雇用保険被保険者資格喪失届とは何か? 記入方法や提出方法を解説
2022-11-02
大後 ひろ子
C-OLING代表 ブランディングコンサルタント
労務雇用管理
ここ数十年で日本人の考え方は大きく変わり、自身のキャリアアップにつながる「転職」を前向きに捉える人が増えています。従業員の入社・退社にあたっては、会社はさまざまな書類を作成して遅延なく手続きをする必要があります。数ある書類の中でも、主に従業員の退社時に作成することになるのが「雇用保険被保険者資格喪失届」です。こちらの記事では雇用保険被保険者資格喪失届にまつわる基本的な知識や手続きの流れなどをわかりやすく解説します。書類の作成時になって慌ててしまうことがないよう、ぜひ内容を確認してみてください。
雇用保険被保険者資格喪失届とは?
雇用保険被保険者資格喪失届とは、文字通り雇用保険の被保険者としての資格を失った(喪失)ことを証明する書類です。従業員が勤めていた会社を退職し、雇用保険にまつわる資格を失った際に会社から交付されます。
雇用保険の加入条件を満たしている従業員であれば、会社に所属している限り雇用保険への加入も継続されます。一方で、従業員が会社を退職すると雇用保険についても適用除外となるため、会社は速やかに手続きをしなければなりません。このときに必要になるのが「雇用保険被保険者資格喪失届」です。
提出期限
従業員が退職して雇用保険の適用除外となる場合、会社は雇用保険被保険者資格喪失届を作成して所轄のハローワークに提出する必要があります。提出期限は、従業員の退職日(雇用保険の資格を失う日)の翌日から起算して10日以内です。
従業員の退職に際して、会社がハローワークに提出する書類は雇用保険被保険者資格喪失届だけではありません。会社は従業員が希望しない場合を除いて「離職証明書」を交付する必要があり、この2つの書類をあわせてハローワークに提出するのが一般的です。
作成時期
一般に、雇用保険被保険者資格喪失届の作成は従業員の退職時とされていますが、ほかにも以下のような場面が考えられます。ポイントは、従業員が雇用保険の被保険者ではなくなるということです。
- 従業員の死亡
- 従業員が会社の役員になった
- 従業員の所定労働時間が週20時間未満になった
上記のように、従業員が雇用保険の適用対象から外れた場合には、会社として雇用保険被保険者資格喪失届を作成する必要があります。
雇用保険被保険者資格喪失届の書き方
雇用保険被保険者資格喪失届は、ハローワークのサイト(ハローワークインターネットサービス)からダウンロードできます。また、雇用保険被保険者資格喪失届は手書きで作成するほか、e-Gov(イーガブ)による電子申請が可能になっています。
雇用保険被保険者資格喪失届・離職証明書の2つの書類は、ハローワークが労働者の受給資格などを確認するための資料となりますから、間違いなく記入する必要があります。ここでは覚えておきたいポイントを簡単に説明します。
タイトル部分の修正
「雇用保険被保険者資格喪失届」は「雇用保険被保険者氏名変更届」としても使用できる書式になっています。そのため、「雇用保険被保険者資格喪失届」として提出する場合は、「雇用保険被保険者」に続く「氏名変更届」の文字を二重線で消して使用します。
被保険者番号・性別・生年月日
従業員を雇用した際にハローワークで手続きをすると「雇用保険被保険者証」が発行されます。被保険者番号・性別・生年月日については、雇用保険被保険者証と同じ内容を記入します。
離職生年月日
「離職年月日」の欄には、従業員が最後に仕事をした日(在籍最終日)を記入します。もしも従業員の死亡により被保険者の資格を失った場合は「死亡年月日」を記入します。
被保険者でなくなったことの原因
この欄には従業員が退職する理由を具体的に記入します。退職した従業員が失業給付を受けようとする場合、「離職理由」は受給の可否や給付を受けられる日数に関係してきます。従業員との間に見解の相違がないよう、内容をよく確認したうえで記入します。
雇用保険被保険者資格喪失届で注意したいポイント
雇用保険被保険者資格喪失届は、従業員が退職した翌日から数えて10日以内に事業所を管轄するハローワークに提出します。提出が遅れると退職者がスムーズに失業給付を受けられない可能性があるため、遅延なく手続きを行うようにしましょう。
このほか、雇用保険被保険者資格喪失届を作成するにあたって注意したいことをまとめました。
雇用保険被保険者資格喪失届をダウンロードして作成するとき
雇用保険被保険者資格喪失届の様式は、ハローワークのサイトからダウンロードすることが可能です。ダウンロード後は「様式のみ印刷」「内容を入力して印刷」のどちらかを選んで印刷しますが、このとき以下のポイントに注意してください。
- 印刷するときは拡大率が100%(等倍)になっているかを確認する
- 印刷する用紙は白色・A4サイズを使用する
- 出力した用紙に読み取り用の基準マーク(■が3つ)が印刷されているかを確認する
このほか、用紙に対して斜めに印刷されていたり、文字がかすれて印刷されていたりすると受理してもらえない恐れがあります。プリンターの状態をよく確認しておきましょう。
ハローワークの窓口(直接・郵送)に提出するとき
雇用保険被保険者資格喪失届を提出する場合には、以下の添付書類が必要になります。
- 出勤簿
- 退職辞令発令書類
- 労働者名簿
- 賃金台帳
- 雇用保険被保険者離職証明書(退職者が離職票の交付を希望する場合)
- 離職理由を確認できる書類(退職届など)
窓口で提出
事業所を管轄するハローワークを訪問し、雇用保険の窓口に雇用保険被保険者資格喪失届をはじめとした書類一式を提出します。これらが確認・受理されると「離職票-1/離職票-2」が交付されます。離職票は退職者が失業給付を受ける際に必要な書類ですから、できるだけ早く手元に届くようにします。
郵送で提出
雇用保険被保険者資格喪失届をはじめとした書類一式を所轄のハローワークに郵送します。ただし、書類には「マイナンバー」が記載されていますから、受け取り確認ができるように特定記録郵便や簡易書留などを利用してください。また、「離職票-1/離職票-2」を受け取るための返信用封筒や料金分の切手も忘れずに同封します。
雇用保険被保険者資格喪失届は失業給付に必要な書類。遅延なく手続きを
雇用保険被保険者資格喪失届は、退職者が失業給付を受けようとする際に欠かせない書類です。また、従業員が死亡したり勤務時間数が少なくなったりして「雇用保険の被保険者」の資格を失った際にもハローワークに届け出なければなりません。一連の手続きを行うのは会社の義務ですから、必要書類や全体の流れをよく確認しておきましょう。