有給休暇の日数を確認するには? 付与日数や付与条件について解説
2022-10-20
大後 ひろ子
C-OLING代表 ブランディングコンサルタント
労務その他
朝起きて体調が悪いとき、子どもが通う学校の行事に参加しなければならないとき…。理由や目的にかかわらず会社を休むことができる、従業員にとってうれしい休暇制度が「有休」です。有休は「正社員」といわれる労働者はもちろん、一定の条件を満たすパートやアルバイトにも付与されることをご存知ですか? こちらの記事では「有休」にまつわる基本的な知識、付与日数の計算方法などをご紹介します。日数計算をする際に注意すべきポイントも解説していますので、ぜひ参考になさってください。
そもそも、有給休暇とは?
一般に「有休」と呼ばれる休暇制度の正式名称は「年次有給休暇」といいます(以下、有給休暇)。有給休暇は文字どおり給与が保障された状態で休暇を取得できる制度です。業種・業態・正社員・パート・アルバイトなどの区別なく、一定の条件を満たすすべての労働者が対象となります。
有給休暇は従業員のリフレッシュやプライベートの充実を目的としており、休暇取得時に会社側の承認は必要ありません。有給休暇は労働基準法第39条に定められた労働者の権利であり、休暇を取得する目的にも制限はありません。
2019年4月より「働き方改革関連法」が順次施行されています。これにより、年間10日以上の有給休暇が付与される従業員については、会社として最低でも年5日の有給休暇を取得させる義務があります。
有給休暇の付与条件
有給休暇はすべての労働者に認められている権利です。以下のような条件を満たす従業員に対しては(初年度)10日間の有給休暇を付与します。
有給休暇が付与される条件
以下の2つの条件を満たす労働者について、会社は有給休暇を付与しなければなりません。
- 同じ会社に6ヶ月以上継続して勤務している
- 全労働日の8割以上の勤務実績がある
正規雇用労働者(正社員)はもちろん、以下のどちらかを満たす場合には有期雇用労働者(パート・アルバイト・派遣社員など)も有給休暇付与の対象となります。
- 所定労働時間が週30時間以上
- 所定労働日数が週5日(フルタイム契約)
有給休暇の付与日数を確認する方法
労働基準法では、会社が従業員を雇い入れて半年を経過した時点で(8割以上の勤務実績があれば)10日以上の有給休暇を付与するよう定めています。また、その後は1年経過するごとに日数を加算して付与することも決められています。
1)有給休暇の増え方・上限は?
入社から半年経過した時点で10日間の有給休暇を付与した後は、翌年(2回目/11日間)、翌々年(3回目/12日間)と有給休暇の日数が1日ずつ増えていきます。その後、4回目の付与からは有給休暇が2日ずつ増えるため、入社4年目(4回目/14日間)、入社5年目(5回目/16日間)となります。
とはいえ、有給休暇の日数は無限に増えていくわけではありません。有給休暇の付与日数は1年間20日が上限となっているため、上記の計算では入社7年目から付与日数は変わらず、毎年20日間の有給休暇が付与されることになります。
ただし、これは労働基準法に定められた最低限の基準であり、この基準さえクリアしていればさらに多くの有給休暇を付与することも可能です。自社の魅力をアピールするために入社1年目から15日、20日といった有給休暇を付与しても問題ありません。
2)有給休暇の計算方法【一般の従業員】
ここでは、以下の条件を満たす正社員や派遣社員を「一般の従業員」として考えます。
- 1週間の所定労働時間が30時間以上
- 所定労働日数/週5日以上 または 1年間の所定労働日数/217日以上
この場合の有給休暇は入社日(会社に雇い入れた日)に基づいた継続勤務年数で計算し、(1)で解説した方法により毎年の付与日数を決定します。
3)有給休暇の計算方法【有期雇用労働者】
パート・アルバイト・派遣社員などの「有期雇用労働者」は、
- 所定労働時間が週30時間以上
- 所定労働日数が週5日(フルタイム契約)
のどちらかを満たした場合に有給休暇付与の対象となります。また、週の所定労働時間が30時間未満の場合でも1週間の所定労働日数に応じた有給休暇が付与されます。
- 所定労働日数/週5日……「一般の従業員」と同等の有給休暇が付与されます
- 所定労働日数/週4日……雇い入れ日から半年後に7日間の有給休暇が付与されます
- 所定労働日数/週3日……雇い入れ日から半年後に5日間の有給休暇が付与されます
- 所定労働日数/週2日……基準日を迎えた時点で3日間の有給休暇が付与されます
- 所定労働日数/週2日……雇い入れ日から半年後に1日間の有給休暇が付与されます
有給休暇の日数計算・3つのポイント
有給休暇は労働基準法に定められた労働者のための休暇制度であり、何らかの事情で休暇を消化しきれなかった場合には翌年に繰り越すことが可能です。そのほか有給休暇の日数計算で押さえるべきポイントを確認してみましょう。
有効期限
労働基準法第115条では、有給休暇の有効期限を2年と定めています。これにより、従業員に付与した有給休暇に未消化分があれば翌年に繰り越すことができます。付与日数を計算する際は1年に限り未消化分の日数を加算できますが、有給休暇の最大日数は40日間ですから注意しましょう。
育児・介護休業(出勤率)
育児・介護休業法に基づき、従業員が育児や介護を目的に休業していた期間は出勤したものとして扱います。このため、8割以上の勤務実績がない場合でも休業期間は勤続期間に含まれます。
基準日の統一
有給休暇が付与されるのは原則として入社日(会社に雇い入れた日)から半年後で、この日が有給休暇付与の「基準日」となります。しかし、従業員ごとに基準日を設定していては管理が煩雑になるため、全従業員の基準日を統一して一括管理する会社も少なくありません。入社日以降に基準日を変更する場合は、短縮されたすべての日数を出勤したものと考え、次に付与予定だった有給休暇を前倒しして付与します。
有給休暇の日数を正しく計算するとともに、休みやすい環境をつくろう!
有給休暇は労働者のための休暇制度であり、その内容については労働基準法において定められています。しかし、これまでは有給休暇の取得率が低調であったため、労働基準法の改正を機に最低限の有給休暇取得(年5日)が義務付けられることになりました。従業員に対して有給休暇の取得を促すこと、さらに休暇を取得しやすい環境を整えることは会社の責務といえるでしょう。