給料ファクタリングって何? 仕組み・問題点・トラブル回避策を解説

2022-10-25

大後 ひろ子

C-OLING代表 ブランディングコンサルタント

労務給与・賃金

思いがけないイベントが続いて出費がかさんだり、給料日を前に現金が底をついてしまったりして「給料を前借りできたらいいのに」と考えたことはありませんか? そんなとき頼りになるのが、会社に勤めている人なら誰もが手にする「給料」をもとに、個人で資金調達できる手法です。こちらの記事では、今注目を集める給料ファクタリングの仕組みやリスクについてわかりやすく解説します。思わぬトラブルに巻き込まれないためにも、注意すべきポイントをしっかり確認してください。

そもそも、給料ファクタリングとは?

ファクタリング(Factoring)とは、他者が持つ売掛債権を買い取り、その債権を回収する金融サービスを指します。ファクタリング業者に売掛金を売却することによって現金化する資金調達の方法であり、中小企業などを中心に普及してきました。この資金調達法を個人に応用したものが「給料ファクタリング」です。

売掛金は売上にかかる債権で、将来的に金銭を受け取ることができる権利です。ファクタリングはすでに手にしている債権を他者に譲渡することによって資金を調達するため、一般的な「借金」とは性質が異なります。

給料ファクタリングの仕組み

給料ファクタリングは以下のような流れで行われ、現金を受け取る際はおおむね15〜20%程度の手数料を引かれるのが一般的です。

【給料ファクタリングの基本的な流れ】

  1. 給料ファクタリング業者が給与債権(給料を受け取る権利)を買い取る
  2. 給料の支払い日より前に現金(給与額-手数料)が支払われる

ここで注意したいのは、実際の給与ファクタリングでは利用者の意図に反して「実質的に借金と変わらない」ケースが少なくないことです。また、給料ファクタリング業者が無登録で貸金業を営んでいる場合は違法となりますから、よりいっそう注意が必要です。

2者間ファクタリング

2者間ファクタリングの2者とは、給料ファクタリング業者と個人(従業員)です。2者間ファクタリングでは両者の間で給与債権が売買されます。

【2者間ファクタリングの流れ】

  1. 給料ファクタリング業者と債権譲渡契約を締結する
  2. 給料ファクタリング業者から現金(給与額-手数料)を受け取る
  3. 勤務先から給与が支払われる
  4. 入金された給与額を給料ファクタリング業者に送金する

3者間ファクタリング

3者間ファクタリングの3者とは、給料ファクタリング業者と個人(従業員)、そして従業員が勤務する会社です。3者間ファクタリングの流れは以下のようになります。

【3者間ファクタリングの流れ】

  1. 給料債権を譲渡するにあたり、従業員が勤務する会社の同意を得る
  2. 給料ファクタリング業者と従業員が債権譲渡契約を締結する
  3. 従業員は給料ファクタリング業者から現金(給与額-手数料)を受け取る
  4. 勤務先の会社は当該従業員の給与を給料ファクタリング業者の口座に送金する

給料ファクタリングが注目される理由

中小企業を中心に行われていたファクタリングが個人に広まったことには、以下のような背景があります。

手軽さ

最近では、ネットの掲示板やSNS上に給料ファクタリング業者による書き込みを目にするようになりました。給料ファクタリングが広まりつつあるのは、個人でも簡単に給料ファクタリング業者とつながれる点が大きいでしょう。

審査を通過しやすい

一般に、貸金業を営む場合には事業所を管轄する都道府県知事に登録手続きをする必要があります。しかし、給料ファクタリング業者の中には無登録で貸金業を行っているケースが少なくありません。こうしたヤミ金業者は審査が緩いことが多いため、誰でも簡単に利用できてしまうのです。

賃金の低下

コロナ禍で収入が減少し、日々の生活費や教育費に困窮する人が多くなりました。そのため、個人でも利用できる給料ファクタリングを利用して資金を調達しようとする人が増える傾向にあります。

個人で利用できる

給料ファクタリング業者と個人(従業員)のみで行う2者間ファクタリングでは、給料ファクタリングのことを会社に知られる心配がありません。給料ファクタリング業者への送金を確実に行うことができれば、会社に取り立てが行くこともありません。

給料ファクタリング・3つのリスク

個人でも手軽に資金を調達できる給料ファクタリングですが、手軽な反面リスクも少なくありません。

1)ヤミ金業者(悪質業者)の存在

給料ファクタリング業者の中には、無登録で貸金業を営むヤミ金業者が多く存在するといわれています。こうした悪質業者と債権譲渡契約を結べば、法外な金利を要求されかねません。思わぬトラブルに巻き込まれないよう、金融庁も注意喚起を行っています。

2)利息が高い

出資法では上限金利を20%と定めており、これを超える利息は出資法違反となり罰則規定の対象になります。一方で、給料ファクタリング業者には無登録のヤミ金業者が少なくないため、法外な利息を設定しているケースがあります。

3)多重債務

個人が手軽に資金調達できる給料ファクタリングは依存性が高いといわれます。「1回だけ」のつもりで始めたにもかかわらず何度も借り入れを繰り返してしまったり、お金を借り過ぎてしまったりするケースも少なくありません。

トラブルに巻き込まれないよう、給料ファクタリングの仕組みを理解しよう!

給料ファクタリングは給料を前借りするようなイメージがありますが、その実態は融資や借金と変わらないケースが少なくありません。給料ファクタリング業者の中には、いわゆるヤミ金業者も存在します。もしも給料ファクタリングを利用する場合には、法律で定められた範囲の金利であるかどうかなどをしっかり確認するようにしましょう。
 

WRITER

大場由佳

取材対象者の想いを伝えるWebライター

証券会社勤務を経て、印刷会社にてグラフィックデザインを学ぶ。キャリアップを目指した広告代理店では、企画・デザイン・ライティング・ディレクション業務などを幅広く手がける。出産を機にフリーライターとして活動をスタート。医療・グルメ・女性・スクール系など幅広いジャンルのWebサイトで記事を執筆し店舗取材を多数経験。取材時に寄せられる労務問題に対応する中で知識を深め、読みやすく・分かりやすい文章で発信中。