変則労働時間制とは何か? メリット・デメリットや導入フローを解説
2022-10-17
大後 ひろ子
C-OLING代表 ブランディングコンサルタント
労務雇用管理
毎月月末になると残業が続く、集客が見込める長期休暇中の労働力が足りない! そんなお悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。業務に余裕があるときは仕事を早めに終わらせて、忙しい時期の残業時間と相殺できたら…そんなメリハリのある働き方を実現するのが変則労働時間制です。こちらの記事では、変則労働時間制にまつわる基本的な知識や導入時のチェックポイントなどについて解説します。正しく運用すれば会社にも従業員にもメリットのある制度ですから、ぜひ制度の内容を確認してみてください。
そもそも、変則労働時間制とは?
変則労働時間制は、時期によって異なる業務量に応じて労働時間をフレキシブルに変えられる制度です。変則労働時間制では労働時間を1日単位で決めるのではなく、週・月・年単位で労働時間を設定します。
たとえば、閑散期といわれる期間には1日の労働時間を短くし、繁忙期には1日の労働時間を長くして集中して仕事を行います。これにより、全体の労働時間を縮小することができ、残業代の抑制・軽減につながります。
変則労働時間制【1週間単位の場合】
1週間のうち「○曜日が特に忙しい」などの業務の偏りがある場合は、1週間単位の変則労働時間制が適しています。対象となる業種は、飲食・旅館・小売業などのサービス業で、従業員数は30人未満です。
- 1日の労働時間:10時間以内
- 1週間の労働時間:40時間以内
上記2つの条件を満たせば、1日の労働時間を週単位で調整できます。この場合、遅くとも業務にあたる前の週までには従業員に向けて各曜日の労働時間を知らせる必要があります。
残業時間の考え方
1日の所定労働時間が8時間を超えた場合
所定労働時間が8時間を超えた日があった場合は、8時間を超えて働いたすべての時間が残業時間となります。
1週間を通して考える場合
残業時間を1週間単位で見るときは、1週間の労働時間の合計が40時間(法定労働時間)を超えた場合が対象となります。
変則労働時間制【月単位の場合】
1ヶ月のうち「月初めが特に忙しい」などの業務の偏りがある場合は、月単位の変則労働時間制が適しています。主に請求書の処理などに対応する経理部などが対応になるでしょう。
- ひと月の暦の日数を基に設定した法定労働時間の範囲内
- 一定の期間における平均労働時間が40時間/週以内
上記2つの条件を満たせば、月ごとの労働時間を自由に調整できます。
※法定労働時間の特例が適用される業種(商店・理容業など)では、1週間の労働時間の上限が44時間となります。
残業時間の考え方
1日の所定労働時間が8時間を超えた場合
所定労働時間が8時間を超えた日があった場合は、8時間を超えて働いたすべての時間が残業時間となります。
1週間の所定労働時間が40時間(44時間)を超えた場合
1週間の所定労働時間が40時間(44時間)を超えている週について、所定労働時間を超えて働いた時間が残業時間となります。
1ヶ月を通して考える場合
残業時間を1ヶ月単位で見るときは、ひと月の法定労働時間を超えて働いた時間が残業時間となります。
変則労働時間制【年単位の場合】
GW・夏休み・年末年始などのシーズンによって業務量に変化がある場合には、年単位の変則労働時間制が適しています。ただし、導入にはさまざまな条件をクリアする必要があります。
残業時間の考え方
1日の所定労働時間が8時間を超えた場合
所定労働時間が8時間を超えた日があった場合は、8時間を超えて働いたすべての時間が残業時間となります。
1週間の所定労働時間が40時間を超えた場合
1週間の所定労働時間が40時間を超えている週について、所定労働時間を超えて働いた時間が残業時間となります。
1年を通して考える場合
残業時間を1年単位で見るときは、期間全体の法定労働時間を超えて働いた時間が残業時間となります。うるう年では2085.7時間、そのほかの年は2091.4時間を超えた分が残業時間です。
変則労働時間制のメリット
会社側の一番のメリットは、こなすべき業務の量に応じて労働力を調整できる点です。変則労働時間制を導入することにより、閑散期の労働時間を短く・繁忙期の労働時間を長くすることが可能です。会社にとっては残業代の節約、従業員にとっては残業時間の軽減が期待でき、従業員の健康維持・増進、満足度アップにもつながります。
変則労働時間制のデメリット
変則労働時間制を導入するにあたっては、以下のようにさまざまな手続きが必要になります。
- 労働時間を効率的に分配する
- 労使協定を締結する
- 就業規則を整備する など
導入までの準備に時間や手間がかかるほか、導入後には制度を適切に運用できているかどうかをチェックする必要があります。
<h2>変則労働時間制の導入フロー
変則労働時間制の導入までには、大きく分けて5つのステップがあります。
1)勤務実績の調査
変則労働時間制で大事になるのは、いかに効率的に労働時間を分配するかです。まずは、従業員それぞれの勤務実績をチェックして、残業が多い時期・残業がほとんどない時期を確認しましょう。
2)枠組みの決定
(1)で業務量の波を確認したら、次に対象者を誰にするか/実施する期間(1週・1月・1年)/
1日の所定労働時間などを決めておきます。
3)就業規則の見直し・整備
変則労働時間制の導入は、従業員の働き方に変化をもたらします。そのため、導入時には就業規則の中の労働時間・対象期間などの内容を変更する必要があります。また、対象期間に合わせて労使協定(または就業規則)を用意し、労働基準監督署に届け出をします。
4)制度の周知・導入
労働基準監督署への届け出を終えると、変則労働時間制の導入が正式に認められます。会社は従業員に対して十分な説明を行い、制度の内容や目的をきちんと理解してもらうよう努めます。
5)運用開始
変則労働時間制は、導入してからが本当のスタートです。事前に決めた制度の枠組みがきちんと守られているか、適切に運用されているかどうかを定期的にチェックすることが大事です。変則労働時間制を導入したからといって、残業代がゼロになるわけではありません。残業代を間違えることがないよう、残業時間の計算は慎重かつ丁寧に行いましょう。
変則労働時間制を正しく理解し、理想のワークライフバランスを実現しよう!
曜日ごと・季節ごとに異なる業務量に対応し、メリハリのある働き方を実現できるのが変則労働時間制のメリットです。会社にとっては残業代の削減、従業員にとってはプライベートの充実が期待できる制度です。とはいえ、労使双方が満足のいく制度となるかどうかは、導入後の運用にかかっています。制度の枠組みや残業時間の算出方法をよく理解し、適切な運用を心がけましょう。