解雇通知書とは何か? 記載すべき内容や注意点をくわしく解説

2022-11-21

大後 ひろ子

C-OLING代表 ブランディングコンサルタント

労務雇用管理


新たな人材を採用するとき「1次面接」「2次面接」と段階を踏むように、会社が従業員を解雇しようとする場合もいきなり「クビ」を宣告することはできません。会社は書面によって従業員に解雇を通知するとともに、解雇まで一定の猶予期間を設ける必要があるのです。この書面のことを「解雇通知書」といいますが、これまで耳にしたことはあるでしょうか? こちらの記事では解雇通知書にまつわる基本的な知識をわかりやすく解説しています。解雇通知書を交付する際に注意したいポイントにも触れていますので、ぜひ参考になさってください。

そもそも、解雇通知書とは?

解雇通知書とは、会社が従業員に対して「解雇の意思表示」として交付する書面のことを指します。解雇通知から実際に解雇するまで一定の期間がある場合には、解雇予告通知書と呼ばれることもあります。

労働基準法では、会社が従業員を解雇する場合には少なくとも30日前までに解雇を通知することを原則としています。もしも会社がこれを守れない場合、30日に満たない分の日数に対する平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。

解雇通知書の記載事項

解雇通知書には書類を交付する日付などを含め、以下の6点を記載する必要があります。

1)従業員の氏名

解雇通知を行う従業員の名前を記載します。

2)会社名・代表者氏名

株式会社○○○などの正式名称、代表取締役の名前を記載したうえで社印を捺印します。

3)解雇通知書の作成日(交付日)

一般に、書面の右上に解雇通知書の作成日を記載します。解雇通知書を従業員に直接手渡す場合は「手渡す日」となり、郵送する場合は「発送日」となります。

4)解雇する日

従業員を解雇する日は、書面の中でもっとも重要な内容です。「○年○月○日付をもって解雇します」など、解雇する日を明確にしておく必要があります。

従業員に対する解雇通知は30日前までに行わなければなりません。解雇通知書を手渡しする場合はもちろん、郵送する場合は特に日数的な余裕を持って解雇する日を設定してください。

5)解雇する旨の明確な意思表示

解雇通知書を交付する大きな目的は、「会社はあなたを解雇します」という決定事項を伝えることです。解雇通知書を交付した時点で解雇することが確定していることが原則であり、条件付きの解雇予告は認められません。

6)解雇する理由

従業員を解雇する理由として、就業規則に該当する内容があればその条文について記載します。一般に、対象者の能力不足、勤務態度不良などが解雇理由とされることが多いようです。

解雇通知書の交付が必要ないケース

労働基準法では解雇通知書にまつわる「原則」を定めていますが、以下のようなケースでは解雇通知書が必要ないとされています。

解雇までの30日分の賃金(解雇予告手当)を支払う場合
従業員の犯罪行為(窃盗・横領など)に起因する解雇の場合
従業員の経歴詐称による解雇の場合
従業員が2週間以上の長期にわたって無断欠勤した場合
日雇い従業員を雇用開始から1ヶ月以内に解雇する場合
試用期間中の従業員を雇用開始から14日以内に解雇する場合

解雇通知書の交付で注意すべきポイント

会社の規模にかかわらず、従業員に解雇通知書を交付する機会は決して多くはないでしょう。ここでは解雇通知書の交付時に注意したいポイントをまとめました。

解雇通知は必ず書面で

会社から従業員への解雇通知は書面によって行われるのが一般的ですが、法律上は口頭で解雇する旨を通知しても問題ありません。ただし、従業員に口頭で伝えるだけでは内容を客観的に証明できないため、トラブルを避ける意味からも書面に残しておくことが大事です。

必ず受領確認を行う

会社が解雇通知を行ってもその通知が従業員に届いていなければ意味がありません。法律的にも解雇通知が有効だと認めてもらうためにも、従業員が解雇通知書を確かに受け取った記録を残す必要があります。

従業員に解雇通知書を手渡しする場合は、あらかじめ解雇通知書のコピーを用意して、従業員に「受領しました」などの文言を書いてもらい、日付や押印(サイン)をもらうようにしましょう。

郵送時は「内容証明」を利用する

解雇通知書を郵送で交付する場合は、郵便局から「内容証明郵便」として発送します。これにより、たとえ受領印がなくても、従業員が解雇通知書を受け取ったことを証明することができます。

ただし、内容証明郵便は郵便局員による「手渡し」で届けられるため、受け取りを拒否されたり、不在のため届けられなかったりするケースも考えられます。
こうした点を考慮して

内容証明郵便とあわせて普通郵便でも送る
追跡サービスを利用して配達状況を随時確認する

などの対応を取ることをおすすめします。

最終手段は「公示送達」

内容証明や普通郵便などさまざまな方法を駆使しても、転居先不明などを理由に郵便(解雇通知書)が返ってきてしまうことがあります。従業員のもとに郵便物が届かない、つまり従業員が行方不明の状態になっている場合は、裁判所に申請して「公示送達」を利用することができます。

公示送達とは、行方不明などを理由に従業員への解雇通知ができないとき、裁判所の掲示板に解雇通知書を掲示してもらえる制度です。掲示開始から2週間が経過すると、従業員が解雇通知書を受け取ったものとして扱われるようになります。

解雇通知書を交付する前に、解雇の正当性を確認しよう!
 

 

このページでご紹介した内容は、あくまでも解雇通知書を交付する手順やルールです。会社として法律を遵守するのはもちろん大事なことですが、従業員を解雇するのに相応の理由が伴っていなければ不当解雇として訴えられかねません。解雇理由(解雇が正当だとみなされる客観的な理由)や解雇手続き(解雇通知書の交付など)が適切かどうかを丁寧に確認し、解雇にまつわるトラブルを未然に防ぎましょう。
 

WRITER

大場由佳

取材対象者の想いを伝えるWebライター

証券会社勤務を経て、印刷会社にてグラフィックデザインを学ぶ。キャリアップを目指した広告代理店では、企画・デザイン・ライティング・ディレクション業務などを幅広く手がける。出産を機にフリーライターとして活動をスタート。医療・グルメ・女性・スクール系など幅広いジャンルのWebサイトで記事を執筆し店舗取材を多数経験。取材時に寄せられる労務問題に対応する中で知識を深め、読みやすく・分かりやすい文章で発信中。