雇用保険の加入条件とは? 雇用保険のメリットや手続きを解説
2022-10-11
大後 ひろ子
C-OLING代表 ブランディングコンサルタント
労務福利厚生
キャリアアップを目指して退職を決意したり、思いがけず会社から解雇を言い渡されたり…。ある日突然収入が途絶えたとき、頼りになるのが失業手当(失業給付)です。失業手当は雇用保険から支給されるものですが、誰もが無条件にもらえるわけではないことをご存知でしたか? こちらの記事では、雇用保険の目的や加入条件などについてわかりやすく解説します。会社としてどのような対応が求められるのか、ぜひ確認してみてください。
雇用保険の目的とは?
雇用保険は、失業して収入が絶たれた労働者に向けて失業給付などを行う保険制度です。労働者の生活の安定、1日も早い再就職をサポートすることが制度の大きな目的です。
生活の安定
一家の生計を支える労働者が職を失うと、本人のみならず家族にも影響が及びます。雇用保険の失業給付は、収入が途絶えたことによる経済的なダメージを救済する意味から支給されます。これにより労働者は失業期間中も一定の金額を受け取ることができ、日々の生活が安定します。
再就職支援
雇用保険のもう一つの役割は、失業者の再就職をサポートすることです。就職活動は必要書類を作成するための費用や交通費など、さまざまな出費を伴います。また、キャリアアップを目指す人は新たな資格取得を計画するかもしれません。そうしたときに失業給付を受け取ることができれば、安心して就職活動に取り組めるでしょう。
このように雇用保険には労働者の権利を守る重要な役割があります。だからこそ、雇用保険は日本政府が管理する強制保険制度となっているのです。
雇用保険の加入条件【3つの基本条件】
雇用保険に加入するためには、次に挙げる3つの条件があります。
1)1週間の所定労働時間が20時間以上
所定労働時間とは、会社が定めた労働時間のことを指します。雇用契約が「所定労働時間7時間/週5日勤務」となっていれば1週間の所定労働時間は35時間となり、条件をクリアします。ただし、1週間に20時間以上働いている場合でも、雇用契約上の所定労働時間が「週20時間未満」となっている場合は加入対象になりません。
2)雇用期間が31日以上になる予定
雇用契約に「継続して31日以上雇用しない」などと明確に記載されていない場合、すべての労働者が加入対象者になります。雇用契約に規定がない場合でも、31日以上の雇用実績があるなら加入の対象となります。
3)「学生」ではない
上記(1)(2)の条件を満たす場合であっても、原則として学生の加入は認められません。ただし、以下のようなケースは加入対象となります。
- 卒業前に就職。卒業見込証明書を用意でき、卒業後も引き続き同じ会社に勤務する。
- 出席日数が卒業の条件を満たし、ほかの労働者と同じ条件で勤務できる。
- 学校を休学して働いている。(要・証明書類)
- 雇用契約において雇用主が大学院在学を承諾している。
雇用保険の加入条件【雇用形態別条件】
雇用保険の加入条件は正社員か、パート・アルバイトかなどの雇用形態によって違いがあります。
正規雇用労働者
雇用保険の適用事業所に「正社員」として雇用された労働者は、必ず雇用保険へ加入しなければなりません。雇用契約書の内容にかかわらず、すべての正規雇用労働者が対象となります。
パート・アルバイト・派遣社員
いわゆる非正規雇用労働者は、以下の条件を満たすと加入義務が発生します。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 雇用期間が31日以上になる予定
これに加えて
- 雇用期間が決まっていない
- 雇用契約を更新して31日以上働く
- 雇用契約が延長になり継続勤務日数が31日以上になった
- 場合にも雇用保険に加入する必要があります。
日雇い労働者
日雇い労働者の定義は、「1日単位で仕事をする」「30日以内の期間を定めて雇用されている」人です。この場合、雇用保険の適用事業所と雇用契約を結ぶと同時に加入条件を満たし「日雇労働被保険者」となります。
季節労働者
季節労働者の定義は、「季節性のある仕事に従事する」「1年の3分の1以上の期間に及ぶ雇用契約を結んでいる」「週の所定労働時間が30時間以上」の人です。これらに該当する人は雇用保険の「短期雇用特別被保険者」となります。
雇用保険で受け取れる給付金
雇用保険に加入する従業員が受給できる給付金には以下のようなものがあります。
失業給付金
雇用保険に加入していた従業員が職を失った場合、ハローワークに申請することにより給付を受けられます。失業手当(失業給付金)の受給金額や受給開始日は、退職理由・加入期間・年齢・給与額などにより異なります。
教育訓練給付金
厚生労働大臣が指定する「教育訓練講座」を受講するとき、受講料や入学金などの一部を負担してもらえます。教育訓練給付金の対象となる講座には介護福祉士・建築士・調理師などの資格を取得できるものがあり、キャリアップが期待できます。
その他の給付金
育児休暇や介護休暇を取得した従業員に対して給与を支払うかどうかは、会社が自由に決められます。もしも休業中に給与が支払われない場合、雇用保険から育児休業給付金・介護休業給付金を受け取ることができます。
雇用保険の加入手続き
あなたの会社が雇用保険の適用事業所に該当する場合、最初に行う必要があるのは、事業所を管轄するハローワークに「雇用保険適用事業所設置届」と従業員の人数分の「雇用保険被保険者資格取得届」を提出することです。その後も新しく従業員を雇用する際に「雇用保険被保険者資格取得届」を提出する必要があります。
もしも手続きを怠ると「懲役6ヶ月以下 または 罰金30万円」が科されますので注意してください。
雇用保険の加入手続きは会社が行うもの。遅延なく適切な対応を!
従業員の雇用保険加入の手続きは、会社が責任をもって行う必要があります。雇用保険は従業員の生活や権利を守ると同時に、会社を守る制度でもあります。手続きを怠った場合には罰則規定もありますので、加入条件や必要書類を確認しながら準備を進めましょう。