ポリコレとは?企業・経営者が注目するポリコレの事例や取り組みを解説

2022-10-18

大後 ひろ子

C-OLING代表 ブランディングコンサルタント

組織その他

ポリコレ(ポリティカル・コレクトネス)という言葉を知っていますか? 近年インターネットなどでよく知られるようになり、日本でも認知の広がりを見せる言葉ですが、まだまだ具体的に説明できる人は少ないのではないでしょうか?

特に企業経営を行う上で、トップリーダーや人事担当の方は理解を深めておくべき言葉です。この記事では「ポリコレ」の基本的な意味から、世界的な事例、そして企業として取り組むべき項目まで解説しています。

ポリコレとは? 

ポリコレ(ポリティカル・コレクトネス)の意味とその発祥について解説します。

ポリコレの意味

ポリコレとは、正式にはポリティカル・コレクトネス(political correctness
)と書き、「PC」と略称されることもあります。直訳すると「政治的妥当性」「政治的公正」「政治的正義」となり、社会的な観点から見て正しい用語や態度を心がけることを指します。

性別・人種・宗教の違いや、LGBT・高齢者・障がい者など人々が差別や偏見を受けることを防ぐために、差別的な表現を公平・中立な言葉の表現を使用することをいいます。

もともと、この概念は1980年代以降にアメリカ合衆国で誕生したものです。その背景には、さまざまな人種や宗教が存在するアメリカにおいて、少数派は多数派である白人やプロテスタントなどによって差別され続けたという歴史があります。  やがて、その差別を助長しているのが「政治的な正しさ」に欠ける差別的用語にあるのだという考えが提唱され、多くの支持を集めるようになります。その結果、ポリコレという概念が誕生し、公正・公平な表現・用語を使うことを推奨する運動が広まっていったというわけです。  

ポリコレの由来と発祥

ポリコレの発祥は、1980年代以降にアメリカ合衆国で起きた政治的活動にあります。当時からさまざまな人種や宗教が存在するアメリカでは、少数派の人々(マイノリティ)が多数派である白人やプロテスタントなどによって差別され続けたという歴史があります。

この差別を助長していたのが、人種や民族、ジェンダーに対して差別的な要素を含んだ「呼び名」であるという考えが広まり、政治的・社会的に公正な表見を求めるポリコレの活動が始まりました。

ポリコレの事例

        

ポリコレは社会活動を通じて、社会に少しずつ浸透してきました。その結果として、実際に表現や用語の言い換えが浸透している事例を紹介します。

アフリカ系アメリカ人を表す用語

有名な事例はアメリカの人種・民族を表す用語の置き換えです。
それまでアフリカ系アメリカ人を差別的に表していた「Black」から「Africa American」という表現に訂正されました。

また、今まで「インディアン」と呼ばれていたアメリカ州の先住民は、本来インド人を意味する「Indian」から「カナダでは「First Nation ファーストネーション」、アメリカでは「Native American ネイティブアメリカン」という表現に訂正されました。

女性差別に対する用語

英語で男性を「Mr」と1つの敬称で呼ぶのに対して、女性には「Miss」「Mrs.」と2つの敬称が存在しました。これも現在では女性だけが既婚・未婚の違いによって敬称を変えられるのを性差別だとして「Ms」に統一されています。

日本でも職業などの表現

職業の表現も公平な呼び方に置き換えが進んでいます。
アメリカでは「policeman」は「police officer」に、「Fireman」は「Fire fighter」へと表現の置き換えが進んでいます。

日本でも昔は「スチュワーデス」と言われていた職業も「キャビンアテンダント」や「客室乗務員」と置き換えられています。また、「看護士」「看護婦」という表現も「看護師」と置き換えが進んでいます。他にも「保母さん」「保父さん」も「保育士」という表現が定着してきました。  

また男性を表す「マン」という単語が使われた「カメラマン」や「キーマン」といった用語も「フォトグラファー」「キーパーソン」と表現の置き換えが進んでいます。

職場で意識したいポリコレ

企業では人材管理や職場環境や経営に対して、ポリコレの考え方を取り入れていくことが重要です。これらは事業主の責任とも言えるでしょう。

令和2年6月には、パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)の施行が公布されました。従業員が安心してパフォーマンスを発揮できるより良い社内環境を作るために、職場の人の不快感や不利益を避けるための対策は重要です。

①身体・性別に関連付けた発言は行わない

個人の身体的特徴、また身体の性に関連付けた発言を行わないことです。

個人ではなく身体的特徴や身体の性を軽視したステレオタイプな発言は、職場でのパワハラ(パワー・ハラスメント)にもつながるので、職場内にこういった風潮がないか再確認する必要があります。

