副業禁止とは? 法律的な解釈やルール違反にならない事例を解説
2022-12-05
大後 ひろ子
C-OLING代表 ブランディングコンサルタント
労務リスクマネジメント
終身雇用制度が終わりを告げ、国を挙げて働き方改革を推進しているにもかかわらず、古くからの伝統が根強く残っている会社も多いようです。その1つに「副業の禁止」がありますが、あなたの会社では副業が認められているでしょうか? こちらの記事では、会社が副業を禁止する理由や正当性、懲戒処分の対象となるケースなどをわかりやすく解説します。会社として注意すべきポイントにも触れていますので、ぜひ参考になさってください。
そもそも、副業禁止とは?
副業とは、勤務している会社とは別の仕事をして収入を得ることを指します。一方で、会社が従業員の副業を禁止することを副業禁止といいます。
2019年より順次施行が始まった働き方改革関連法案によって、労働者には多様な働き方が認められるようになりました。最近は会社から毎月受け取る給与などのほかに、在宅ビジネスや内職などで収入を得る人も少なくないようです。
しかし、会社の就業規則に「副業禁止」に関する記載があるにもかかわらず副業をしてしまった場合、懲戒処分の対象となる恐れがありますので注意が必要です。
副業禁止にまつわる法律
日本国憲法第三章 国民の権利及び義務(第22条)では以下のように「職業選択の自由」を保障しています。
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
つまり、勤務時間以外のプライベートタイムに何をするかは個人(従業員)の自由といえます。このことからも、もしも副業禁止違反をして会社から懲戒処分を受けた場合でも、法律で処罰されるケースはほとんどありません。
会社と雇用契約を結んでいる従業員は、勤務時間中は業務に専念する義務を負います。しかし、それ以外の時間をどのように過ごすかは従業員の自由であり、法律で副業が禁止されているわけではありません。
就業規則に「副業禁止」がある理由
多様な働き方が求められる時代になってもなお、従業員の副業を認めない会社は少なくありません。ある調査によると、副業や兼業を推進(または容認)している会社は全体の3割ほど。約7割の会社が従業員の副業に積極的ではないという結果が出ています。
会社が副業を禁止する背景には何があるのでしょうか? その理由としては以下のようなことが考えられます。
- 従業員の長時間労働・過重労働を防ぐ
- 勤務時間中に副業を行われるリスクを回避
- 業務上知り得た情報・ノウハウの流出を防ぐ
- 本業との利益相反を回避
- 人材の流出・人手不足を防ぐ
会社が従業員の副業を禁止する理由としてもっとも多いのが。(1)従業員の長時間労働・過重労働を防ぐ、です。本業のほかに副業をすれば、1日の労働が長時間に及びます。過重労働によって従業員が体調を崩す恐れがあるため、従業員の健康を守る意味から副業禁止としているケースが多いようです。
副業禁止のルール違反が発覚したら?
副業は、本業(勤務している会社)から得られる報酬とは別に収入を得ることです。一般に「副業」は本業とは別の仕事をすることを想定していますが、株式投資や不動産投資による売買益も「収入」とみなされます。とはいえ、投資で収入を得たからといって懲戒処分の対象にはならないでしょう。副業禁止違反で懲戒処分の対象となるのは、以下のようなケースが考えられます。
1)同業他社での副業
同じ製品やサービスを扱う会社において副業を行うこと、勤務先の会社との競合が予想される会社を設立することは主たる会社の利益を侵害することになり、懲戒処分の対象となります。
2)会社に不利益をもたらす
従業員が副業をすることにより、会社の情報が外部に漏れてしまう恐れがあります。顧客・技術・組織にまつわる情報やノウハウが社外に流出することで会社が損害を受ければ、懲戒処分の対象となります。
3)本業に支障をきたす
本業の勤務時間中に副業をする/体調不良で業務に集中できない/遅刻や欠勤が目立つなど、副業が原因で本来の業務に影響を及ぼす場合には懲戒処分の対象となります。
副業禁止をルール化する際の注意点
従業員の副業による不測の事態に備えるには、就業規則などで副業に関するルールを定めておくことが大事です。副業を行ううえで守るべきルール、ルールを破ったときに課されるペナルティなどについても明記し、社内に広く周知します。
1)副業とみなされる範囲を決める
従業員の副業を禁止することについて、法律に何らかの規定があるわけではありません。また、一口に「副業」と言ってもさまざまな解釈ができてしまうことから、会社として認められるもの・認められないものを明確にしておく必要があります。
2)就業規則への記載
会社が従業員の副業を禁止する場合は、就業規則にその内容を明記して広く周知する必要があります。ただ単に「副業禁止」とするのではなく、副業を認めない理由を明確にすることも大事です。
3)懲戒解雇の検討
上記(1)(2)を踏まえて「副業禁止」としているにもかかわらず、従業員の副業が発覚した場合には、会社として毅然とした対応を取る必要があります。ほかの従業員が不公平感を抱かないよう、懲戒解雇も含めた慎重な対応が求められます。
多様な働き方が求められる時代だからこそ、従業員のための制度づくりを!
働き方改革の一環として、厚生労働省は2018年1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成しました。このガイドラインの大きなポイントは「モデル就業規則」の中から副業禁止に関する記載が削除され、原則として副業を認める記載がされたことです。日本国憲法では個人(従業員)の副業を制限していませんが、会社が副業禁止の規定を設けることも制限されていません。従業員にどのようなルールを課すかは会社の自由ですが、プライベートな時間をどのように過ごすかは個人(従業員)の自由です。本業に支障のないことを大前提に、従業員の多様な働き方を認めてあげてはいかがでしょうか。