トップダウンとは?ボトムアップとの違い。組織を成長させる意思決定を解説

2022-11-08

大後 ひろ子

C-OLING代表 ブランディングコンサルタント

組織組織開発

トップダウンとは、組織の上層部が意思決定をし、その指示のもと下部組織が実行する企業の意思決定スタイルを指します。簡単にいうと「上司や経営層が決めたことに対して部下が動く」という仕事の進め方です。

また、企業の意思決定スタイルにはボトムアップという方法もあります。
今回の記事ではトップダウンとボトムアップのそれぞれの意味と違い、それぞれのメリットとデメリット、そして 企業でその2つを両立させる取り組みのポイントについて解説します。

トップダウンとは

企業経営の意思決定スタイルには「トップダウン」と「ボトムアップ」という2つの方式があります。 ここではそれぞれの定義と違いについて解説します。

トップダウンの定義

トップダウンは英語で「Top-down」と表記し、 直訳すると「上意下達の」と表現されます。

いわゆる「上司や経営層が決めたことに対して部下が動く」という仕事の進め方なので、意思決定から実行までのスピードが速いことが特徴です。

ボトムアップの定義

ボトムアップを英語で「Bottom-up」 と表記し、直訳すると「下意上達の」と表現されます。

ボトムアップでは 企業の下層部、いわゆる現場のメンバーから上層部が提案を吸い上げて、そこから意思決定を行う意思決定スタイルです。実際の 現場で働くメンバーの意見を反映できるので、実情を反映した意思決定が可能です。また現場の実情に合わせて、従業員に寄り添った組織運営をすることができます。

トップダウンとボトムアップとの違い

トップダウンとボトムアップでは、「上意下達の」「下意上達の」というように、純粋に意思決定の工程が異なります。 

トップダウンは、トップが「意思決定」を行い、下の構成人員へと指示を流し、それに基づいて現場が行動していくスタイルです。
ボトムアップは、現場からの意見やアイデアを基に、トップが「組織としての意思決定」を行うスタイルです。

この2つの意思決定スタイルには優劣はなく、 自社で導入する際は両方の特性を理解した上で、課題に取り組むことが重要です。

トップダウンのメリット
 

 

トップダウンのメリットについて解説します。

意思決定から実行までが速い

トップダウンは、意思決定を行う人物が「トップの1人」もしくは「役員などの少人数」です。そのため意思決定までのスピードが速く、現場で実行するまでの時間を削減することができます。

トップダウン方式では、深い階層がある大きな組織でも、大きな変革もスピード感を持って実行できます。また小さな組織においても、 着手しないと結果がわからないような新規事業を起こす際に、トップダウンのスピード感が有効になります。

組織運営に一貫性が出る

トップダウンがうまく機能している組織では、経営層と現場のメンバーに信頼関係が構築されています。そのため会社全体の意思決定から、実際顧客に届く商品やサービスにまで一貫性を持って運営することができます。

社内のリソースを集約できる

トップダウンでは各現場の組織に優秀な人材がいなくても、経営層や各部署のトップに優秀な人材を配置することで、生産的に組織を運営することができます。

トップダウンのデメリット

トップダウンのデメリットについて解説します。

ワンマン経営に陥る可能性がある

トップダウンでは、 「経営層や各部署のトップ」と「現場の従業員」の間の信頼関係が重要です。この信頼関係がない場合、 現場の従業員が指示に従わなくなる可能性があります。また、現場の声を無視した一方的な命令に対して反対意見を言わせない雰囲気があると、 経営層や各部署のトップの周りには、イエスマンばかりが残ってしまい、ワンマン経営に陥る可能性があります。

企業として大きなダメージを負う可能性がある

トップダウンで意思決定を行う場合、その判断1つで企業として大きなダメージを負う可能性もあります。基本的には会社に利益をもたらすための意思決定ですが、判断を誤る可能性があることを忘れてはいけません。「経営層や各部署のトップ」がトップダウン形式をとる場合は、リスク管理のスキルも必要です。

従業員が成長しづらい

トップダウン形式のみで組織を運営していると「指示待ちをする人間」が増える可能性があります。 その結果、従業員が自分で考えることを怠るようになり、従業員が成長しづらい組織風土を作るおそれがあります。

また、顧客満足度を下げるリスクもあります。現場で発見や良いアイディアが生まれても、「経営層や各部署のトップ」にフィードバックされることがなくなってしまい、商品やサービスの質を落とす原因にもなるのです。

