裁量労働制とは? 対象となる業務やメリット・デメリットを解説

2022-09-30

大後 ひろ子

C-OLING代表 ブランディングコンサルタント

労務勤務管理

最近はさまざまな場面でグローバル化・多様性が求められ、政府においても多様な働き方を推奨しています。あなたの会社でも業務の内容に合った柔軟な働き方を模索しているのではないでしょうか? こちらの記事では、従業員が自らの働き方を決められる「裁量労働制」について解説します。制度の仕組みや導入時の注意点、会社や従業員にもたらすメリットなどをお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。

裁量労働制はどんな働き方?

「裁量労働制」とは、1日にどれくらいの時間働くか(労働時間)を従業員の裁量に任せる労働契約です。「みなし労働時間制」の一種で、実際の労働時間にかかわらず契約した労働時間分だけ働いたとみなすのが特徴です。

たとえば、労働契約によって1日のみなし労働時間を7時間と取り決めた場合、1日の労働時間が3時間でも5時間でも7時間働いたとみなされ、その分の給与が支払われます。

反対に、裁量労働制では基本的に「時間外労働」の概念がありません。そのため、裁量労働制を適用できる職種に制限があったり、あらかじめ労働時間に関して取り決めをしておく必要があったりします。

裁量労働制には2種類ある

裁量労働制には、「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」の2種類ありま
す。導入の対象となる業務については、以下のような条件があります。

専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制は、高い専門性が求められる業務に携わる労働者に向けた制度です。会社としてスケジュール管理を行ったり、作業方法を指示したりするのが難しい業務(デザイナー・公認会計士など全19業務)について導入できます。

企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制は、企画・立案・調査・分析などの業務に携わる労働者に向けた制度です。会社としてスケジュール管理を行ったり、作業方法を指示したりする必要がない業務について導入できます。

裁量労働制の仕組み・導入方法

裁量労働制では、1日の労働時間を従業員の裁量で決めることができます。労働時間や残業時間の概念はどのようになっているか、導入時の注意点などを確認していきましょう。

労働時間

労働時間をどのように取り扱うか、従業員が自由に決められるのが裁量労働制です。出勤時間・退勤時間・始業時間・終業時間・終業時間のすべてを従業員が自らの裁量で決定し、管理します。フレックスタイム制度の「コアタイム」のような時間的な縛りはありません。

時間外労働(残業)

裁量労働制では実際に働いた時間にかかわらず、あらかじめ決めておいた労働時間分だけ働いたとみなします。裁量労働制には時間外労働の概念がないため、基本的に時間外労働に対する割増賃金は発生しません。

導入時の注意点

裁量労働制を導入するには、ベースとなる「みなし労働時間」を決めなければなりません。また、会社と従業員の間で労働条件を取りまとめ「労使協定」を締結します。

みなし労働時間

実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ決めておいた労働時間分働いたとみなすのが「みなし労働時間」です。みなし労働時間は従業員にとって重要な決定事項であり、労使間の合意が絶対条件です。

労使協定(36協定)

裁量労働制を導入する際は、会社と従業員で十分に話し合い、労働条件などを決定して「労使協定」を締結します。とくに注意が必要なのは「時間外および休日の労働」について定めた労働基準法第36条(36協定)です。

36協定では、1日8時間・1週間40時間(法定時間)を超えて労働させる場合/法定休日に労働させる場合について、労働組合(または労働者の代表)と協定を結ぶよう定めています。そのため、1日のみなし労働時間が累積して1週間40時間以上の法定時間を超える場合には、36協定の締結が必要になります。

裁量労働制のメリット

裁量労働制は会社側からの指示を待つのではなく、従業員が自発的・計画的におこなう業務に適用されます。

企業のメリット

人件費を管理しやすい

裁量労働制では、従業員の労働時間をみなし労働時間で計算します。基本的に残業代などが発生しないため、事前におおよその人件費を把握することができます。

労務管理の負担軽減

従業員一人ひとりの時間外労働に対し、残業代を算出するのは実に大変な作業です。裁量労働制を導入して「みなし労働時間=固定給」として処理できれば、労務管理にまつわる負担は大幅に軽減されるでしょう。

従業員のメリット

勤務時間の短縮

裁量労働制では、従業員が自らの裁量で労働時間を決定できます。たとえ短時間の労働であっても結果を出せばいいわけですから、能力や頑張りしだいで会社に拘束される時間を短縮できます。

ライフスタイルに合わせて働ける

裁量労働制では、いつ・何をするかといった業務の進行管理も従業員に任されています。上司の指示を受けるのではなく、自分のペースで仕事ができるようになります。

裁量労働制のデメリット

いいことばかりのように思える裁量労働制にもデメリットはあります。気を付けるべきポイントを押さえておきましょう。

企業のデメリット

企業側のデメリットを挙げるなら、導入までにさまざまな手続きが必要になるという点でしょう。裁量労働制を導入する際には、労使委員会の設置や運営ルール決定などの手続きが必要です。対象となる業務やみなし労働時間など、労使委員会で決まった内容は所定の様式に記載し、事業所を管轄する労働基準監督署に提出しなければなりません。

従業員のデメリット

裁量労働制では会社に拘束される時間を短くできるなど、さまざまなメリットがあります。しかし一方で、裁量労働制で働く労働者は、一般の労働者に比べて月の労働時間が長い傾向にあるとの報告もあります。1日の労働時間が長時間に及ぶと心と体に影響を与える恐れがあります。最近では、長時間労働や過労死が社会問題化していますから、適切な労働時間の管理が重要になります。

裁量労働制を正しく理解し、上手に活用しよう!

 

裁量労働制は適切に運用できれば従業員の満足度が高まり、会社にとってもメリットの大きい制度です。しかし、会社としてきちんとした管理ができないと、長時間労働や過労死などにつながりかねません。制度の仕組みをしっかりと把握して、労使双方が満足できる働き方を見つけてください。
 

WRITER

大場由佳

取材対象者の想いを伝えるWebライター

証券会社勤務を経て、印刷会社にてグラフィックデザインを学ぶ。キャリアップを目指した広告代理店では、企画・デザイン・ライティング・ディレクション業務などを幅広く手がける。出産を機にフリーライターとして活動をスタート。医療・グルメ・女性・スクール系など幅広いジャンルのWebサイトで記事を執筆し店舗取材を多数経験。取材時に寄せられる労務問題に対応する中で知識を深め、読みやすく・分かりやすい文章で発信中。