源泉徴収票はいつもらえる? いつ必要? 書類の確認方法もくわしく

2022-10-18

大後 ひろ子

C-OLING代表 ブランディングコンサルタント

労務雇用管理

毎年会社から源泉徴収票を受け取るたび「もう年末だなぁ」と感じる人も多いのではないでしょうか? 多くの会社で12月の給与明細と一緒に交付される源泉徴収票ですが、その中身については「よくわからない」という人も少なくないようです。こちらの記事では源泉徴収票の基礎知識やチェックするべきポイントなどについてわかりやすく解説します。源泉徴収票はさまざまなライフステージで必要となる書類ですから、記載されている内容などをしっかり確認するようにしましょう。

そもそも、源泉徴収票とは?

源泉徴収票は、会社に雇用されている労働者が1年間に得た給与・賞与額や国に支払った税金の額などを記載した書類です。源泉徴収票には大きく分けて「給与所得の源泉徴収票」と「退職所得の源泉徴収票」の2種類があります。給与所得の源泉徴収票は会社が給与を支払ったすべての従業員に対して作成・交付する必要があります。

労働者は会社から給与を受け取る際にさまざま税金を支払っていますが、源泉徴収票にはその明細も記載されています。たとえば、所得税は会社から支払われた給与・賞与の総額に課されるものではありません。1年間に受け取った給与や賞与から一定の控除額を差し引いた課税所得に対して課税されています。

源泉徴収票はいつもらえる?

従業員が源泉徴収票を受け取るタイミングは大きく2つ、年末調整を行う12月と会社を退職するときです。

年末調整

正社員の場合は毎年12月、給与明細と一緒に源泉徴収票を受け取るのが一般的です。

「源泉徴収」とは、会社が従業員に支払う毎月の給与から(予想される)税金を差し引いて国に納める制度です。本来、従業員が支払うべき税金の額は1年間の収入金額が確定した後に算出されるものであり、毎月の給与明細に記載されている所得税額はおおよその金額ということになります。

つまり、1年間の収入が確定した12月に行われる「年末調整」において正確な所得税の金額が算出され、もしも過不足があれば清算される仕組みになっています。源泉徴収票に記載される内容は年末調整の結果を反映したものであるため、交付時期が12月になるのです。

退職

従業員が退職する際は、その年の1月1日から退職日までの給与に対する源泉徴収票が交付されます。原則として、会社は従業員が退職した日から1ヶ月以内に源泉徴収票を発行しなければなりません。

退職する従業員に対して退職金などが支給される場合は「給与所得の源泉徴収票」に加えて「退職所得の源泉徴収票」も発行されます。退職所得の源泉徴収票は、退職金に対する所得税額などが記載された書類です。

源泉徴収票が必要になるのはいつ?

1年間の給与や税額などが記載された源泉徴収票は、さまざまな手続きを行う際に必要になります。

1)転職

労働者が会社を辞めて新しい会社に就職する際は、転職先の会社に源泉徴収票を提出します。源泉徴収票には前の会社から受け取った給与・賞与・退職金などのほか、所得税の金額などが記載されています。転職時に源泉徴収票を提出すれば、その年の年末調整を転職先の会社にお任せできます。

2)確定申告(医療費控除)

1年間に支払った医療費の合計金額が10万円を超えるときは、確定申告をすることによって控除を受けられます。医療費控除を受けようとする場合、従業員は自ら確定申告を行わなければなりません。このときに源泉徴収票が必要になります。

3)住宅ローン審査

住宅購入時に「住宅ローン」の申し込みをすると、金融機関から源泉徴収票の提出を求められます。源泉徴収票は、その人がどのくらいの収入を得ているかを証明する書類です。そのため、各金融機関は源泉徴収票を確認して、住宅ローンの返済能力を判断するのです。

住宅ローンは(2)の医療費と同じく、確定申告書を提出することにより控除が受けられます。住宅ローンを組んで支払いがスタートしたら、必ず確定申告を行うようにしましょう。

4)失業給付

勤めていた会社を退職し、ハローワークで失業給付の手続きをするときにも源泉徴収票が必要です。スムーズに手続きを行い、給付金を遅延なく受け取るためにも、会社を辞める際には源泉徴収票を確実に受け取るようにしてください。

源泉徴収票で確認するべき4つのポイント~源泉徴収票の見方~

源泉徴収票の中には、見慣れない用語が多く使われています。一見難解な印象を受けますが、確認すべき4つのポイントを押さえておけば安心です。

1)支払金額

源泉徴収票の「支払金額」の欄には、1年間の「年収」を記載するのが一般的です。年収とは基本給のほかに残業代や賞与、各種手当などを含め会社から受け取る金額の総額です。ただし、通勤交通費や出張時の旅費交通費などの手当は含まれません。

2)給与所得控除後の金額

「給与所得控除後の金額」とは(1)の支給金額から「給与所得控除額」を差し引いた金額を指します。会社に雇用されるいわゆる「サラリーマン」については、自営業者などが必要経費として差し引く金額と同様に、一定の控除額が認められています。

「給与所得控除」の金額は国税庁が決定します。会社員に「経費」という概念はありませんが、仕事をするうえで必要なスーツやネクタイなどを必要経費と解釈し、年収から一定の金額が差し引かれます。

3)所得控除の合計額

「所得控除の額の合計額」には社会保険料・生命保険料・基礎控除・扶養控除など、個々の事情に応じて所得から控除される金額の合計を記載します。

4)源泉徴収税額

「源泉徴収税額」には、1年間に国に納めた所得税の金額を記載します。源泉徴収税額は[給与所得控除後の金額(2)-所得控除の額の合計額(3)]×所得税率 の計算式で算出できます。

源泉徴収票は1年間の所得を証明する書類。大切に保管しよう!

源泉徴収票は、1年間の収入金額や所得税額などが記載された重要な書類です。正社員であれば年に一度のペースで受け取る書類であり、会社としては年末調整や従業員の退職にあわせて交付しなければならない書類です。源泉徴収票はさまざまな場面で必要になりますから、従業員に対して書類の重要性を周知して大切に取り扱うように伝えましょう。
 

WRITER

大場由佳

取材対象者の想いを伝えるWebライター

証券会社勤務を経て、印刷会社にてグラフィックデザインを学ぶ。キャリアップを目指した広告代理店では、企画・デザイン・ライティング・ディレクション業務などを幅広く手がける。出産を機にフリーライターとして活動をスタート。医療・グルメ・女性・スクール系など幅広いジャンルのWebサイトで記事を執筆し店舗取材を多数経験。取材時に寄せられる労務問題に対応する中で知識を深め、読みやすく・分かりやすい文章で発信中。