労働生産性とは?適切な計算方法と組織の生産性を高める実践方法を解説

2022-11-21

大後 ひろ子

C-OLING代表 ブランディングコンサルタント

組織組織開発

労働生産性とは「労働者一人当たりが組み出す成果」を指します。「働き方改革」が大企業では2019年4月、中小企業では2020年4月から実施され、企業では今まで以上に少ない労働量で多くの生産成果を得ることが求められています。

今回の記事では、知っているようで知らない労働生産性の計算方法や、労働生産性を向上させるための取り組みについて解説します。

労働生産性とは

労働生産性とは「労働の成果(産出)」を「労働量(投入量)」で割った「労働者一人当たりが組み出す成果」を指します。自社の労働生産性が的確なものなのかを知るために、まずは 労働生産性の基本的な意味や労働生産性が高い企業の特徴について解説します。

生産性の定義

生産性とは、公益財団法人日本生産性本部から「生産諸要素の有効利用の度合いである」と定義されています。また、基本的な生産性の基本の計算式は「産出(output)÷投入(input)」となります。

「投入」
モノを作り出すための人的コストである「労働力」と、土地や設備・原料などの「資本」

「産出」
投入によって生まれた物や売上

この投入に対して、どれだけの産出を生み出すことができたかの割合を「生産性」と呼びます。

2つの労働生産性

労働生産性には主に下記の2つの種類があります。

「物的労働生産性」
物的労働生産性は、労働生産性のうち、商品の個数や重量を成果物として考えるものを言います。「産出」の対象を「生産量」「販売金額」としたものを指します。

「付加価値労働生産性」
付加価値労働生産性における「付加価値」とは、粗利と同じ意味を指します。一人あたりの労働に対して、どのくらいの粗利(付加価値)を出したかを表したものです。

例えば、1つ作るのに1000円の原価がかかる商品を、2000円で売ることができた場合、差額の1000円が粗利(付加価値)となります。

労働生産性が高い企業の特徴

マサチューセッツ工科大学の研究によって高い生産性を持つ組織の特徴が明らかになりました。

  1. 社会的感受性が強いメンバーが組織にいる
  2. 組織の積極性に格差がない

社会的感受性とは、集団の中において他人の感情や要望を理解する能力を指します。つまりこの社会的感受性が高い人物をリーダーにすることでチームの課題にいち早く気づくことができ円滑に業務を行うことにつながります。そして組織の積極性に格差がないことは、固定のメンバーに責任や仕事が集中しないことで、業務が滞ることなくスムーズに進むことにつながります。

しかし、日本生産性本部の発表によると、2015年時点のデータでは日本の労働生産性は、OECD加盟35カ国中20位。G7の中で最下位です。驚くべきことに1970年代以来、先進国ではずっと最下位となっています。 
 ※日本生産性本部 労働生産性の国際比較:https://www.jpc-net.jp/intl_comparison/ 
このように、日本企業における労働生産性の見直しの必要は急務であると言えます。

労働生産性の計算式
 

 

物的労働生産性と付加価値労働生産性の計算式について解説します。

物的労働生産性の計算式

物的労働生産性の計算では「産出」の対象を「生産量」「販売金額」とし、商品の大きさや重さ、個数などが該当します。
「投入」に対して「産出」の割合が大きいほど、生産性が高いと言うことになります。

物的労働生産性=生産量÷労働者数(もしくは労働者数×労働時間) 

付加価値労働生産性の計算式

付加価値労働生産性の計算式では、一人あたりの労働に対してどれくらいの粗利(付加価値)が出たのかを割り出します。

付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費
付加価値労働生産性=付加価値額÷労働者数(もしくは労働者数×労働時間) 

労働生産性の向上によるメリット 

労働生産性の向上によって企業が得られるメリットについて解説します。

離職率の低下

厚生労働省の調査によると、離職の主な原因は職場の労働環境によるものが大半を占めています。深夜残業だけでなく、日中の長時間に及ぶ労働や休日出勤などによって、メンタルヘルスの悪化や体調不良を引き起こし離職につながるケースが多いのです。離職率を低下させるためにもまずは職場の労働環境を見直す事が重要です。

