣をつけることはグリットを高めるためにも重要なポイントです。

④グリットを持つ人の近くに身を置く 

グリットを鍛えるためにはグリットが強い人たちの近くに身をおくことが有効です。なぜなら人は自分の近くにいる人や物から影響を受けやすいのです。日常的にグリットの強い人たちと行動を共にすることで、目標の立て方や取り組み方と具体的なノウハウを吸収することができます。また、組織や周囲に手本となる人がいない場合は、グリットの強い人が書いた本などから情報を得ることも有効な手段です。

組織においては、チームの中核となるメンバーにグリットを持つ人物を配置すると良いでしょう。

⑤組織では、グリットを持つ人に対してトップがたたえる

良いグリットの1つである「謙虚さ」がうまく機能しない場合があります。それは謙虚さを追求するあまり、本人が成果をアピールできないケースです。その理由から「謙虚さ」が美徳とされている日本では、グリットがなかなか浸透していません。

そこで組織ではトップがグリットに対する取り組みを部下にアピールすることによって、グリットに対して良い印象を与える機会を設けましょう。 自らの習慣を変える事は1人では難しい場合があります。そこで組織全体でグリットを持つことに対するポジティブな印象を醸造していきましょう。

⑥短期だけでなく2年以上の長期目標設定をする

グリットを高める方法として長期目標を設定することが有効です。なぜなら、目の前の仕事だけをこなす短期的目標を続けていると、人はいつか疲弊してしまうからです。 目先の成長や利益だけではなく長期的な成長を視野に入れることで、目の前の仕事に意義を感じられるようになります。

組織においては、上司が部下に対して長期的な目標を設け、今やっていることが長期的成長につながることを視野に入れてマネジメントを行うことが重要です。

グリットの測定方法
 

 

grit(グリット)の提言者であるアンジェラ・リー・ダックワース氏が作成した「グリットスケール」を用いることで、現在のグリットを測定することができます。

下記の項目に対して自分がどう思うのか、5段階で答えていくシステムです。

1. 新しいアイデアや企画があると、ついそちらに気を取られてしまう。     
非常に当てはまる 1点 
かなり当てはまる 2点 
やや当てはまる 3点 
あまり当てはまらない 4点 
まったく当てはまらない 5点  

2. 妨げがあっても挫けないし、簡単にはあきらめない。    
 非常に当てはまる 5点
 かなり当てはまる 4点 
やや当てはまる 3点 
あまり当てはまらない 2点
 まったく当てはまらない 1点 

3. 目標を設定しても、途中で変えてしまうことがよくある。
非常に当てはまる 1点
かなり当てはまる 2点
やや当てはまる 3点
あまり当てはまらない 4点
まったく当てはまらない 5点  

4. 私は努力家だ。     
非常に当てはまる 5点
  かなり当てはまる 4点
 やや当てはまる 3点
 あまり当てはまらない 2点
 まったく当てはまらない 1点 

 5. 達成まで何ヶ月もかかるようなことだと、集中を維持することが難しい。 
非常に当てはまる 1点
 かなり当てはまる 2点
 やや当てはまる 3点
 あまり当てはまらない 4点
 まったく当てはまらない 5点

6. 始めたことは必ずやり遂げる。     
非常に当てはまる 5点
かなり当てはまる 4点
やや当てはまる 3点
あまり当てはまらない 2点
まったく当てはまらない 1点

7. 興味が毎年のように変わる。    
非常に当てはまる 1点
 かなり当てはまる 2点
 やや当てはまる 3点
 あまり当てはまらない 4点
 まったく当てはまらない 5点

8. 私は勤勉で、絶対にあきらめない。     
非常に当てはまる 5点
かなり当てはまる 4点 
やや当てはまる 3点 
あまり当てはまらない 2点 
まったく当てはまらない 1点     

9. アイデアや計画に夢中になっても、すぐに飽きてしまう。     
非常に当てはまる 1点 
かなり当てはまる 2点 
やや当てはまる 3点 
あまり当てはまらない 4点 
まったく当てはまらない 5点  

10. 大切なことを成し遂げるために、挫折を克服してきた。    
非常に当てはまる 5点 
かなり当てはまる 4点 
やや当てはまる 3点 
あまり当てはまらない 2点 
まったく当てはまらない 1点

まとめ

グリットが重視する「度胸」「復元力」「自発性」「執念」といった価値観は、決して即効性のある新しい概念というわけではありません。しかし成功者の多くも最初から天才だったわけではありません。長い時間をかけて何度も失敗や困難を乗り越え、粘り強く努力し続けることで結果を出してきました。環境の激しい現代社会において、「才能やIQ(知能指数)や学歴ではなく、個人のやり抜く力こそが、社会的に成功を収める最も重要な要素」を鍛えることで、人生の可能性を広げ、幸福度を高めることにつながります。

今回の記事を参考に、今日から早速gritを伸ばすチャレンジに取り組んでみてはいかがでしょうか?
 

WRITER

大後 裕子

C-OLING代表

生活用品メーカーで10年間企画職に従事し、企画立ち上げから海外工場との商談、販促まで商品開発のゼロから一貫して行い、多くの商品をブランディングし、リリース。 8年販売され続けるヒット商品を始め、開発商品点数累計約1,200点、約1,700店舗へ導入。ブランディングを主軸とした、経営コンサルティング、 社内教育の3つの事業を通して、多くの人の生活に豊かさを提供ができる企業を社会に増やしたいと考えています。