組織開発の基本!始める前に知っておきたいステップと人材開発との違い

2022-09-13

大後 ひろ子

C-OLING代表 ブランディングコンサルタント

組織組織開発

事業拡大に向けた従業員の増員や、各世代間社員が関わることによって、社内環境に変化が生まれます。そこでスムーズに環境整備が行われる場合もありますが、せっかく採用した新人社員やエース社員が社内環境の変化に馴染めず、最悪の場合離職してしまうケースも少なくありません。

こうした状況を打破するのに注目されているのが「組織開発」です。従業員個々の現状の能力ではなく、人と人の間の関係性や、相互作用の成長・改善に着目して、より良い組織構築を目指す手法です。そのため「若手社員の早期戦力化」「管理職育成」「女性従業員の活躍」に対して悩みを抱える多くの企業が、組織開発に着手を始めています。

今回の記事では、事業拡大・社内エンゲージメント向上に向けて注目が集まる「組織開発」についての基本知識から、導入に向けた6つのステップをご紹介していきます。

組織開発とは?

英語では「Organization Development 」略して「OD」と呼ばれる組織開発。
組織開発は、人と人との「関係性」や「相互作用」に着目し、当事者が課題を見つけて自ら改善方法を考えて実行を重ね、より良い組織を構築する手法です。

そのために着目されるのが組織のプロセスです。社内の変革を鈍らせる価値観のズレを見つけて改善施策を行うことで、従業員の当事者意識とチームの協調性を高め、その結果強く健全な組織を開発していくことを目的とします。

組織開発が注目される背景  

企業の成長には、トップダウンの指令を従業員が淡々とこなすのではなく、自らの行動で組織をより良く変化させていくことが不可欠です。特に組織を取り巻く環境が著しく変化する現代において、パフォーマンスを最大化した個人が集まり、チームとして円滑に業務を遂行できる自走型組織の構築が欠かせません。

組織を変化させるには従業員個人個人の「環境の変化に対応する力」「主体性を持って行動する力」「パフォーマンスを上げる考え方」が必要となります。もちろんそのために経営層はその行動を支援することも欠かせません。そのために組織開発が求められているのです。

組織開発と人材開発の違い

人材開発と組織開発はよく混同されがちですが、それぞれに違った目的や効果があります。また、効果的なアプローチも企業ステージによって異なります。用語の意味と目的効果について一度整理してみましょう。

2-1.人材開発とは?

人材育成は、従業員(人材)の個々の能力や業務スキルを向上させて組織の成長を図ることを目的としています。具体的には、社内研修やキャリア開発などの訓練や教育を通して、人材の業務に対する能力や態度の向上が期待されます。業務に合わせた専門知識などを吸収するのに推奨されています。

2-2.人材開発と組織開発の目的の違い

人材開発は個々の能力アップが組織強化につながるという考えから、個人という「人」が開発の対象となります。一方組織開発は、従業員間の相互作用によって組織強化を図るものとして、人と人との間にある「関係性」や「相互作用」が開発の対象となります。

2-3. 人材開発と組織開発のアプローチの違い

例えば「新人社員の早期戦力化」を課題とした場合。

人材育成

本人の現在の能力に原因があると捉え、本人に教育を施す

組織開発

本人と上司、または職場の同僚との関係性に原因があると捉え、関係性の改善を図る

このように人材開発と組織開発は目的やアプローチが異なります。企業のステージや職場環境によって2つの開発施策を目的別に使い分けることによって、あなたの会社が抱える様々な課題を解決しやすくなるでしょう。

組織開発の6つのステップとポイント

人と人との関係性の改善に関しては上司が間に入って愚痴を聞いたり、飲み会を開いて腹を割って話せば解決するというものではありません。もちろん当事者の話に耳を傾けることは重要ですが、「原因のありか」を見つけ「課題を設定」し「改善方法」を実行することが重要です。

ここでは組織開発のための6つのステップについてお話しします。

3-1.企業・事業の目的の決定と共有

組織開発に取り組むために第一にすべきことは、組織としての目的を明確にすることです。自社の目指すべき姿を、企業理念やビジョン・ミッション・バリューと照らし合わせながら決定します。ここで注意したいのが、企業理念やビジョン・ミッション・バリューが古くなっていないか確認することです。企業によってはステージが変わって、目指すべき姿が更新されているケースがあります。また企業理念やビジョン・ミッション・バリューを従業員全体に共有することも欠かせません。現在の自分たちの理想の姿を明確に共有することで、企業成長の方向性を定めることができます。

3-2.現状を把握する

組織開発においての従業員同士の関係性やチーム内の状況、またコミュニケーションは形がなく捉えづらいものです。そのため「従業員同士のコミュニケーションが活発じゃない」「従業員が疲れているようで笑顔が少ない」といった曖昧な言葉で表現してしまいがちです。しかし組織開発を成功させるためには「事実」に基づく組織内の関係性の検証が欠かせません。そのために従業員へのアンケートやヒヤリングを行い、情報をまとめることです。抽象的な問題であるからこそ問題を可視化し、現状の把握を行いましょう。

3-3.課題を絞り込む

現状把握の次に行うことは、課題の設定です。組織開発の課題は「モチベーション」や「人間関係」「職場環境」などが複雑に絡んでいるケースが多く見受けられます。そのため、対象となるチームへの多角的な意識調査やインタビューを通して、課題の絞り込みを行いましょう。

3-4.スモールステップでテストする

課題の設定の次に行うことは、スモールステップでのテストです。組織開発は長期的な戦略ですが、まずは小さくテストすることが重要です。対象となるチームのワークショップやミーティングなどから、スモールステップの効果をスピーディに判断し、次のステップに進めることができます。

3-5.効果検証と共有

スモールステップでテストの結果は、良くても悪くても、効果検証としてチームに共有することが重要です。良い結果を共有する事は対象チームのモチベーションを高めることにつながります。また悪い結果であっても、アプローチ方法の改善をチームで自主的に検証するチャンスになるのです。

3-6.勝ちパターンを分析・社内で共有

組織開発ではスモールステップで成功したケースに対して、成功した理由を分析することが重要です。

このようなポイントを整理し、成功事例として会社全体で展開しましょう。また、「取り組みの一連の流れを共有できる仕組みの構築」「チームリーダー同士での事例の共有」といった仕組みづくりを行うことで、自ら考え行動できる組織を効果的に構築することができます。

まとめ

自走できる組織づくりのために行う、従業員同士の関係性や相互効果を向上させる組織開発。戦略的に取り組むために、まずゴールである企業の目的を決定し、共有をすることから始めましょう。そしてゴールに対する現状を把握することで課題を絞り込むことができます。また急激な変革ではなく、スモールステップでテストを実施、効果検証を積み重ねることで、あなたの会社の勝ちパターンを作り上げることができます。ぜひ今回紹介した5つのステップで効果的な組織開発に取り組んでみましょう。

WRITER

大後 裕子

C-OLING代表

生活用品メーカーで10年間企画職に従事し、企画立ち上げから海外工場との商談、販促まで商品開発のゼロから一貫して行い、多くの商品をブランディングし、リリース。 8年販売され続けるヒット商品を始め、開発商品点数累計約1,200点、約1,700店舗へ導入。ブランディングを主軸とした、経営コンサルティング、 社内教育の3つの事業を通して、多くの人の生活に豊かさを提供ができる企業を社会に増やしたいと考えています。