職場環境の改善

労働生産性を高めるためには心身ともに健康であることが重要です。組織メンバー間でのコミュニケーション活性化や上司との1on1ミーティングなどの施策を意識的に行い、 個人が抱える課題や悩みを共有することが有効です。1人で抱え込まないことは、具体的な解決策を生み出すことにつながり、集中力が向上して労働生産性の向上につながります。

経済産業省の経営力向上計画認定による法的優遇措置

生産性向上の取り組みが経済産業省に認められ、経営力向上計画認定を受けることができれば、下記のような法的優遇措置を受けることができます。

これらの優遇措置を受けることによって、さらなる労働生産性向上の施策導入のために経営資源を有効に活用することもできます。

労働関係の補助金や助成金の割増

厚生労働省が定める生産性向上の条件を満たすことで、補助金や助成金を活用することもできます。


参照
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137393.html

他にも地方自治体が独自に行っている制度もあるので確認してみましょう。

4. 労働生産性を向上させるための取り組み 
 

 

企業や組織で労働生産性を向上させるための取り組みについて解説します。

労働生産性の可視化

労働生産性を向上させるためには、業務を客観的に把握することが重要です。そのためにも業務を数値化し可視化することが有効になります。人員不足の部門の発見や、必要のない設備投資などから、経営資源の無理・ムラ・無駄を見直して必要な対策を行います。 こうすることで組織は本来のポテンシャルを取り戻し、労働生産性を改善することができます。

自社の強みに集中した人材配置 

1997年、アップルは16億ドル(約1,600億円)の損失を計上していたApple社に、一時は社を追放されたスティーブ・ジョブズ氏が復帰してまず行ったことは、経営資源を集中させることでした。当時使っていたプリンタ、サーバ、モニタ、デジタルカメラ、アプリケーションソフトウェア、各種アクセサリなどのコンピュータ製品をバッサリ捨てたのです。主力のコンピュータ事業に注力することによって、1998年に発売されたiMacの成功を納めることにつながりました。

つまり自社の強みである領域や中核業務(コア業務)を見極めて、そこに人・モノ・カネといった経営資源を集中的に投入します。そのためにも自社のコア業務が何であるか客観的な見直しを行うことが重要です。

適切なマネジメントの実施

労働生産性を向上させるためには個々の従業員のメンタルケアも重要です。 そのためにも従業員が成長する仕組みを組織に設けることが必要です。 上司との1on1ミーティングフィードバックによる前向きな現状の把握やスキルに合わせた研修等を行う、本人の能力やステージごとの人材育成が必須です。

ITツールの活用 

ITツールの導入により業務の効率化を図ることも重要です。 ITツールの導入によって今まで時間のかかっていたデータの分析や、移動を要したリモート環境での業務などの時間を削減し、有効に使うことができます。また業務の共有やコミュニケーションの活性化にも有効です。 そのためには組織や業務の特徴に合わせたITツールを選ぶことが重要です。

まとめ

労働生産性向上のための施策は多岐に渡ります。 施策を導入するにあたって、まずは自社の分析から始めましょう。

自社の業態や方向性、従業員の能力など 分析し、自社に合うものを選ぶことが効果的に労働生産性の向上につながります。また生産性向上のための補助金や助成金制度を利用することも検討してみましょう。

従業員の能力が向上すると、仕事への意欲も高まるという調査結果もあります。今回の記事を参考に業務における労働生産性向上を通して、従業員エンゲージメントを高める取り組みを始めてみましょう。
 

WRITER

大後 裕子

C-OLING代表

生活用品メーカーで10年間企画職に従事し、企画立ち上げから海外工場との商談、販促まで商品開発のゼロから一貫して行い、多くの商品をブランディングし、リリース。 8年販売され続けるヒット商品を始め、開発商品点数累計約1,200点、約1,700店舗へ導入。ブランディングを主軸とした、経営コンサルティング、 社内教育の3つの事業を通して、多くの人の生活に豊かさを提供ができる企業を社会に増やしたいと考えています。