「離職票」は何に使うもの?退職証明書との違いや手続きの流れを解説

2022-09-29

大後 ひろ子

C-OLING代表 ブランディングコンサルタント

労務雇用管理

何らかの事情で会社を退職した際、失業中の生活と1日も早い再就職をサポートしてくれるのが失業手当です。失業手当のことは知っていても、受給に必要な書類「離職票」についてはよく知らないという人も多いのではないでしょうか? こちらの記事では、公文書として扱われる離職票について、発行に必要な手続きや注意点をわかりやすく解説します。離職票は、会社が申請手続きを行う必要がありますから、全体の流れをしっかりと把握してください。

そもそも、離職票とは?


離職票は、対象となる従業員がたしかに離職したことを公的に証明する書類です。正式名称を「雇用保険被保険者離職票」といい、勤めていた会社の情報や雇用保険に加入していた期間、退職理由などが記載されます。

失業手当は、離職票に書かれている内容によって支給の可否や支給期間が決められます。失業手当の受給を希望する場合は、ハローワークに離職票を提出する必要があります。

退職証明書との違い

退職証明書は、対象となる従業員が退職したことを会社が証明する書類です。ハローワークが発行する離職票とは異なり、公文書として扱われることはありません。また、ハローワークなどの公的機関に提出する必要もありません。

失業手当の受給に欠かせない離職票とは違って、退職証明書は会社が必ず用意しなければならない書類ではありません。そのため、退職者が希望した場合に発行するものという認識でいいでしょう。

離職票が発行されるまでの流れ

ハローワークから離職票が発行されるまでには10日〜2週間程度かかります。退職者が離職票を受け取るためには、次のような手続きが必要となります。

1)退職者が「離職票」の発行を会社に依頼する

公的書類である離職票を発行するのはハローワークですが、申請手続きを担うのは会社です。そのため、退職する従業員は、あらかじめ社内の担当者に対して離職票の交付手続きを依頼しておく必要があります。

2)会社がハローワークに「離職証明書」等を提出する

会社がハローワークに提出する書類は、離職証明書と雇用保険被保険者資格喪失届の2つです。離職証明書は会社側で作成しますが、勤務実態や離職理由などを確認のうえ、離職者本人が署名・捺印する必要があります。

3)ハローワークが会社宛てに「離職票」を交付する

会社から提出された2つの書類をハローワーク側が確認し、すべての手続きが終わると離職票が発行されます。発行された離職票は申請を行った会社宛てに送付されるのが一般的です。

4)会社が退職者宛に「離職票」を送付する

ハローワークから離職票を受け取った会社は、退職者のもとへ滞りなく離職票を届ける必要があります。このとき、退職者はすでに会社を離れているため、郵送となるケースが多いようです。

以上のような手続きを経て、ようやく退職者のもとに離職票が届きます。離職票の交付が遅れると、失業手当の給付まで遅れてしまう可能性があります。(1)は特に重要ですから、会社側からも従業員に注意喚起するといいでしょう。

離職票が届かない・失くしたときに必要な対応

離職票の送付が遅れていたり、退職者が離職票を失くしたりした場合、退職者から会社に問い合わせの電話があるかもしれません。会社としての対応を確認しておきましょう。

離職票が届かないとき

退職した日から離職票が手元に届くまでの時間は、長くても2週間程度です。もしそれ以上待っても離職票が発行されない場合は、早急な対応が必要になります。

社内の状況を確認

従業員が退職したとき、会社は離職の翌日から10日以内に離職票の交付手続きを行わなければなりません。ハローワークに対して離職証明書・雇用保険被保険者資格喪失届の提出がされているか、確認しましょう。

ハローワークに確認

会社側に問題がない場合は、書類を提出したハローワークに問い合わせを行います。ハローワーク内での進捗状況を確認し、もしも書類に不備があれば修正対応します。

仮手続きを提案

一定期間を経過しても離職票を受け取れない求職者は、離職票なしでも仮手続きを進められます。これにより、遅延なく失業手当を受給する可能性が高くなります。各自治体によって「一定期間」の日数が異なるため、所轄のハローワークに確認するといいでしょう。
※失業認定日(仮手続きから4週間後)には必ず離職票が必要となります。

離職票を失くしてしまったとき

離職票を紛失した場合でも、再発行は可能です。できるだけ早い再発行を希望するなら、退職した会社を管轄するハローワークで再発行を申請するのがおすすめです。ほかのエリアのハローワークでも申請を受け付けていますが、どうしても時間がかかります。退職する従業員に対しては、離職票の管理を徹底するよう伝えましょう。

離職票は、失業手当の受給に不可欠

失業手当を受給するためには、離職票のほかに以下の書類が必要になります。

失業手当の受給に必要な書類

失業手当・受給までの流れ

失業手当は、雇用保険の被保険者であった労働者が失業中も安心して生活できるようにと考えられた制度です。給付を受けるためには、失業中であること・働く意思があることの認定を受けなければなりません。

1)ハローワークにて失業手当受給の申請をする

失業手当の受給に必要な書類一式を提出し、申請を行います。

2)雇用保険受給者説明会に参加する

雇用保険制度にまつわる説明会に参加し、受給に必要な書類を受け取ります。

3)求職活動を行う

失業手当を受給するには、求職中であることが前提条件です。求人に応募するだけでなく、講習会やセミナーに積極的に参加したり、資格試験に挑戦したりしましょう。

4)失業認定

ハローワークから指定された日に、求職活動の状況確認を行います。失業認定は原則4週間に1度行われます。

5)失業手当の受給

失業手当の振り込みは、失業認定を行ってからおおむね7日後です。指定した金融機関の預金口座に振り込みが行われます。

 

離職票について正しく理解し、退職する社員をサポートしよう!
 

離職票は、失業手当の受給に欠かせない重要な書類です。基本的には、退職する従業員の依頼に基づいて用意する書類ですが、依頼の有無にかかわらずすべての退職者に対して発行する会社がほとんどです。何らかの事情で会社を離れることになっても、退職する社員はこれまで一緒に働いてきた仲間です。わからないことは相談に乗るなどして、気持ちよく送り出してあげてください。
 

WRITER

大場由佳

取材対象者の想いを伝えるWebライター

証券会社勤務を経て、印刷会社にてグラフィックデザインを学ぶ。キャリアップを目指した広告代理店では、企画・デザイン・ライティング・ディレクション業務などを幅広く手がける。出産を機にフリーライターとして活動をスタート。医療・グルメ・女性・スクール系など幅広いジャンルのWebサイトで記事を執筆し店舗取材を多数経験。取材時に寄せられる労務問題に対応する中で知識を深め、読みやすく・分かりやすい文章で発信中。