パタハラって何? マタハラとの違いや予防策などを詳しく解説

2022-10-24

大後 ひろ子

C-OLING代表 ブランディングコンサルタント

労務その他

少子高齢化が進む日本において「出産」は誰からも歓迎されるべきイベントです。しかし、古き伝統が残る日本社会においては「子育ては女性がするもの」という考えの人も多く、これが男性の育児参加を妨げる要因となっています。こちらの記事では、男性の育児参加を妨げる「パタハラ」について、具体的な事例や予防策を含めて解説します。あなた自身が被害者・加害者にならないよう、ぜひ内容を確認してみてください。

「パタハラ」とは何か?

パタハラは「パタニティハラスメント」を略した言葉です。パタニティ(Paternity)は英語で「父性」を意味し、ハラスメント(Harassment)は「嫌がらせ」を意味する言葉です。つまり、パタニティハラスメントは「父性に対する嫌がらせ」という意味になります。

これまで日本では、子どもを産み育てるのは女性の役割とされてきました。女性が社会進出を果たした後もそうした考えは引き継がれ、育児休暇や時短勤務などを利用するのは女性社員がほとんどでした。しかし最近では男性も積極的に育児参加するようになり、会社の育児支援制度を利用する男性社員が増えてきました

こうした状況の中で新たに登場したのが「パタハラ」です。育児休暇を取得しようとする男性社員の要望を拒否したり、時短勤務やフレックスタイム制で働く男性社員に嫌がらせをしたり…。育児支援制度に対する理解が進まない会社では、こうした「ハラスメント行為」が行われるケースが少なくないようです。

パタハラの実情

男性は外で仕事をして、女性は家庭を守るもの。長きにわたり日本に根付いた古い考えは大きな転換をみせ、今では結婚・出産を経て再び仕事に復帰する女性も少なくありません。こうした背景から女性の役割の一部を男性が担うようになり、会社においても男性・女性を問わず育児支援制度を活用できる体制が整えられつつあります。

しかし、たとえ育児支援制度が整備されていても、十分に機能しなければ意味がありません。会社がさまざまな制度を導入していても、男性の育児参加を快く思わない上司や同僚が不快感・抵抗感を示すケースがあるからです。実際に、あるアンケートによると育児休暇を取得しようとした男性社員の約4人に1人が「何らかのハラスメント行為を受けた」と回答しており、結果的に制度の利用を諦めた人も少なくないようです。

マタハラとの違い

パタニティ(Paternity)が「父性」を指すのに対し、マタニティ(Maternity)は「母性」を意味します。つまり、パタハラとマタハラでは嫌がらせ(ハラスメント行為)を受ける対象者(性別)が異なります。

パタハラとマタハラに共通しているのは、妊娠・出産・育児に関連するハラスメント行為がなされること。男性社員の育児休暇取得や時短勤務を妨げる行為をパタハラ、妊娠・出産・育児を理由に女性社員を排除しようとしたり、精神的に追い詰めたりする行為をマタハラといいます。

パタハラに認定される5つの条件

パタハラの概念が注目されるようになってからまだ数年、マタハラに比べると認知度の低さは否めません。ここでは、パタハラに認定される恐れのあるシーンを確認しておきます。

  1. 男性社員が育児休暇取得を申請。上司(会社)が休暇取得を認めないとき。
  2. 男性社員が育児休暇取得を申請。「業務に支障をきたす」などの理由で上司(会社)が休暇取得を諦めるよう促す。
  3. 男性社員が育児休暇取得を申請。上司(会社)が「男性の育休取得は前例がない」「子育ては女性の仕事」といった趣旨の発言をする。
  4. 男性社員が育児休暇取得を申請(取得)。上司(会社)が解雇をチラつかせたり、退職を迫ったりする。
  5. 男性社員が育児休暇から復帰。上司(会社)が当該社員に仕事を与えない、人事権を不当に行使(異動・降格・減給など)する。

パタハラが起こる3つの要因

日本では、男性が積極的に育児参加するようになって日が浅いため、周囲の理解も十分とはいえません。パタハラが行われる背景には、以下のような理由が考えられます。

1)周囲(上司・同僚)の理解不足

パタハラの加害者となり得るのは、男性社員の上司や同僚であることがほとんどです。多様な働き方を認めない・認めたくない気持ちが大きいために、育児参加を希望する男性社員のことも認められないのです。

2)男女間の育児休暇の取得格差

育児休暇の取得率は、女性と男性で約10倍もの開きがあるといわれます。男性の育児参加に対する理解が進まないことには、育休取得率の格差も1つの要因だと考えられます。社内における男性の育休取得率が増え、男性の育休取得が当たり前の状況になれば、周囲の理解も得られるようになるでしょう。

3)サポート体制の不備

会社のサポート体制が十分でないことも、パタハラが発生する大きな要因といえます。男性社員が育児休暇を取得した場合も滞りなく業務を行える体制づくりを進め、必要な部署に必要なサポートを行うなど臨機応変な対応が求められます。

パタハラを未然に防ぐ3つの予防策

男性社員に対するパタハラを防止することは、会社の義務といえます。パタハラ予防策としては、以下の3つが考えられます。

1)育児休暇制度の周知

育児休暇制度が社内で確立されていない場合は、社内の環境整備からスタートしましょう。育休を取得するための条件・取得できる期間などを就業規則に明記し、育休は男性社員でも取得可能であることを周知します。

2)啓蒙活動の実施

ハラスメント行為を指摘するだけでは、パタハラを未然に防ぐことはできません。まずは全社員に向けて「ハラスメントとは何か」を教育することから始める必要があるでしょう。会社として「男女が協力して育児に取り組むことが望ましい」などのメッセージを発信することも大切です。

2)パタハラ相談窓口の設置

会社でパタハラの被害にあっても、我慢したり泣き寝入りしたりする人が多いようです。こうした状況を改善するには、相談窓口の設置が有効です。悩みを抱える男性社員が気軽に相談でき、客観的なアドバイスをもらえる窓口を設置するとよいでしょう。

育児休暇を取得しやすい環境を整備し、パタハラが起こらないようにしよう!
 

 

ライフスタイルの変化に伴って多様な働き方が求められる今、仕事とプライベートの両立をサポートすることは会社の責務だといえるでしょう。ハラスメント行為は単なる「嫌がらせ」にとどまらず、裁判に発展するケースもあります。パタハラの被害者も加害者も会社にとっては大切な従業員ですから、社内の環境を整備してトラブルを未然に防ぎましょう。
 

WRITER

大場由佳

取材対象者の想いを伝えるWebライター

証券会社勤務を経て、印刷会社にてグラフィックデザインを学ぶ。キャリアップを目指した広告代理店では、企画・デザイン・ライティング・ディレクション業務などを幅広く手がける。出産を機にフリーライターとして活動をスタート。医療・グルメ・女性・スクール系など幅広いジャンルのWebサイトで記事を執筆し店舗取材を多数経験。取材時に寄せられる労務問題に対応する中で知識を深め、読みやすく・分かりやすい文章で発信中。