リフレクションとは? 人材育成を効果的にする内省の効果とそのプロセス
2022-10-27
大後 ひろ子
C-OLING代表 ブランディングコンサルタント
組織人材育成・マネジメント
リフレクションとは、「日々の業務や現場から一旦離れ、自分が経験した仕事を振り返ること」を指し、人材育成の1つの手法として注目を集めています。振り返りを通して自分の行動や考え方の改善方法を見出すことで、仕事や生活の生産性を向上させる効果が期待されます。
今回の記事では、リフレクションの基本的な意味から、個人でリフレクションを行う際のポイント、企業におけるメリットについて解説します。
リフレクションとは?
「リフレクション」(reflection)とは直訳すると「反射」「反応」を表すほか、状況・事情などへの反映、投影という意味を持ちます。そこから「内省」を意味する言葉として使われています。
リフレクションの意味
ビジネスにおいてリフレクションは、失敗したこと・成功したことなど体験したことをすべて含めて見つめ直すことで新たな気づきを得て、仕事や業務の進め方を改善し、さらなる挑戦へつなげる未来志向の取り組みです。
またリフレクションで重要なことは、ものごとが終わった後に内省するのではなく、ものごとを行いながら内省し、現状を客観的に見つめることだと言われています。
リフレクション(内省)と反省の違い
同じ「振り返り」の取り組みでも、「リフレクション(内省)」と「反省」は異なる取り組みです。
反省の主な目的は「誤り」を正すことです。自分の行なった言動を振り返り、間違いやミスを認識することで、同じ過ちを犯さないよう原因や理由について考える取り組みを指します。
一方のリフレクション(内省)では、自分の行なった言動を客観的に振り返ることが重要とされています。自分自身の状態や周りの環境を、感情に流されることなく客観的に観察することで、自分を責めることなく、未来志向な対策を冷静に見出すことができます。
リフレクションの目的
リフレクションは、内省による個人の業務改善やメンタルマネジメントにも有効です。さらに個人だけではなくチーム全体の効率化を図る上でも大きな効果をもたらします。
リーダーがリフレクションを行うことで、マネジメント能力の向上につながります。その結果チームの生産性が上がり、強い組織形成にも役立つのです。
リフレクションが注目される背景
テクノロジーの急速な進化やそれに伴う消費者行動の変化、新たなビジネスモデルの出現などビジネスを取り巻く環境が目まぐるしく変わる現代において、リフレクションを取り入れることはとても有効です。
変化する現状に対して、主観的に判断するのではなく、データや実情に基づいて冷静に判断できることは、ビジネスを続ける上で重要な能力の一つになるからです。
企業でリフレクション教育を取り入れるメリット
企業でリフレクション教育を取り入れるメリットについて詳しく解説します。
企業へのメリット
企業が従業員に対して、リフレクションを身に付ける支援を行うことは、人材育成においてリーダーシップを持った人材の育成を可能にします。
リフレクションを正しく行うことで、他人からの指導を待つのではなく、自分自身で物事を改善していく力が身につきます。客観的な思考が自然と身につくため、リーダーシップ能力を高めることにつながります。
ただし、リフレクションを個人で習得しようとした場合、正しいやり方や間違った考え方を実践してしまうと、本人にとって逆効果になる場合があるため、企業側から適切な支援を行うことが重要です。
従業員へのメリット
自分自身の評価を、上司や人事担当といった第三者の評価ではなく、自ら冷静に行うことができるようになるので、仕事に対する意識・行動の改善がスムーズにできるようになります。
そうすることで、仕事の生産性が向上し、第三者からの評価も着実に上げていくことができます。その結果、モチベーションアップにもつながり、個人のメンタルマネジメントにも大いに役立てることができるのです。
リフレクション実践 3つのプロセス
出来事を漠然と思い起こし、自分以外の外的環境の問題点についてばかり振り返ってしまうことは正しいリフレクションではありません。未来志向で建設的な改善を目指すためには、リフレクションを行う際は、以下の3つのプロセスがあります。
Step1:出来事を振り返る
Step2:環境や状況を振り返る
Step3:自己の行動を振り返る
