注目の評価制度「360度評価」。メリット・デメリット、評価項目などを紹介
2022-10-18
大後 ひろ子
C-OLING代表 ブランディングコンサルタント
採用新卒採用
評価制度「360度評価」とは
「360度評価」とは、仕事上で関わり合いを持つさまざまな関係者が、一人の評価対象の社員に対して評価をする今注目の評価制度です。
従来行われてきた上司が部下の評価を行う制度とは異なり、同僚も評価を行うのが特徴です。
昨今、多くの企業が注目し、導入している「360度評価」について、そのメリット・デメリット、評価項目の事例、運用するための注意点などを紹介しましょう。
「360度評価」が取り入れられる理由
「360度評価」では評価対象者を取り巻く多くの関係者から評価されるため、公平感もあり、客観的な評価であることから取り入れられています。
また、評価対象者も納得しやすく、人材育成や評価対象者のモチベーションアップなどにも役立つことから「360度評価制度」の導入に一役買っています。
「360度評価」のメリット・デメリット紹介
導入企業が増えている「360度評価」ですが、メリットとデメリットもあります。導入の是非を検討している企業は、メリット、デメリットを抑えたうえで検討しましょう。
「360度評価」のメリット
「360度評価」のメリットを5つピックアップしましょう。
客観性のある評価
さまざまな方面の関係者視点による評価のため、偏った主観に影響を受けることなく、公平で客観的な評価を得ることができるでしょう。
評価への納得感
さまざまな関係者が同じ評価を評価対象者に下した場合、評価への信頼性が高まります。
評価の客観性が担保されることから、対象者も納得して受け入れることができるでしょう。
自身の改善点に自ら気付くことができる
「360度評価」では自己評価と多くの関係者からの評価を比較することができるため、自分の行動を振り返り、業務の改善へと結びつけることができます。
自分の長所・短所の把握ができる
多くの関係者からの評価を比較することによって、評価対象者は自身の長所・短所といった特性を客観的に把握することができます。
意識を持って行動することができる
「360度評価」は上司だけでなく、自分を取り巻く多くの関係者から評価されるため、評価対象者は常に関係者に見られ、評価されている状態になります。
そのため、意識的に行動規範を守ることへとつながります。
「360度評価」のデメリット
「360度評価」のデメリットを5つピックアップしましょう。
評価者の主観が評価に影響する
評価に慣れていない社員が評価することにより、評価基準があいまいになり、評価の内容にばらつきが出る可能性があります。
また、評価対象者と評価者の関係性や、評価対象者の性格によっても評価がばらつくことがあるでしょう。
評価を気にして指導や教育が中途半端になる
低評価をつけられないように、関係者への指導や注意、教育などを適切に行えなくなる可能性もあります。
社員同士の馴れ合い
評価者となる同僚や同期とはコミュニケーションが取りやすいため、お互いが評価に関する駆け引きや取引を行う可能性も否めません。
- 高評価してくれれば、自分も高い評価をつける
- 低評価をつけられた仕返しに相手にも低評価をつける
- 高評価をつけてくれと頼まれた
また、嫉妬や足の引っ張り合いなど、ネガティブな感情や思惑がこもった評価がつけられる可能性もあります。
社員間の不信感
社員同士が互いに評価しあうことで、周囲の人間に対して不信感が生まれてしまう可能性もあります。
手間と時間の負担
上司のみだった評価業務をさまざまな関係者が行うようになると、評価にかかる手間と時間が増加します。特に本来であれば評価者ではなかった社員にとっては、通常業務に支障をきたす可能性もあります。
「360度評価」の評価項目事例
次に「360度評価」の評価項目について参考事例を挙げてみましょう。
一般社員の場合
一般社員の評価の中心となる項目は「業務スキルと姿勢」です。
仕事の結果よりもプロセス重視での評価を行うことが大切です。
態度・印象
仕事に対する姿勢や部署での態度
主体性
自分で判断し、考えて行動することができるか
課題解決能力
課題への解決に向け、最善の方法を考えて行動しているか
業務遂行能力
顧客や組織、社会への利益を意識して業務に取り組んでいるか
協調性
仲間と良好なコミュニケーションをとり、率先してサポートを行っているか
管理職やリーダー社員の場合
管理職やリーダー社員の評価の中心となる項目は「マネジメント能力」です。
一般社員向けの評価項目にプラスし、以下のような項目も掲げましょう。
リーダーシップ
課題思考力、業務遂行力、目標達成志向、判断力
組織作り
組織内でのコミュニケーション、組織の動機付け
人材の育成
部下に対する適切な目標設定、部下へのサポート、部下への公正な評価
自己啓発
自ら成長し、組織の手本となる知識や技術を培う努力
「360度評価」を運用するための注意点
「360度評価」運用の際には、社員全員に対して評価研修を行い、
- 運用の目的
- 「360度評価」を運用することの意義
- 評価の基準
などを明確にし、社員に評価スキルをつけることが必要です。
また、社内の人間関係も配慮し、「評価社員の匿名性を保つ」などの対策や運用ルールも必要となるでしょう。
評価後は評価対象者向けに丁寧なフィードバックを行い、次の行動につなげられるようなフォロー体制を整えましょう。
関係者からの評価は、評価対象社員のモチベーションの向上にも役立ちます。
周囲が見ていてくれた自分の良さ、改善点に気づくことで、今後の業務への取り組み方にも期待できるでしょう。
「360度評価」の運用で組織を活性化
「360度評価」は、もともとはアメリカの企業などで能力開発向けに運用されていたものでしたが、現在では大手企業を中心にさまざまな企業で導入されています。
それは
- 評価制度の公平性
- 人材育成
が認められ、評価を得たからです。
「360度評価」をうまく運用することで、社員一人ひとりを公平に評価し、社員の満足度向上や、組織の改革、人材育成へと結び付けていきたいものです。
「360度評価」導入の際には、この制度のメリット・デメリットをしっかりと理解し、組織の活性化を目指して運用していきましょう。