プレイングマネージャーとは?管理職との違い。組織へのメリットとデメリット

2022-12-05

大後 ひろ子

C-OLING代表 ブランディングコンサルタント

組織組織開発

プレイングマネージャーとは、「プレイヤー」と「マネージャー」の2つの能力や役割を求められるポジションのことを指します。

日本のビジネスシーンにおいて、多くのリーダーがこのポジションを求められています。今回の記事ではプレイングマネージャーのメリットやデメリット、そして組織の生産性を上げるために必要な能力について解説していきます。

プレイングマネージャーとは?

プレイングマネージャーの概要と求められる役割について解説します。

プレイングマネージャーの概要

プレイングマネージャーは、「プレイヤー」と「マネージャー」の2つの能力や役割を求められるポジションのことを指し、組織内の生産性向上やコミュニケーションの活性化が期待されて設置されます。

プレイングマネージャーの役割

プレイングマネージャーは、個人としての目標の達成とチームの目標達成という2つの役割を求められます。

プレイングマネージャーに求められる2つの達成目標
プレイヤーとして、個人の目標を達成する力
マネージャーとして、部下を指揮してチームの目標を達成する力

組織におけるキャリアアップには、大きく分けて2つの道があります。1つ目は、プレイヤーとしてスペシャリストの道を歩む、2つ目は管理職として組織のメンバーの成長を促すという、どちらかの道です。しかし、プレイングマネージャーはそのどちらも高い能力を求められます。
プレイングマネージャーは現場を熟知した上で個人の能力を発揮しながら、部下を目標達成へと導きます。組織にプレイングマネージャーがいることで支持系統が機能しやすくなり、上層部と現場両方の納得が得やすくなります。

プレイングマネージャーが必要とされる訳

日本企業の多くでプレイングマネージャーが必要とされる理由について解説します。

プレイングマネージャーが生まれた背景

プレイングマネージャーが急増した背景には、IT技術の急速な発達があります。情報速度が格段に速くなり、意思決定の速度やコミュニケーションの活性化が必要になりました。

また、バブル崩壊後には経営が傾いた企業での大幅なコストカットの実施や、効率化を求める取り組みが行われました。取り組みの一つとして、実際の売り上げに直結しない管理職ポストの削減が一般的になったのです。その結果、実務とマネジメントの両方を兼務するプレイングマネージャーの存在が重要視されるようになりました。

管理職との違い

管理職もしくはマネージャーと呼ばれる役職の役割は、実務経験とは違った専門的なマネジメント力が求められます。組織のメンバーの特性を理解し、自社を取り巻く状況を十分に理解した上で、企業の目標達成のための具体的な取り組みを提示してマネジメントを行います。

プレイングマネージャーが個人と組織両方の目標達成への責任を担っている一方、管理職(マネージャー)は、組織のメンバーの力を生かして目標を達成することに集中したマネジメントが求められます。

プレイングマネージャー設置のメリット

プレイングマネージャーは現場と経営層の隔たりをなくし、現場の課題を経営層に問題提起し、組織の生産性をあげることが期待されています。ここでは、プレイングマネージャー設置によるメリットについて解説します。

生産性の向上

優秀なプレイングマネージャーは、実務能力と管理能力の両方に優れています。その自己成長を続ける姿は、組織のメンバーにポジティブな感情を与え、組織全体のモチベーションを高めます。 そのため、優秀なプレイングマネージャーがいることによって、個人・組織両方の生産性を向上させることにつながります。

現場の改善速度が高まる

プレイングマネージャーは自身も現場に関わるため、通常の管理職では見落としがちな現場の実態や改善点に気づくことができます。 プレイングマネージャーが現場で機能している事は、現顧客満足度に直結する改善速度を高めることに繋がります。

組織ロイヤリティの向上 

プレイングマネージャーは自身もメンバーの1人として現場に関わるため、現場の状況を理解・尊重し、寄り添ったマネジメントを行うことができます。 そのようなマネジメントを行うプレイングマネージャーに対して、メンバーからの 信頼が高まり組織へのロイヤリティーが向上します。

プレイングマネージャー設置のデメリット
 

 

プレイングマネージャー設置のデメリットについて解説します。

評価基準の曖昧さ

プレイングマネージャーには、プレイヤーとしての個人の目標と管理職としての目標が定められています。しかし片方だけが達成した場合、プレイングマネージャーの役割としてどのように評価すべきか、評価基準が曖昧になってしまうのです。

