特定受給資格者とは何か? 特定理由離職者との違いなどを解説

2022-11-16

大後 ひろ子

C-OLING代表 ブランディングコンサルタント

労務雇用管理

昨今の社会情勢の変化により、勤めていた会社が突然倒産してしまったり、いきなり解雇通告を受けたりする人も少なくないようです。本人の意思とは関係なく会社を辞めなければならなくなった……そんなときに労働者を守ってくれる仕組みがあることをご存知でしょうか? こちらの記事では特定受給資格者(会社の倒産・解雇によって職を失った人)に関する基礎知識や特定理由離職者との違いなどをわかりやすく解説します。特定受給資格者の該当者には失業手当における優遇措置がありますので、ぜひ内容を確認してみてください。

そもそも、特定受給資格者とは?

ひと昔前とは異なり、最近はキャリアアップのために転職を繰り返す人が珍しくありません。退職を計画的に進める人もいれば、失業手当を頼りに求職活動をする人もいます。一方で、勤めていた会社が倒産してしまったり、解雇通告を受けたりなど、本人の意思に関係なく離職しなければならない人もいるでしょう。

自己都合以外のやむを得ない事情で退職する労働者は、再就職に向けた準備が十分でないケースが多いため、より充実したサポートが必要と考えられます。そのため、こうした離職者を「特定受給資格者」「特定理由離職者」として区別し、保護する仕組みが作られました。

ここでは、どのような労働者が失業手当の対象となるのか、あらためて確認しておきましょう。

失業保険(失業手当)の対象となる人は?

失業手当を受給できるのは、在職中に雇用保険に加入していた労働者です。雇用保険は労働者の生活や雇用の安定を維持・促進することを目的とした強制保険制度です。従業員を1人でも雇っている場合、会社には雇用保険に加入する義務があります。以下に該当する場合は、失業手当を受給できます。

  1. 一般被保険者(正社員・契約社員・パート・アルバイト など)
  2. 短期雇用特定被保険者(リゾート地での短期アルバイト など)
  3. 日雇い労働被保険者(1日ごと・30日以内の期限を決めて雇用される人)

(1)の一般被保険者に該当する人は、会社を退職する理由によって「一般受給資格者」「特定受給資格者」「特定理由離職者」の3つに分類されます。

雇用保険に加入していた労働者が離職する際に受け取る給付金のことを「失業等給付」といいます。一般に「失業手当」と呼ばれているのは、失業等給付の中の「求職者給付」のことを指します。失業等給付にはこのほか「就職促進給付」「教育訓練給付」「雇用継続給付」などがあり、離職者の就業促進を目的とした支援が行われています。

「特定受給資格者」となる人

厚生労働省では特定受給資格者について「倒産・解雇等の理由により再就職の準備をする時間的余裕がないまま離職を余儀なくされた者」としています。

つまり、特定受給資格者に該当するのは主に

のいずれかの場合といっていいでしょう。客観的に見て会社の責任において退職することが認められる場合は特定受給資格者となります。

「特定理由離職者」となる人

厚生労働省では特定理由離職者について「特定受給資格者以外の者で、期間の定めのある労働契約が更新されなかったことやその他のやむを得ない理由によって離職した者」としています。

つまり、特定理由離職者に該当するのは主に

場合といっていいでしょう。労働者本人が労働契約の更新を希望しているのに対し、会社側の合意が得られなかったケースがこれにあたります。

失業手当における優遇措置

特定受給資格者に該当する人(特定理由離職者の一部を含む)は、失業手当を受給する際の要件が緩和されるなど、より手厚いサポートを受けることができます。

受給資格

一般の離職者と特定受給資格者とでは、失業手当を受けるための要件が異なります。
一般離職者    :離職日以前の2年間に被保険者期間が12ヶ月以上
特定受給資格者    :離職日以前の1年間に被保険者期間が6ヶ月以上

給付制限期間

一般の離職者と特定受給資格者とでは、失業手当が給付されるまでの日数も異なります。特定受給資格者は一般離職者に比べて、より迅速に給付が開始されます。
一般離職者    :ハローワークに離職票を提出した後7日間(待機期間)+2ヶ月(給付制限期間)
特定受給資格者    :ハローワークに離職票を提出した後7日間(待機期間)のみ

給付日数

一般の離職者と特定受給資格者とでは、失業手当を受給できる期間も異なります。特定受給資格者は一般離職者に比べて給付日数の上限が拡大されており、長期にわたって給付を受けられるよう設計されています。
一般離職者    :(被保険者期間により)90~150日
特定受給資格者    :(年齢により)90~330日

失業手当を目当てにした虚偽記載はNG。離職票は適切に作成しよう!
 

 

特定受給資格者に該当する人は、失業手当を受給する際に一定の優遇措置を受けられます。しかし、できるだけ早く・長く給付を受けようと不正行為をはたらくことは許されません。不正行為が発覚した場合、退職者は二度と給付を受けられなくなるほか、受給金額の最大3倍の金額を返還するよう求められます。一方、会社が作成した離職票の記載内容が事実と異なる場合には、会社の不正行為とみなされる恐れがあります。たとえどのような事情があったとしても、公的な書類は適切に扱いましょう。
 

WRITER

大場由佳

取材対象者の想いを伝えるWebライター

証券会社勤務を経て、印刷会社にてグラフィックデザインを学ぶ。キャリアップを目指した広告代理店では、企画・デザイン・ライティング・ディレクション業務などを幅広く手がける。出産を機にフリーライターとして活動をスタート。医療・グルメ・女性・スクール系など幅広いジャンルのWebサイトで記事を執筆し店舗取材を多数経験。取材時に寄せられる労務問題に対応する中で知識を深め、読みやすく・分かりやすい文章で発信中。