整理解雇とは何か? 不当解雇とみなされないための基礎知識を解説

2022-11-29

大後 ひろ子

C-OLING代表 ブランディングコンサルタント

労務雇用管理

ひと昔前にはリーマンショック、最近では新型コロナウイルス感染症の拡大。世界規模の金融危機により、苦しい経営を続ける会社も少なくないようです。一般に、経営不振に陥った会社は業績回復に向けてコスト削減などに努めますが、必ずしも努力が報われるわけではありません。あらゆる手を尽くしても状況が改善しないとき、会社は倒産に向けて準備を進めるしかないのでしょうか……? こちらの記事では、会社存続に向けた最終手段として行われる「整理解雇」ついて基本的な知識を解説します。実際に整理解雇を行う際の流れなども紹介していますので、ぜひ内容を確認してみてください。

そもそも、整理解雇とは?

整理解雇とは、会社の業績悪化などを理由に人員削減を目的に行われる解雇です。「解雇」は会社側の一方的な意向で雇用契約が解除されることをいい、整理解雇のほかに以下のようなものがあります。

普通解雇

普通解雇は、会社側の意向により従業員との雇用契約を一方的に解除することです。一般に「解雇」という場合は普通解雇のことを指し、会社側から申し出により行われます。解雇の理由には、以下のようなものが考えられます。

懲戒解雇

懲戒解雇とは、従業員側に重大かつ悪質な規律違反があった場合に、懲戒処分の中でもっとも重い処分として行われるものです。職場内・職場外にかかわらず、会社の評判や業務に支障をきたすと判断される場合には懲戒解雇の対象となります。解雇の理由としては以下のようなものが考えられます。

整理解雇

整理解雇は、業績が悪化した会社が倒産を回避するべく行う解雇です。会社を存続させるために人員を削減し、人件費をカットすることが大きな目的です。ただし、整理解雇が有効となるには4つの要件を満たす必要があります。

整理解雇とリストラの違い

リストラは英語のRestructuring(リストラクチャリング)の略語で、本来は「構造改革」などの意味があります。日本では「経営合理化」「事業再生」といった概念で使用されており、整理解雇のほかにもさまざまな施策を含みます。このことから、リストラの一環として整理解雇があると覚えておくとよいでしょう。

整理解雇が有効となる4つの要件

整理解雇は会社の経営不振などを理由に行われるため、従業員を解雇するのが妥当かどうかを厳しく審査されます。整理解雇が有効とみなされるには、以下の4点を満たす必要があります。ただし、最近の社会情勢を踏まえて、中小企業については要件を緩和する動きもあるようです。

1)人員削減の必要性

人員削減の必要性については、根拠となる数値を示す必要があります。単に「経営が悪化した」と主張しても認められないケースが多いからです。具体的な経営指標をもとに「経営状態が○%悪化した」「人件費を○%削減する必要がある」と説明できなければなりません。

2)解雇回避の努力

整理解雇は事業再生の最後の手段であり、まずは徹底して経費削減に努めることが大事です。役員報酬の削減/出向/希望退職を募るなどしても業績の改善がみられない場合に限り、整理解雇の検討に入ります。

3)人選(解雇する従業員)の合理性

整理解雇の対象となる従業員をどのように選んでいるかも重要なポイントになります。対象者の選定に合理性が認められない場合は、整理解雇が無効になる可能性もあります。整理解雇を行う際には、客観的かつ合理的な基準を設けて対象者を選定する必要があります。

4)解雇手続きの妥当性

整理解雇を進めるにあたっては、解雇の対象となる従業員や労働組合に対して十分な説明・協議を行う必要があります。整理解雇を行う必要性・時期・規模・方法などを丁寧に説明し、相手側の理解を得る努力をしなければなりません。

整理解雇・5つのステップ

従業員の解雇を避けようとあらゆる手を尽くしても業績が回復せず、最終的に整理解雇を決断しなければならないケースもあるでしょう。ここでは整理解雇を行う際の手順を解説します。

1)解雇の基準を決定

整理解雇を行う際には、あらかじめ以下の内容を決めておく必要があります。

2)解雇の実施を発表

(1)で確定した内容を全社員に公開します。文書などで発表するのが一般的で、通知書には以下の内容を記載します。

3)解雇する従業員の人選

整理解雇に関する発表を終えたら、対象者の人選に移ります。解雇の想定人数よりも対象者が多くなる場合には、「勤務態度」「勤続年数」「家族構成」などをもとに誰を解雇するのかを決定します。

4)解雇予告

普通解雇や懲戒解雇と同じように、整理解雇においても実際に解雇する日の30日前までに解雇を予告する必要があります。対象となる従業員に口頭で伝えても問題ありませんが、正確性・客観性を担保するために書面で通知するのが一般的です。

5)解雇辞令の交付

実際に従業員を解雇する日に「解雇辞令」を交付し、退職金の支払いと退職手続きを行います。従業員に解雇辞令を直接手渡しできないときは特定記録郵便などを利用して郵送し、対象者のもとに確実に届くようにします。

整理解雇は最後の手段。日頃から健全な経営を心がけよう!
 

 

人員(人件費)削減によって会社を存続させようとする整理解雇は、会社経営における最終手段です。経営に参加しない従業員にできることには限りがありますが、一人ひとりが業務効率化に取り組むことで整理解雇を回避できる可能性があります。社内のコミュニケーションを活発化させ、良好な人間関係を築くことにより、生産性向上に努めましょう。
 

WRITER

大場由佳

取材対象者の想いを伝えるWebライター

証券会社勤務を経て、印刷会社にてグラフィックデザインを学ぶ。キャリアップを目指した広告代理店では、企画・デザイン・ライティング・ディレクション業務などを幅広く手がける。出産を機にフリーライターとして活動をスタート。医療・グルメ・女性・スクール系など幅広いジャンルのWebサイトで記事を執筆し店舗取材を多数経験。取材時に寄せられる労務問題に対応する中で知識を深め、読みやすく・分かりやすい文章で発信中。