②マタハラだけでなくパタハラにも注意

マタハラ(マタニティ・ハラスメント)に関しても女性に対してだけではなく、育児休暇を取る男性社員に対する向き合い方です。職場のセクシュアルハラスメント対策、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策は事業主の義務として厚生労働省から防止対策義務の明記が公布されています。しかし実際の現場では、女性の育休・復帰問題以外にも、男性職員の育休取得に対して配置換えや昇進などで不利益な扱いをするだけでなく、休暇取得に否定的な言動をとる、パタハラ(パタニティ・ハラスメント)があることも事実です。

 ③アウティングは決してしない

アウティングとは、LGBT性的指向や本人の性自認に対して、本人の個性を同意なく周囲に暴露することを指します。
もし本人の同意なく公表した場合は、ポリコレに違反するだけでなく、プライバシーの侵害として違法性すら帯びる可能性もあります。

④SNSの発言に注意

経営者を始め、従業員も同じようにSNSを利用して発信する人には、その内容についてよく注意する必要があります。多くの企業が活用しているTwitterやInstagramなどのSNSツールは非常に拡散性が高く、中小企業にとっても大きな影響力を持てることがメリットです。しかし、些細な発言も炎上してしまう可能性があります。発信をする際は、ポリコレの持つ社会的な観点から見て正しい用語や態度から外れない発言を心がけましょう。

③グローバル対応をする 

少子高齢化が進む日本では、海外とのビジネスや外交人労働者の雇用などのグローバル化を行う必要があります。その際に世界基準になりつつあるポリコレを、企業が理解し職場に浸透させておくことが重要です。実際にトラブルが起きる前に、今のうちから時間をかけてでも性別・人種・民族・宗教など、さまざまな違いを認め合う知識を、企業全体で身につける必要があるのです。

企業として取り組むポリコレ

これからはどの業種の企業にも必要となる、顧客や従業員、サプライヤーなどの全てのステークホルダーに向けたポリコレに対する取り組みについて紹介します。

1.ダイバーシティ経営

多様性を意味する「ダイバーシティ」は、これからの日本企業の経営において重要なキーワードです。人種や性別、少数派(マイノリティ)といった要因に関わらず、誰でもパフォーマンスを最大限に発揮できる機会を提供するものです。深刻な少子高齢化に伴う労働人口の確保に対して、今までの固定概念に囚われない採用が必要になっています。

2.ジェンダー平等

厚生労働省からの雇用・労働雇用において、男女平等な機会と待遇の提供や確保への取り組みが続く中、まだまだ女性の管理職の割合は低いままとどまり、出産後の働きづらさも解消できていないのが現状です。企業では個人の能力を最大限に活かし、高い生産性を上げるための人事配置や組織の仕組みの抜本的な見直しだけではなく、それらを後押しする企業文化の醸造などを求める動きが出てきています。

3.インクルージョン

インクルージョンとは、ビジネスにおいて企業内すべての従業員が仕事に参画する機会を持ち、それぞれの経験や能力、考え方が認められ活かされている状態を指します。

ダイバーシティは多様性を表す言葉なので、「ダイバーシティ&インクルージョン」と合わせて使用されることも多い言葉です。これからの企業経営において、多様な人材がパフォーマンスを最大化し、共に成果を上げて認め合える取り組みとして注目されることが多いのです。

4.多様な働き方への理解

少子高齢化が進む日本では、深刻な労働人口の減少に直面しています。その打開策の一つとして、リモートワークや外国に住む人材との業務提携など、多様な働き方への理解が必要です。そのために企業ではポリコレへの理解を浸透させ、自社に魅力を持ってもらい多様な人材に長く働いてもらえる環境を用意することが重要です。

まとめ

ポリコレは政治上やメディア上での発言を中立な表現にしようとする動きだけではなく、企業の社内外での取り組みにも波及しています。  企業は社会の潮流に目を向けながら、多様な人材が活躍できる組織を目指していく必要があります。人事制度や評価制度などを見直すことで、誰もが働きやすい組織を実現していきましょう。  
 

WRITER

大後 裕子

C-OLING代表

生活用品メーカーで10年間企画職に従事し、企画立ち上げから海外工場との商談、販促まで商品開発のゼロから一貫して行い、多くの商品をブランディングし、リリース。 8年販売され続けるヒット商品を始め、開発商品点数累計約1,200点、約1,700店舗へ導入。ブランディングを主軸とした、経営コンサルティング、 社内教育の3つの事業を通して、多くの人の生活に豊かさを提供ができる企業を社会に増やしたいと考えています。