1on1とは?部下を育てる効果的なミーティング。目的・効果・質問のコツを解説
2022-12-21
大後 ひろ子
C-OLING代表 ブランディングコンサルタント
組織人材育成・マネジメント
1on1ミーティングとは、上司が部下に対して育成やモチベーション向上を目的に、一対一で行う面談を指します。短いスパンで行われることが特徴で、週に1回、長くても月に1回、定期的なペースで開催します。
1on1ミーティングは主に、部下の成長を促すために用いられるもので、ヤフー株式会社など多くの企業が注目しているマネジメント手法のひとつです。
今回の記事では1on1ミーティングと通常の人事評価面談との違いや、導入のメリット、そして1on1ミーティングを成功させるスキルについて解説していきます。
1on1とは?
まず、1on1ミーティングの概要とその目的について解説します。
1on1ミーティングの概要
部下と信頼関係を築き、成長を促すためには、日々のコミュニケーションだけではなく、一対一の面談で今抱えている悩みや、希望などを理解していくことが不可欠です。では、一対一の面談で多くの人が思い浮かべる「人事評価面談」と1on1ミーティングの違いを見ていきましょう。
人事評価面談
目的:上司が部下を管理・評価する
話す内容:評価をするのに必要なこと
部下への影響:評価に関する話題なので、ストレスを与える可能性あり
頻度:年に1回~4回程度
1on1
目的:部下の成長を促す
話す内容:部下の現状をプライベートから業務改善まで幅広く
部下への影響:「傾聴」によって評価をしないため、相手をストレスフルな状態にしない
頻度:週1回~月に1回程度
1on1ミーティングの目的
1on1ミーティングの目的は、部下と信頼関係の構築・モチベーションの向上・課題解決による生産性の向上によって、成長を促すことです。そのために、週1回から月1回の定期的なペースで15〜30分程度のミーティングを行います。
多くの部下を抱える上司にとっては、それだけの時間を要するため負担が増えてしまう側面もあります。しかし、部下の業務に対して結果報告を受けるのではなく、計画実行中で方向性を細かくすり合わせることができます。その結果、業務の質やスピードの向上による業績の向上にもつながるのです。
1on1ミーティングのメリット
1on1ミーティングを行う4つのメリットについて解説していきます。
①部下の成長サイクルを早める
1on1ミーティングを行うと、部下は自身の業務における発言や言動に対して、失敗や成功を客観的に振り返る習慣がつきます。 さらに結果報告だけではなく、業務進行中に上司からのアドバイスをもらえることにより経験しながら学習をするサイクルが身に付きます。 業務において自分の得意分野や不得意なパターンを見つけることができ、自分の適性や可能性に気づくこともできるでしょう。このような体験に基づく気づきが本人のキャリア開発を後押しします。
②信頼関係の構築
組織において、部下は自分より上の立場にある人物に対して厳しい評価をしたり、一定の距離感を保とうとすることがあります。そこで、1on1ミーティングを定期的に行うことによって上司と部下の距離感が縮まり、相互の信頼関係の構築に役立てることができます。人は、心理的によく会う人物や会話をする人物に対して友好的な感情を抱きます。この効果を利用して日常の業務中では話せない内容に対して、近い距離感で話をすることができるようになります。
③成長段階や個性への理解度向上
1on1ミーティングを行うことで、業務を進行しながら目標や行動のすりあわせを細かく行うことができます。週1回のミーティングを行うことで、部下にとっては随時課題が明確になり、業務遂行のスムーズな道筋を辿ることができます。また上司にとっては、個々の部下の成長段階や特性が理解できるので、中期的なパフォーマンスの高い組織のチーム編成にも役立てることができます。
④部下の安心感・モチベーション向上
1on1ミーティングによって、部下の仕事に対するモチベーションが落ちる要因の改善をすることができます。なぜなら、「上司が部下の声をしっかり聞いて応えてくれる」という信頼感は、部下のモチベーション向上に大きく反映するからです。モチベーションの高い社員が増えることは、個人やチームの主体性や生産性が向上して組織が強くなり、その結果企業利益の向上にもつながります。
部下から聞き出す部下の4つのテーマ
1on1ミーティングを行う際、ただ闇雲に話すのではなく、下記の4つのテーマを部下から聞き出してみましょう。
仕事の進捗状況による課題や悩み
1on1ミーティングでは、傾聴によって現状の仕事の進捗状況から、課題や悩みを引き出すことができます。通常の業務中では忙しくて相談できなかったことも、じっくりと受け止めることができるので、根本的な課題解決への見通しが立てやすくなります。
職場環境
1on1ミーティングでは、部下本人のテーマだけでなく職場環境についての対話も行います。組織メンバーや取引先の様子、またトラブルの有無などを確認していきます。そうすることで、職場全体で起こりうるトラブルを未然に防ぐことにつながります。
体調やメンタルへの確認と理解
