65歳以上の失業保険「高年齢求職者給付金」をわかりやすく解説
2022-09-28
大後 ひろ子
C-OLING代表 ブランディングコンサルタント
労務福利厚生
勤めていた会社を退職して次の会社を探そうとするとき、労働者の助けとなるのが「失業手当」です。しかし、労働者が年齢を重ねて65歳を超えると「失業手当」という名称が変わることをご存じでしょうか?こちらの記事では、65歳以上の労働者に向けた失業手当について、受給の条件や受給までの流れをわかりやすく解説します。一般的な失業手当との違いを確認し、シニア世代の採用シーンに役立ててください。
65歳以上の労働者に向けた失業手当「高年齢求職者給付金」とは?
一般に広く知られる「失業手当」は、雇用保険に加入している「被保険者」を対象にしています。しかし、この被保険者が満65歳になると、「高年齢被保険者」として扱われるようになります。
雇用保険における被保険者が65歳になり、高年齢被保険者となると、離職時に支払われる給付金の名前も変わります。それまでの「失業手当」に代わって、「高年齢求職者給付金」として給付されるようになるのです。
とはいえ、それぞれの制度の目的は大きく変わることはありません。失業手当も高年齢求職者給付金も
- 失業者の1日も早い再就職をサポートする
- 求職期間中も安定した生活を送れるようにする
ことを目的としており、正社員はもちろん一定の条件を満たせばパートやアルバイトに対しても給付が行われます。
高年齢求職者給付金・3つの受給条件
高年齢求職者給付金を受給するには、雇用保険への加入期間などさまざまな条件があります。また、分割して支給される失業手当とは異なり、一括で支給されるのが特徴です。
受給条件・1 雇用保険の被保険者が満65歳を迎えた
高年齢求職者給付金の支給は、その労働者が雇用保険に加入していることを前提に行われます。正社員はもちろん対象になりますが、「所定労働時間:20時間以上/週」「雇用期間:31日以上」の条件を満たせば、パートやアルバイトであっても雇用保険への加入義務があります。
受給条件・2 雇用保険に一定期間加入している
高年齢求職者給付金を受け取るためには、雇用保険に離職日前の1年間に通算6ヶ月以上加入している必要があります。いわゆる「合算」が認められているため、たとえ断続的であっても合計で6ヶ月になれば大丈夫です。
受給条件・3 求職活動はしているが失業状態である
高年齢求職者給付金の目的は、失業者の1日も早い再就職をサポートすることです。生活の心配をせずに職探しができるように支給されるものですから、就職したいという積極的な姿勢が求められます。再就職する意思がない・すぐに働けないといった事情のある人は受給できません。
高年齢求職者給付金と失業手当(基本手当)の違い
失業手当が分割払いで支給されるのに対し、高年齢求職者給付金は一括払いとなっています。両者の違いを確認していきましょう。
受給年齢
高年齢求職者給付金は、雇用保険に加入している被保険者が65歳になると受け取れます。一方の失業手当は、65歳未満の被保険者に向けて支給されます。
加入期間
高年齢求職者給付金は、雇用保険に離職日前の1年間に通算6ヶ月以上加入していた高年齢被保険者が受け取れます。失業手当の条件は、下記のとおりです。
- 会社都合退職:退職前の1年間に6ヶ月以上
- 自己都合退職:退職前の2年間に12ヶ月以上
受給金
高年齢求職者給付金の支給額は、その労働者がどれくらいの期間、雇用保険に加入していたかによって異なります。失業手当が基本手当日額の90~330日分を受け取れるのに対して、高年齢求職者給付金は、基本手当日額の30~50日分です。
どちらの制度も手当を受給できるのは退職日翌日から1年間であるため、手続きがスムーズにいかないと満額を受け取れなくなる恐れがあります。
高年齢求職者給付金の受給フロー
高年齢求職者給付金を受給できるのは、退職した翌日から1年間です。受給できる金額をもれなく受け取れるよう、手続きの流れを確認しておきましょう。
1)離職票の受け取り
受給の手続きに必ず必要になるのが「離職票」です。離職票は、自分が勤めていた会社から発行されるもので、通常は退職日から2週間程度で手元に届きます。内容を確認したら、署名・押印をします。
2)ハローワークで申請
離職票が届いたら、ハローワークに出向いて求職の申し込みをします。このとき、以下の書類などが必要となります。
- 離職票(雇用保険被保険者離職票)
- 個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カード など)
- 身元確認書類(マイナンバーカード、運転免許証 など)
- 写真(タテ30mm・ヨコ25mm/上半身を正面から撮影したもの)
- 印鑑
- 通帳またはキャッシュカード(本人名義のもの)
3)待期期間
ハローワークで申請を行った後の7日間は給付金を受け取ることができません。この期間を「待期期間」と言います。
4)求職者説明会への参加
失業認定申請書などを受け取るため、ハローワークから指定された日時に説明会に参加します。
5)失業認定
7日間の待期期間(自己都合退職の場合は給付制限期間)を終えたら、ハローワークで失業認定を受けます。
6)給付金の受け取り
(5)によって失業状態だと認められると、一括で高年齢求職者給付金を受け取れます。失業認定日からおおむね5日程度で指定の銀行口座に振り込まれます。
高年齢求職者給付金の計算方法
高年齢求職者給付金として受給できる金額は、雇用保険の被保険者であった期間によって異なります。
- 雇用保険への加入期間:1年未満=基本手当日額×30日分
- 雇用保険への加入期間:1年以上=基本手当日額×50日分
次に、基本手当日額の計算方法を確認しておきましょう。
賃金日額・基本手当日額
基本手当日額を導き出すには、1日の賃金(賃金日額)の計算から始めます。
賃金日額=(退職前6ヶ月間の給与の合計)÷180日
上記の「給与」には、残業代や通勤手当などを含めた総支給額を当てはめます。
こうして算出した賃金日額に所定の給付率(50~80%)をかけたものが基本手当日額となります。
65歳が分岐点。高年齢求職者給付金と失業手当の違いを覚えておこう!
高年齢求職者給付金は正社員のみならず、パートやアルバイトなどで働く労働者でも一定の条件を満たせば受給できます。人生100年といわれる時代、少子高齢化が進む日本においてシニア世代の労働力は貴重な戦力となるでしょう。制度の仕組みをきちんと理解して、適切な対応ができるようにしてください。