タスクの抱え込みによる生産性低下

プレイングマネージャーがプレイヤーとして有能な場合、「自分がやった方が早い」と捉えた仕事を引き受けてしまいマネジメント業務に充てるはずの時間が圧迫され、その結果長時間労働に陥ってしまうケースがあります。最悪な場合、この長時間労働によって生産性が低下してしまうことで、さらに労働時間が伸びる負のループに陥ってしまうケースがあります。

指導力が育成しづらい

プレイングマネージャーに任命される人材は、プレイヤーとして優秀な成績を収めた人物が抜擢されるケースが多いです。しかし、プレイヤーとして優秀な人物は必ずしもマネジメント能力に長けているとは限りません。

マネジメント能力の不足をプレイヤーとしての能力で保管してしまう場合もあります。 短期的な視点では業績を確保できるかもしれませんが、長期的な視点で考えたときに部下が育たない環境を作り出してしまう事は、組織にとってマイナスの影響を与えてしまうでしょう。

自身のスタイルの押し付け

プレイングマネージャーが部下に指導を行う時、自身の成績が優秀であるがゆえに自分のやり方を押し付けてしまうケースがあります。

良かれと思って行っているアドバイスが、部下にとっては、成功体験を聞かされているだけと言うこともあります。部下の特性、今自社を取り巻く環境、目の前の業務における課題、これらを理解した上で、部下にとっての最適な解決方法を示すことが重要です。

プレイングマネージャーに必要な能力
 

 

時間管理能力

プレイングマネージャーには、個人の業務をこなす時間だけでなく、部下の業務をマネジメントする時間が必要です。その両方の時間に追われて、どちらの目標も達成できなかったということを避けるためにも、時間管理能力を意識的に高めることが重要です。

一人で全ての業務を抱え込むのではなく、各業務の優先順位を中期・短期・当日に分けて把握し、メンバーに仕事の一部を任せたりすることで、プロジェクト全体が停滞することを避けるよう心がけましょう。

コミュニケーション能力

プレイングマネージャーがコミュニケーションスキルを磨くことによって、組織のメンバーの特性を理解でき、組織の生産性を上げることができます。またプレイヤーとしても組織のメンバーとコミュニケーションをしっかりとることができていれば、相互支援の関係を作り出すこともできます。

成長意欲

プレイヤーとしてもともと意欲的であった人材にも、プレイングマネージャーに着任した際には、今までの個人の業務範疇だけではなく、新しく組織を成功に導くマネジメントという業務が加わることになります。 そのため、今までとは異なる管理職としての新しい知識や情報を学び取ろうとする、成長意欲が必要不可欠です。

指導スキル

プレイングマネージャーには組織の目標を達成させるために、組織メンバーに適切な指導をする能力が必要です。部下の特性を理解し、パフォーマンスを発揮できる環境作りを行う事で組織の生産性を高めます。しかし個人の能力が高いプレイングマネージャーは、自らの力で完結してしまいがちです。優秀な部下を育て、組織の生産性を高めるために、 メンバー一人ひとりのステップに合わせた指導スキルが求められます。

まとめ

プレイングマネージャーに抜擢される人材は、個人成績が優秀な人材であるケースが多いのが現実です。しかし、本人が優秀であるからといって、マネジメント能力にも抜群に優れているとは限りません。
また実務と管理業務の両方をこなさなくてはならないことにプレッシャーを感じて、離職してしまうケースもあります。 本人の適性にあわせて、結果人事配置を行うことを忘れてはなりません。またマネジメント研修の実施や、個人・マネージャーとしてのそれぞれの評価を公平に行える人事評価制度が必要不可欠です。

今回の記事を参考に、自社の組織に合った人事配置や、プレイングマネージャーの役割について見直してみてはいかがでしょう。


 

WRITER

大後 裕子

C-OLING代表

生活用品メーカーで10年間企画職に従事し、企画立ち上げから海外工場との商談、販促まで商品開発のゼロから一貫して行い、多くの商品をブランディングし、リリース。 8年販売され続けるヒット商品を始め、開発商品点数累計約1,200点、約1,700店舗へ導入。ブランディングを主軸とした、経営コンサルティング、 社内教育の3つの事業を通して、多くの人の生活に豊かさを提供ができる企業を社会に増やしたいと考えています。