ジョブローテーションとは?効果的な導入方法とメリット・デメリット

2022-12-21

大後 ひろ子

C-OLING代表 ブランディングコンサルタント

組織人材育成・マネジメント

ジョブローテーションとは、社員の能力開発を目的とした人事計画として行われる戦略的な部署や職務の異動を指します。企業の特性によって「幹部候補人材」の「育成や配属のミスマッチを防ぐ」といった、それぞれ明確な目的の上で複数の職務を経験させます。

今回の記事では、ジョブローテーションにおける企業側・社員側のそれぞれのメリット・デメリット、そしてジョブローテーションの効果を高めるポイントについて解説していきます。

ジョブローテーションとは?

まずはジョブローテーションの目的、そして注目が集まる背景について詳しく解説していきます。

ジョブローテーションの目的

ジョブローテーションは、社員が2〜3年の間、それぞれの職務を担当することで見えてくる特性を掴み取り、最も生産性が高められる適材適所な配置を行うためのものです。ここでポイントなのが、短期間での「現場体験」ではなく、企業全体にとって必要な人材を、数年かけて育てる制度であるということです。

ジョブローテーションに注目が集まる背景

ジョブローテーションは元々、経営幹部候補を育成するために社内の全体を把握させることが目的とされていました。しかし、昨今の技術進化により、ビジネスシーンはかつてないスピードで変化を続けています。価値観の変化や多様性に応える事業を作り続けるためには、短期間で経験した業務による知識では、戦力としては十分ではなくなってきているのです。

そこで多様な業務の経験を、単に知見を広げるためにではなく、業務の適性を見極め、人材を配置に活用する育成制度としてジョブローテーションに注目が集まっているのです。

組織におけるジョブローテーションの役割

ジョブローテーションに注目が集まるには大きく3つの役割があります。

経営幹部となる人材の育成

ジョブローテーションでは、将来の企業運営を担う経営幹部候補の育成につなげることができます。この場合、企業構造に対して理解を深める必要があるため、通常のジョブローテーションより長期間での異動をします。

新人の育成と配属のマッチング

労働人口減少が問題視される現代において、企業にとって、社員一人一人の生産性を向上するために適材適所の人材配置が重要です。 特に新入社員の場合はどのように適しているか見極めることが難しいものです。そこでジョブローテーションを行い、社内の業務をいくつか経験することによって、本人の特性が明確になるため、人員の適材適所への配置を行う基準にすることができます。

業務の属人化防止

ジョブローテーションには業務の属人化を防ぐ目的もあります。ジョブローテーションを行うことにより複数の社員が同じ業務を経験するため、やむを得ない離職などの場合にも業務を滞らせることなく進めることができます。また部署や個人への業務の一極集中を減らすことにもつながり、組織全体で社員のワークライフバランスも整えやすくなります。

ジョブローテーションのメリット 
 

 

ジョブローテーションのメリットについて解説していきます。

企業側のメリット 

①部署間の連携を活性化する
業務によっては、成果を上げやすくするために部署間の連携を活性化することも重要です。長い期間、社内での人間関係が固定されていると、社内での関係構築が困難になる傾向があります。また、自身の属する部署の効率を優先してしまうなど、全体的な視野に欠けてしまう恐れもあります。

②適材適所の人材配置 
労働生産性の向上や従業員エンゲージメントを高めるためにも、適材適所の人材配置は欠かせません。社員にとって自身が望むポジションと能力とのミスマッチを感じてしまうと、そのまま退職につながる可能性があります。そこで、ジョブローテーションを通して様々な業務を経験することで自身の特性を理解することができ、そのポジションでパフォーマンスを発揮することにつながります。

社員側のメリット 

ジョブローテーションを行うことの、社員側のメリットについて解説します。

①社内での人間関係の構築
ジョブローテーションを通して、社内での幅広い人間関係を構築することができます。
また部署外のつながりが増えることによって、所属部署内で生じた課題に対して、必要な助言を受けやすくなり、問題の早期解決につながります。