体調やメンタルの健康状態は、業務へのモチベーションや離職に関わる、最も大きな要素です。職場での人間関係や業務の負担について確認することで体調やメンタルの健康状態確認を行いましょう。
中長期キャリア
1on1ミーティングでは、部下の中期キャリアについても定期的に触れることをお勧めします。これから先自社においてどのようなキャリアを積みたいと考えているか、またそのために必要な能力やスキルは何かなどを話し合います。 このように、 日々の業務だけではなく中・長期的なキャリアビジョンを話し合うことで、部下のモチベーションを高い状態で保つことにもつながります。
1on1ミーティングの進め方
自社で1on1ミーティングを導入する際の適切な進め方について解説します。
STEP.1目的の決定と共有
最初に行うことは、1on1ミーティングを実施する目的を部下に伝えることです。
- 1on1ミーティングの主な目的
- 相互理解を深めるため
- 抱えてる課題の早期発見
- 課題解決のための知識譲渡
- 部下のモチベーション向上
事前に1on1ミーティングの目的を共有することで、一対一で面談をすることに対して、「仕事が増えるだけ」とネガティブな印象を持ってしまう事態を避けることにつながります。1on1ミーティングの効果を高めるためにも、相互に納得感を持った状態でスタートできるよう、事前の情報共有は不可欠なのです。
STEP.2スケジュールと場所の決定
次に、1on1ミーティングを実施する具体的なスケジュールと場所を決定します。1on1ミーティングは、なるべく定期的に行うことが重要ですが、業務の都合によっては日時の変動や、場所の変更を行っても問題ありません。ただし、間隔を開けすぎずに実施できるように早めの日程調整の実施や、話しやすい場所の選定などを行うことをお勧めします。
STEP.3実施と記録
次に、決定したスケジュールと場所で1on1ミーティングを実施します。上司は、聞きそびれる項目がないよう、アジェンダを作成しておくことをお勧めします。また、1on1ミーティングでは上司は「傾聴」を行い、まずは部下の話を聞くことを優先します。部下が話し終えたら事実に基づく「フィードバック」を意識しながら会話を進めます。1on1ミーティングにおける発言時間は、上司と部下で3:7程度が理想的です。
また部下の成長ステップを管理に役立てられるよう、1on1ミーティングでの会話の内容は、文書ソフトやクラウドツールに記録に残しましょう。
STEP.4次回のスケジュール・場所の決定
1on1ミーティングの最後に行うことは、次回のスケジュール・場所の決定をすることです。感覚を空けすぎずに定期的に1on1ミーティングを行うことで、部下の成長を確認しやすくなります。また、上司は部下の成長を発見したら、必ず部下にポジティブ・フィードバックを行うことで、成長を実感させることも重要です。部下にとって、定期的な課題への気づきや、解決できた達成感を感じられることで、高いモチベーションを保つことにつながります。
1on1ミーティングを成功させるスキル
上司と部下、双方の時間を使う1on1ミーティング。部下の成長に繋がるために身につけたいスキルについて解説します。
コーチングスキル
コーチングの基本は、傾聴です。 相手の現状をそのまま受け入れ、オープンクエスチョンによって価値観や現在の悩みを引き出すための問いかけを行います。この傾聴によって上司と部下の信頼関係を構築しながら、課題の解決や本人の成長を促します。
フィードバックスキル
フィードバックは部下の行った発言や行動に対して、 良かった点・改善すべき点を伝えることで成長を促すマネジメント手法の1つです。しかし、フィードバックは時間と労力をかけたのに、部下にとってはただの「ダメ出し」と受け取られてしまわないように、上司の主観を挟まずに事実に基づいて行うことが重要です。また、良い点を伸ばすポジティブ・フィードバックと耳の痛い改善点を伝えるネガティブ・フィードバックの両方を取り入れると良いでしょう。その際、受け取り手にポジティブとネガティブなテーマのどちらを話しているか、意識させることで効果を高めることができます。
話しやすい職場環境づくり
まとめ
1on1ミーティングでは、部下の細かな不安や悩みを聞き、的確なアドバイスをすることで、部下の成長を促すことが重要です。1on1ミーティングによって、一対一で話す場を意識的に設けることで、徐々に普段は言いづらいような業務に対する本質的な悩みまで、腹を割って話せるようになります。
今回の記事を参考に、部下の一人一人の生産性向上によって、組織全体の成果の底上げを狙える1on1ミーティングを、取り入れてみてはいかがでしょう?
WRITER
大後 裕子
C-OLING代表
生活用品メーカーで10年間企画職に従事し、企画立ち上げから海外工場との商談、販促まで商品開発のゼロから一貫して行い、多くの商品をブランディングし、リリース。 8年販売され続けるヒット商品を始め、開発商品点数累計約1,200点、約1,700店舗へ導入。ブランディングを主軸とした、経営コンサルティング、 社内教育の3つの事業を通して、多くの人の生活に豊かさを提供ができる企業を社会に増やしたいと考えています。