人事制度の基礎知識!人事に関わる「等級・評価・報酬」制度を説明

2022-11-14

大後 ひろ子

C-OLING代表 ブランディングコンサルタント

採用その他

人事制度とは

人事制度とは、従業員の人事管理に関連する制度やそのしくみ全般を総称として「人事制度」といわれます。
しかし、近年では従業員の処遇を決定する基本的なしくみに絞り込み、「人事制度」という言葉が使われているようです。
従業員の処遇に関わる制度は、

の3つの制度から成り立っています。

こちらのページでは、人事制度の基礎知識として人事制度のメリットと、人事制度の3本柱である3つの制度について詳しく見ていきましょう。

人事制度のメリット

人事制度のメリットは、主に以下の3つです。

従業員のモチベーションアップ

等級ごと、役職ごとに求められる職務内容や数字が明確化されれば、従業員は自分が取るべき行動がわかり、キャリアアップを目指すことにもつながるでしょう。

従業員からの信頼を得る

客観的で透明性の高い人事制度は公平性が高く、従業員からの不満をなくし、企業に対する信頼を得ることに役立つでしょう。

生産性の向上

しっかりとした人事制度があれば、従業員一人ひとりが業務に対しても積極的に取り組むことができるでしょう。
結果として、会社の生産性の向上にもつながっていきます。

人事制度の3本柱

等級制度

「等級制度」は、従業員の能力、職務、役割に従って序列化し、従業員の社内での位置付けや給与を決定する制度のことです。
社内のキャリアアップの指標になったり、「評価制度」「報酬制度」の設計に役立ったりするなど、「等級制度」は人事制度の主軸であるといっても良いでしょう。

次に、等級を決定するにあたり、代表的な制度である

の概要についてまとめましょう。

職能資格制度

職能資格制度は、従業員が仕事をするために必要な職務遂行能力に応じて等級を決める制度です。
人を基準にしたこの制度はランクに応じて賃金(職能給)が決まるため、日本企業固有の制度ともいわれています。

職務等級制度

職務等級制度は、職務1つひとつの中身、難易度を明確にし、基準に対する結果を点数化して評価を決定する等級制度です。
職務ごとに評価基準が明確で具体的な定義があるため、公平な評価を行うことができます。

役割等級制度

役割等級制度は特に近年、導入が進んでいる制度です。
この制度は「役職×職務=役割」と考え、従業員の「役割」に応じて等級を設定します。

評価制度

評価制度は一定期間の従業員の行動や成果を評価し、評価の結果を等級や報酬に反映する制度です。

を従業員に明示し、従業員の行動の方向付けにつなげます。
評価制度は企業によってさまざまですが、ここでは代表的な評価制度をピックアップし、ご紹介しましょう。

能力評価

能力評価は、従業員が仕事をする過程で発揮した能力を評価の対象としています。
具体的には、職務を遂行するうえで必要な知識や技能のほか、判断力、企画力、折衝能力なども評価の対象になります。

役割評価

役割評価では、従業員の職務内容をベースにした評価を行います。従業員の役割の大きさに応じ、給与も高く設定されます。
「役割」の定義については、従業員の役職ごとに求められる「成果」や「会社への貢献度」とする場合が多くみられます。

コンピテンシー(行動特性)評価

コンピテンシー評価は、高い業績を残している従業員の職務行動を分析し、共通する行動特性を基準として、評価基準を作成し、従業員を評価します。
高業績者の行動特性を基準にすることで、会社組織全体のレベルアップが期待できます。

報酬制度

「報酬制度」は、給与や賞与などの報酬を決めるためのしくみです。
一般的に従業員の給与は等級ごとのレンジ(上限と下限)内で定められています。
そして、評価によってレンジ内で昇給、賞与などが決まるようになっています。
つまり「等級制度」、「評価制度」とリンクしている制度であり、等級と評価に基づいて報酬が決定されます。

次に、報酬制度の中でも代表的な要素をご紹介しましょう。

基本給

基本給は、毎月固定で従業員に支払われる給与のことです。
年齢給の部分と、仕事給の部分で構成されています。

手当

手当は基本給とは別に、職務の特殊性や扶養家族、勤務地などの状況に応じて従業員に支払われる給与のことです。
手当には、さまざまな種類があり、会社が独自に定めた手当もあります。
代表的なものをいくつかピックアップしましょう。

役職手当・職位手当

役職・職位に対し、責任の大きさに応じて支給する手当一定額を支給する手当

家族手当

扶養家族がいる従業員に対し、基本給とは別にその生活費に配慮して支給する手当

住宅手当

従業員が本人名義の住宅に住んでいる際に、住宅ローンや家賃の一部を補助する目的で支給する手当

単身手当・別居手当  

単身赴任や転勤などにより、家族と別居生活を強いられる従業員に支給する手当

地域手当(都市手当、寒冷地手当など)

勤務地が複数ある会社において、勤務する地域による生活費の差額を補てんするために支給する手当

賞与

労働基準法では規定されていないため、支払うかどうかは企業の自由です。
しかし、日本の多くの企業が年2~3回程度、会社の業績に応じて支給しています。

退職金

従業員の会社退職に際し、支給する報酬制度です。
近年では、終身雇用の慣行が事実上なくなりつつあるため、退職金制度を廃止する企業も増えているようです。

人事制度を見直すチャンス
 

 

ご紹介した「等級・評価・報酬」を軸にした人事制度は、多くの企業で採用されているものです。
個人の働き方が多様化し、業務の細分化、高い専門性が求められる現在、企業は従業員一人ひとりのパフォーマンスを最大限に引き出すためにも適切な人事制度の設定が重要でしょう。
人事制度は従業員の働き方や昇格、昇給など、さまざまなところに影響を与えます。
現在の人事制度は自社に適しているのか、ぜひ、この機会に考えてみてはいかがでしょうか。
 

WRITER

麻生さきこ

ライター

キャリアアドバイザーとして求職者のカウンセリングや面接対策、就職セミナーなどに携わり、求職者と企業の双方の立場から就職支援、採用支援を行った経験あり。 個人事業主として開業後は、人材分野のほか、学習・教育分野、医療分野、サブカルチャー関連など幅広いジャンルでの執筆活動、インタビュー取材を多数行う。WEB媒体はもとより、広告、新聞、雑誌など紙面での記事執筆経験あり。硬軟使い分けたコラム、エッセイも得意。