社会保険の加入条件とは?加入義務の有無や加入手続きなどを解説

2022-09-30

大後 ひろ子

C-OLING代表 ブランディングコンサルタント

労務福利厚生

健康保険や雇用保険などの社会保険は、働く人の「もしも」に備えて、安定した生活をサポートするための制度です。社会保険は労働者のための保険と言えるものの、労働者が自ら加入するわけではなく、労働者を雇用する「会社が申請手続きを行う必要がある」ことをご存じでしたか? こちらの記事では、社会保険への加入条件や会社が手続きを怠った場合の罰則規定などについて、わかりやすく解説します。あなたの会社は適切に対応できているかどうか、チェックしてみてください。

社会保険の「被保険者」とは?

社会保険は、労働者の病気・ケガ・失業など「万が一のリスク」に備える保険制度です。健康保険をはじめとした社会保険の加入条件を満たす事業所(適用事業所)に常時雇用される労働者は、必ず健康保険や厚生年金保険に加入しなければなりません。

以下の労働者は「被保険者」または「社会保険の強制加入対象者」と呼ばれ、社会保険への強制加入義務があります。

つまり、適用事業所に常時勤務する70歳未満の従業員は性別・国籍・報酬額などにかかわらず、強制的に社会保険に加入することになります。報酬が発生している労働者については、試用期間中であっても対象になります。
※70歳以上の従業員は、原則として健康保険にのみ加入します。

社会保険への加入条件

健康保険と労災保険の目的が異なるように、保険に加入するための条件にもそれぞれ違いがあります。

健康保険・厚生年金保険

健康保険は、業務に関りのないところで発生した病気やケガによる通院や入院について、かかった費用の一部を国が負担してくれる制度です。

厚生年金保険は「老齢年金」に代表されるように労働者の老後や離職時のリスクに備える制度です。一定の金額を毎月給与から差し引いて積み立てます。

保険の名称や目的は違いますが、健康保険も厚生年金保険も加入条件は同じです。

加入条件【強制】

以下の条件を満たす事業所は「強制適用事業所」となるため、必ず健康保険に加入しなければなりません。

  1. 業種としては製造業・土木建築業・電気ガス製造業・土木建築業・電気ガス事業・運送業・清掃業・物品販売業・金融保険業・医療保健業・通信報道業など、従業員は常に5人以上。
  2. 国・地方公共団体・法人であり、常に従業員を使用している。
加入条件【任意】

強制適用事業所に該当しない事業所は、任意適用事業所となります。従業員が5人未満の場合に加え、農林水産業や一部サービス業などがこれに含まれます。

健康保険に任意で加入するには、加入条件を満たす従業員の過半数以上の同意を得る必要があります。

雇用保険

雇用保険は失業中や育児(介護)休業中の生活保障で、保険料は会社と労働者双方が負担します。雇用保険と労災保険とを合わせて「労働保険」と呼ばれます。

加入条件【強制】

従業員がたった1人であっても、次の条件を満たしていれば会社として雇用保険に加入しなければなりません。

  1. 従業員の所定労働時間が20時間/週を超えている
  2. 31日以上継続して働く予定である
  3. 対象となる従業員は学生ではない
加入条件【任意】

個人経営の事業所であり、以下の条件を満たす場合は任意加入となるケースもあります。

  1. 個人で「漁業」を営み、常駐する従業員は5人未満
  2. 個人で「漁業」を営み、常駐する従業員は5人未満
  3. 個人で「林業」を営み、従業員は年間合計300人未満

ただし、全従業員の過半数が加入を希望する場合、会社として加入申請を行う必要があります。

労災保険

労災保険は仕事中・通勤中など業務上の病気・ケガ・障害・死亡を保障する制度です。保険料は会社が全額負担し、労災事故が発生した際は会社に代わって国が治療費などを支払います。

加入条件【強制】

労災保険の加入条件はたった1つ、常駐する従業員が1人でも存在する場合です。法人・個人事業者にかかわらず、従業員を1人でも雇ったならば労災保険に加入する義務があります。

この場合の「従業員」は正規雇用・非正規雇用・パート・アルバイトなどの雇用形態は関係ありません。また、労災保険については「任意加入」という概念はありません。

加入条件【特別】

労災保険は、もしもの時に労働者を救済することが大きな目的です。そのため「労働者」と定義されない場合でも、以下の「特別加入条件」を満たせば保険が適応となるケースがあります。

社会保険に加入しなかったときの罰則規定

社会保険に加入する義務があるにもかかわらず手続きを怠った場合、事業主は罰を受けることになります。

健康保険・厚生年金保険

健康保険と厚生年金保険の罰則規定は同じです。加入手続きを怠ると、以下のような罰則が定められています。

雇用保険

雇用保険の加入手続きを怠ると、以下のような罰則が定められています。

労災保険

労災保険の加入手続きを怠ると、以下のような罰則が定められています。

加入手続きを怠れば罰を受ける恐れも。加入条件をきちんと確認しておこう!
 

社会保険にはそれぞれ加入条件があります。事業所の規模や業種によっては「任意」での加入が認められていますが、加入が義務となっている事業所が手続きを怠ると罰金などを科せられる恐れがありますから注意が必要です。労働者を守る社会保険は、会社を守るための保険でもあります。法改正によって加入条件が変更になるケースもありますから、最新の情報を確認するようにしましょう。

WRITER

大場由佳

取材対象者の想いを伝えるWebライター

証券会社勤務を経て、印刷会社にてグラフィックデザインを学ぶ。キャリアップを目指した広告代理店では、企画・デザイン・ライティング・ディレクション業務などを幅広く手がける。出産を機にフリーライターとして活動をスタート。医療・グルメ・女性・スクール系など幅広いジャンルのWebサイトで記事を執筆し店舗取材を多数経験。取材時に寄せられる労務問題に対応する中で知識を深め、読みやすく・分かりやすい文章で発信中。