コンプライアンス違反をしたらどうなる? 事例を交えて詳しく解説
2022-11-28
大後 ひろ子
C-OLING代表 ブランディングコンサルタント
労務リスクマネジメント
企業の不祥事に関するニュースなどで耳にすることが多くなった「コンプライアンス」という言葉。何となくニュアンスはわかっているものの、実際に意味を説明するとなると「難しい」と感じる人が多いのではないでしょうか? こちらの記事では、近年注目が集まるコンプライアンスについて、基本的な知識を解説します。コンプライアンス違反を犯してしまう原因や予防策なども紹介していますので、ぜひ参考になさってください。
そもそも、コンプライアンスとは?
コンプライアンスは英語で書くと「compliance」、日本語にすると「法令遵守」などの意味になります。最近では法律に加えてモラルやルールを守るといった広い意味で使われる言葉となりました。つまり「コンプライアンスを守る」という場合には、法令遵守のほかに会社の規則、社会のルールなどを守りながら組織運営をするという意味合いがあります。
ガバナンスとの違い
コンプライアンスと同じように使われる言葉に「ガバナンス」があります。ガバナンスは正式には「コーポレートガバナンス」といい、「企業統治」などと訳されます。ガバナンスは会社において公正な判断や運営がなされるように監視する仕組みのことを指すのに対して、コンプライアンスは理念的な目標といった意味合いが強い言葉です。
法律・ルール・モラルを守る「コンプライアンス」を実現するためには、社内の管理体制を整備する必要があります。つまり、コンプライアンスの実現には「ガバナンス」が欠かせない、ということになります。
コンプライアンス違反の原因
2000年代に入って組織ぐるみの不祥事が頻発したことにより、社内におけるコンプライアンス体制の整備が進められるようになりました。コンプライアンス違反が起こる理由としては、以下のようなことが考えられます。
法律に関する知識不足
会社法や独占禁止法など、会社として守るべき法律にはさまざまな種類があります。これらの法律にはコンプライアンス体制の整備を求める内容が盛り込まれているのですが、そのことを知らずにコンプライアンス違反となっているケースが少なくありません。
経営陣が法律に関する知識を身に付けるというのはもちろん、従業員に対してコンプライアンスに関する勉強会を開くなどして、全体のレベルアップを図る必要があるでしょう。
不正行為の連鎖
社内で不正が行われるのには、それなりの理由があります。不正を行いたい動機があり、不正を行うチャンスがあり、不正行為を正当化できる……この3つの条件がそろうと不正行為が発生しやすくなります。
たとえ従業員に何らかの動機があっても、不正を行うチャンスがなければ不正行為にはつながりません。金銭の授受を行う際は必ずダブルチェックをするなどして、不正の芽を摘むことが大事です。
コンプライアンス違反の事例
コンプライアンス違反というと、重大な事件を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、日常的に起こり得るパワハラや長時間労働などもコンプライアンス違反とみなされるため、注意が必要です。
賃金未払い
「労働に対する報酬として、会社(使用者)がその対価(賃金)を従業員に支払う」ことは労働基準法に定められています。しかし、中には時間外労働(残業)をした従業員に「割増賃金が支払われない」といったケースがあるようです。サービス残業は明らかなコンプライアンス違反であり、労使間のトラブルに発展するケースも少なくありません。
長時間労働
従業員に対してきちんと残業代を支払っていても、長期にわたって長時間労働をさせることはコンプライアンス違反です。労働基準法で決められている労働時間の上限規制を守ることはもちろん、従業員の心と体の健康にも配慮する必要があります。
ハラスメント行為
コンプライアンス違反の代表的なものに職場におけるパワハラ・セクハラ行為があります。こうしたハラスメント行為は個人(従業員)の問題にとどまらず、会社としての姿勢も問われます。安全配慮義務(従業員が安全・健康に働けるようにする)を果たすためにも、ハラスメント行為に対する会社の方針を明確にする必要があります。
不正会計
貸借対照表や決算書などを操作して会社の経営・財務状況を偽装する「粉飾決算」は重大なコンプライアンス違反です。上場会社であれば粉飾決算を行った個人(従業員)に刑事罰、会社には罰金刑が科されます。
個人情報漏洩
顧客情報や従業員の個人情報が外部に流出してしまう問題は、コンプライアンス違反の事例として数多く報告されています。情報流出の原因はさまざまですが、ハッキングなどのトラブルも想定してセキュリティ対策を万全にしておく必要があります。
コンプライアンス違反の予防策
インターネットなどで簡単に情報発信ができるようになり、小さなコンプライアンス違反が大きな問題に発展しかねない時代になりました。「つい、うっかり」でコンプライアンス違反を犯さないよう、きちんと対策をしておきましょう。
社内のリスクを確認
粉飾決算により罰金刑が科された事例、過重労働が従業員の自殺につながった事例など、コンプライアンス違反が裁判に発展したケースは少なくありません。過去の事例を検証することで起こり得るリスク要因を見つけ出し、徹底した対策を取ることが大事です。
コンプライアンス勉強会
コンプライアンスに関する研修は、一度だけでなく繰り返し行う必要があります。コンプライアンス違反が会社にどのような影響を及ぼすのか、専門家を招いて定期的な勉強会を行うとよいでしょう。従業員一人ひとりの意識を高め、会社全体で取り組むことが求められます。
相談先を確保する
会社の業種・業態によっては、遵守すべき法律が違ってくることがあります。法令遵守に不安がある場合は、法律の専門家である弁護士などに相談するとよいでしょう。コンプライアンス違反は「知らなかった」では済まされないケースもありますので、最低限の内容は確認しておきましょう。
コンプライアンス違反は会社に及ぼす影響大。管理体制を再確認しよう!
社内でコンプライアンス違反が発覚した、業務停止処分や業務改善命令といった行政処分を受ける可能性があります。経営者や従業員が逮捕される事態になれば、会社が受けるダメージは計り知れないものになるでしょう。顧客離れや従業員の離職を防ぐ意味からも、早急なコンプライアンス対策が欠かせません。社内の管理体制を見直すとともに、従業員のコンプライアンス意識向上に努めましょう。