ボトムアップのメリット

ボトムアップのメリットについて解説します。

現場の声を集めやすい

ボトムアップでは、現場での接客や商品を生産する従業員などから、リアルな発見や気づきをフィードバックすることができます。そのため、 売り上げに直結するような新しいアイディアやサービスの改善点など、企業成長に有益な情報をいち早く把握することができます。

従業員の個人の能力を引き出しやすい 

ボトムアップでは現場の意見が社内に通りやすいことが特徴です。 目の前の接客や商品、サービスがどうすればより良くなるのかを考えて自ら行動できるようになります。その結果個人の能力が引き出しやすい環境を構築することができます。また、意見の通りやすい環境は、会社をより良くしていこうと言う社内風土の醸成にも役立ち、社員のモチベーションアップにもつながります。

ボトムアップのデメリット

ボトムアップのデメリットについて解説します。

意思決定・実行までに時間が掛かる

ボトムアップの提案は、 経営トップに届くまでに時間がかかるのが特徴です。現場から各部署のトップ、各部署のトップから経営トップというように、階層が多いほど時間を要します。そのため せっかくの提案も経営トップに届くまでには、現場とのタイムラグが生じてしまいます。またボトムアップの工程の中で、提案の内容がそぎ落とされてしまう可能性もあります。

現場に優秀な人材が必要

ボトムアップのスタート地点は「現場」です。 そのため現場メンバーが知識や経験を豊富な優秀な人材でなければ、成長させるほどの気づきや改善点を立案することができません。 また現場の判断が適切でない場合間違った方向に進んでしまう恐れもあり、企業経営にブレが生じる可能性もあります。

トップダウンとボトムアップを両立させる取り組み
 

トップダウンとボトムアップのそれぞれのメリットとデメリットを理解した上で、この2つを両立させる取り組みについて解説します。

トップダウンを行う際に意識するポイント

大きな意思決定はメンバーの意見を聞く

トップダウンは「合理的な指示」が必要です。 実際の現場とかけ離れた大きな意思決定は従業員のモチベーションを大きくそいでしまう可能性があります。そういったリスクを減らすために、現場に近い各部署のトップとコミュニケーションを増やし現場への知識や理解を深めることが重要です。

またトップには「この人の言うことなら大丈夫」と日ごろから感じてもらえるような一定のカリスマ性や信頼感も求められます。 そのためにトップは組織の明確な目標や解決のための戦略を現場のメンバーに明確に提示できる能力が必要です。

トップが責任を取る意識を持つ

トップダウンはトップの意思決定が企業の意思決定になります。そのためトップは難しい局面においても 判断を下し、その判断に対して責任を取る意識が必要です。

ボトムアップを行う際に意識するポイント

部下から上がってきた提案を潰さない

ボトムアップの基本は現場からのフィードバックです。 そのため、部下から上がってきた提案を潰さないことでボトムアップが効果的に機能します。もし、ボトムアップ形式の採用を組織で交付した後に、提案を跳ね除けられてしまった従業員は、それ以降提案をしなくなってしまいます。

<積極的に挑戦できる風土を作る

ボトムアップを効果的なものにするためには、現場のメンバーが自発的に意見を出せる雰囲気や仕組みを整えることが重要です。そのためにも「トライアンドエラー」を歓迎できる風土を育てることで、現場のメンバーが積極的に提案できるようになります。またこの習慣が、現場のメンバーを徐々に質の高い提案もできるように成長へと導きます。

まとめ

トップダウン・ボトムアップ、どちらにもメリット・デメリットが存在します。だからこそ組織のトップやリーダーは、自社の現状を客観的に捉え、業界や組織のステージ・世界状況に合わせて、適した意思決定スタイルを選ぶといいでしょう。  

最終的な意思決定は組織のトップやリーダーが下すことになります。最適な判断を下すために、頑なにトップダウン・ボトムアップのどちらか一方に偏るのではなく、両者のいい部分を柔軟に取り入れながら意思決定することが大切です。


今回の記事を参考に、自社の業務のそれぞれの要所の意思決定のスタイルにトップダウン、 ボトムアップ のどちらを用いたら生産性が上がるか、考えてみましょう。
 

WRITER

大後 裕子

C-OLING代表

生活用品メーカーで10年間企画職に従事し、企画立ち上げから海外工場との商談、販促まで商品開発のゼロから一貫して行い、多くの商品をブランディングし、リリース。 8年販売され続けるヒット商品を始め、開発商品点数累計約1,200点、約1,700店舗へ導入。ブランディングを主軸とした、経営コンサルティング、 社内教育の3つの事業を通して、多くの人の生活に豊かさを提供ができる企業を社会に増やしたいと考えています。