②自身の適性を見つけるきっかけになる
ジョブローテーションを行うことで、様々な職種を想像ではなく、体感することができます。そのため。入社当時描いていた自身のポジションよりさらに適性にあった職務を見つけることにもつながります。そこから自身の強みを伸ばしキャリアアップにつなげることも可能です。

ジョブローテーションのデメリット 

ジョブローテーションを行なった場合の、企業・個人におけるそれぞれのデメリットについて解説します。

企業側のデメリット 

①一時的に生産性の低下が起こる 
ジョブローテーションを行うと、社員にとっては業務に対して新たな挑戦が必要となります。そのため、新しい業務に慣れるまで一定期間時間がかかります。また、指導担当の社員にとっても、指導にあたる時間が取られるため、一時的に生産性の低下が起こる可能性があるのです。

②社員の離職を招く可能性
ジョブローテーションでついた新しい職務に対して、適性が合わず不満を抱える社員が出てくるケースがあります。しかしジョブローテーションでは、社員が2〜3年の期間しっかりと業務に向き合うことで適正を見極める制度のため、その期間中に離職の検討につながる可能性があります。

③スペシャリスト育成に不向き
ジョブローテーションでは2〜3年という一定期間で業務が変わるため、専門的な知識や経験をできないケースがあります。ジョブローテーションは幹部候補人材のような社内の全体を把握する場合には適していますが、研究職やスペシャリストが必要な業務には不向きです。

社員側のデメリット 

①専門性を身につけられない
スペシャリスト志望であっても、ジョブローテーションによって幅広い視野を持つ事は将来的に意義のあることですが、新しい部署での人間関係の構築や環境の変化によって、生産性が著しく低下する場合があります。


②希望する業務に長期間たどり着けない可能性がある
特定の業務を希望して入社を決める社員は少なくありません。しかし、ジョブローテーションは、企業側が生産性向上のために最適な人材配置を行うことが目的としているため、社員によっては、希望する業務に長期間たどり着けず、離職を選んでしまう懸念もあります。

ジョブローテーションの効果を高めるポイント
 

 

企業や組織でジョブローテーションを導入する際、効果を高めるポイントについて解説します。

経営陣による目的の策定

ジョブローテーションは、部署をまたいだ異動や勤務地が変更になるケースがあり、社員に対して負荷をかけるシーンも多々出てきます。そのため、導入においては、ジョブローテーションで自社が達成したい目的を明確にすることが重要です。

目的の周知

ジョブローテーションを組織で導入する場合は、目的を丁寧に集中・説明することが重要です。また、組織を活性化するための前向きな異動であることを伝え、上司や人事部とともに異動後のキャリアイメージを描くことで、不安を払拭することができるでしょう。

サポート体制の構築

ジョブローテーションを導入する際に、スムーズに業務を開始するために、異動先の業務をマニュアル化しておくことをお勧めします。

また、異動直後は指導スキルの高い社員がサポート役に就いたり、上司との定期的な1on1ミーティングを行うといったサポート体制を構築しておくことも重要です。

まとめ

戦略的なジョブローテーションは、企業にとって人材を適材適所に配置する基準になります。また部署間での交流が活性化するなど、イノベーションを起こしやすい組織風土の醸造にもつながります。一方、業種によっては専門性が高められずスペシャリストの育成につながらないといった懸念材料もあります。

今回の記事を参考に、自社の業種や専門分野の特性を理解することで、 より効果の高いジョブローテーションを実施することができるでしょう。
 

WRITER

大後 裕子

C-OLING代表

生活用品メーカーで10年間企画職に従事し、企画立ち上げから海外工場との商談、販促まで商品開発のゼロから一貫して行い、多くの商品をブランディングし、リリース。 8年販売され続けるヒット商品を始め、開発商品点数累計約1,200点、約1,700店舗へ導入。ブランディングを主軸とした、経営コンサルティング、 社内教育の3つの事業を通して、多くの人の生活に豊かさを提供ができる企業を社会に増やしたいと考えています。