Step1:出来事を振り返る
まず最初に、体験した出来事そのものを振り返ります。例えば、「売り上げ改善に向けて、新しい企画を提案した」というように考えます。
ここでは、主観的な良し悪しの判断は行わず、起こった出来事を思い返すことのみに集中します。
Step2:環境や状況を振り返る
次に、起こった出来事と、相手の行動や反応、環境などの因果関係について考えます。例えば、「新しい企画提案に対して、なぜメンバーは賛同してくれなかったのだろう」「なぜ、上司は承認してくれなかったのだろう」というように考えます。
Step3:自己の行動を振り返る
最後に、出来事・状況の振り返りを通して、自分がとった言動について振り返ります。ここで重要なのは、そのときの自分の意識や、自分の役割に注目することです。例えば、「自分の企画を通すために、もっと良い伝え方はなかっただろうか」「関連部署との連携は図れなかった」というように振り返ります。
これらの3つのステップがリフレクションの一連のプロセスです。客観的に状況を把握し、未来志向で改善策を考えるリフレクションによって、自分や周囲を責めることなく、より良い次の一手を打てるようになります。
企業でリフレクション教育を導入するポイント
企業でリフレクション教育を導入するポイントについて解説します。
OJTの効果が変わる
日本企業の約9割は、人材開発にOJTを取り入れています。
しかし、産業能率大学が2010年に発表した調査報告「OJTの現状(経済危機下の人材開発に関する実態調査から)」によると、「OJTが機能している」と答えた企業は全体の約13%であり、OJTを効果的に実施できている企業はとても少ないという結果を示しています。
そこでリフレクションを身につけることが注目されます。部下や新入社員が、OJTで得た経験に対して、上司や先輩からのフィードバックを待つのではなく、自ら改善策を考える習慣をつけることによって、仕事に対して能動的に取り組む流れを作ることができるようになります。
リフレクションが促進される職場環境づくり
リフレクションの文化を社内で浸透させるには、従業員が日々の仕事を振り返ることのできる環境を作りましょう。そのためにも上司は部下の業務に対する質問に、前向きに回答する姿勢を持つことが重要です。相談をしてもよさそうな時間的な余裕や、話を聞く姿勢を見せることで、部下は安心して悩みを打ち明けることができます。
そして部下は話を聞いてもらう中で、自分の課題に対して真剣に考えられるようになり、自分の発言や行動に対して冷静にリフレクションも行えるようになります。その結果、個人の生産性向上と組織内のコミュニケーションの活性化を同時に行うことができます。
従業員が効果的に取り入れるために
リフレクションを効果的なものにするには、本人の向き合い方も重要です。自分以外の外的要因に対しての責任転嫁や、できなかったことの言い訳にフォーカスすることは、自分が責任を負わずに済む対策ばかりを考える結果につながり、リフレクションの効果は望めません。
効果的なリフレクションは未来志向のアクションを目的として取り組みます。「本来望まれている結果と現状」や「ありたい姿と現状」などのギャップを冷静に見つめ、そのギャップを自分で埋めるための方法を考えることによって効果的に機能するのです。
まとめ
ビルディングや人材育成において、リフレクションが与える効果は大きなものです。特にテクノロジーの急速な進化やそれに伴う消費者行動の変容など、目まぐるしく変化する現代において、状況を客観的に捉え、次の一手を出せる力は組織にとって重要です。
今回の記事を参考に、未来志向なアクションが習慣化するようにリフレクションを取り入れてみましょう。その際、一人で行うだけではなく、他の人との対話を通して行うなど、個人や組織において導入しやすい方法で取り組んでいきましょう。
WRITER
大後 裕子
C-OLING代表
生活用品メーカーで10年間企画職に従事し、企画立ち上げから海外工場との商談、販促まで商品開発のゼロから一貫して行い、多くの商品をブランディングし、リリース。 8年販売され続けるヒット商品を始め、開発商品点数累計約1,200点、約1,700店舗へ導入。ブランディングを主軸とした、経営コンサルティング、 社内教育の3つの事業を通して、多くの人の生活に豊かさを提供ができる企業を社会に増やしたいと考えています。