労務管理とは? 労務管理にまつわる基礎知識と効率化のアイデア
2022-10-20
大後 ひろ子
C-OLING代表 ブランディングコンサルタント
労務勤務管理
従業員を1人でも雇用すると、労災保険をはじめとした社会保険への加入義務があったり、手続きを怠った場合に罰則規定があったりします。労働環境や労働条件の管理は会社が行う重要な業務ですが、その内容は多岐にわたり「何から始めたらよいかわからない」という人も少なくないでしょう。こちらの記事では、労務管理の基本的な知識や業務効率化に向けたアプローチをわかりやすく解説します。会社として必ず用意しなければならない書類もありますので、会社として適切に管理できているかどうか確認してみてください。
そもそも、労務管理とは?
会社のために働く従業員たちの労働環境・労働条件・福利厚生などを管理する業務を労務管理といいます。具体的な内容としては、毎月の給与計算や毎日の勤怠管理、社会保険関係の手続きなどがあります。
労務管理の大きな目的は、従業員が安心して働ける環境を整備することだといえるでしょう。会社の規模が大きい・小さいにかかわらず、労務管理はすべての会社にとって重要な業務です。
労務管理では何を管理する?
労務管理が必要になるのは、会社が従業員と労働契約を結んで雇用関係が発生したときです。会社は従業員を雇用するごとに労働環境や労働条件などを定義し、契約内容の維持に努めなければなりません。労務管理は基本的に、以下の4つの業務に分けられます。
労働期間
従業員の雇用開始日や雇用期間にまつわる条件を決めます。雇用期間に定めを設ける場合には、契約内容の延長・更新の可否や退職規定などに十分注意する必要があります。
労働時間
会社として定める1日の労働時間(所定労働時間)のほか、休憩時間や休日にまつわる条件を決めます。また、時間外労働(残業)や休日出勤などについても取り決めをしておきます。
賃金
労働の対価として支払われる給与・賞与のほか、各種手当について規定します。また、給与の支払い日や締め日などもあらかじめ決めておきます。
業務内容
従業員が働く環境や所属する部署における役割など、従業員が従事する業務にまつわる具体的な内容を取り決めます。
労務管理のベースとなる法定三帳簿
法定三帳簿とは「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の3つの帳簿を指します。法定三帳簿は3年間の保管義務があり、どれも労務管理においてとても重要な帳簿です。雇用保険をはじめとした社会保険の手続きをする際に必要になることもありますから、適切な管理を心がけてください。
1)労働者名簿
労働者名簿は、従業員の氏名・生年月日・性別・住所などさまざまな情報をまとめた帳簿です。従業員それぞれが従事する業務の内容、部署の異動などがあればその履歴、退職した場合にはその理由と日付も記載します。
2)賃金台帳
賃金台帳は、それぞれの従業員に対する賃金の支払い状況をまとめた帳簿です。従業員の氏名や性別のほかに基本給や各種手当の金額、就業日数・就業時間・残業時間などを記載します。
3)出勤簿
出勤簿は、従業員の出勤状況を記録した帳簿です。たとえば、毎日の出退勤時に従業員がタイムカードで記録したものなどを出勤簿として管理します。出勤簿があれば就業日数・就業時間・残業時間などの確認も行えます。
労務管理は誰の役割?
規模の小さな会社では、労務管理や人事管理を一括で管理しているケースも少なくないでしょう。しかし「労務管理」「人事管理」「経理」「総務」など担当業務を分けることができれば、従業員の業務負担を軽減できます。それぞれどの部署が担当するべきなのか、確認してみましょう。
労務管理
従業員の労働環境・労働条件などを管理します。すべての従業員を対象にした業務です。
担当部署)労務部 など
人事管理
人材の採用・育成・評価などを行います。従業員一人ひとりを対象にした業務です。
担当部署)人事部 など
経理
給与計算のほか記帳業務や出納業務を担います。人ではなくお金の流れを管理する業務です。
担当部署)経理部 など
総務
会社の受付業務や福利厚生、備品の整備などを担います。会社全体にかかわる業務です。
担当部署)総務部 など
労務管理に資格は必要?
労務管理を行う人の能力を認定する資格に「労務管理士」があります。たとえ資格を取らない場合でも、労務管理には一定の知識が求められます。
労務管理に求められるスキル
労務管理を行う際には、労働法規にまつわる知識が必要になります。労働法規とは、最低限の労働条件を定めた「労働基準法」、労働者の安全と衛生に関する基準を定めた「労働安全法」などを指します。こうした法律は時代に即した内容に改正されることが多いため、常に情報をアップデートし柔軟に対応する姿勢が求められます。
労務管理に求められる資格
労務管理を行ううえで役立つのが「労務管理士」の資格です。これは、従業員を採用する場面から退職時の手続きまで、労務管理にまつわる業務を行う能力を認定するものです。労務管理士は民間資格であり、資格取得により自身のキャリアアップを目指せます。
労務管理システムで業務を効率化
労務管理にまつわる業務は多岐にわたり、中には労務管理と人材管理を切り離せないケースなどもあります。具体的には、以下のような業務が考えられます。
- 労使関係管理
- 就業規則管理
- 安全衛生管理
- 福利厚生管理
- 勤怠管理(労働時間管理)
- 給与計算
- 業務環境維持・改善 など
業務効率化3つのアイデア
膨大かつ煩雑な業務を効率的に行うことができれば、会社全体の生産性向上が期待できます。紙で管理していたものをデータベース化したり、業務を委託したりすることで、従業員の負担を軽減できるでしょう。
1)データベース化(ペーパーレス化)
これまで紙の書類で管理していた情報をデータベース化すれば、労務管理をはじめとした業務全体をスリム化できます。あくまでもセキュリティ対策を万全にすることが前提になりますが、紙の書類をすべてデータベース化できれば、情報の管理・更新も楽に行えます。
2)ソフトやクラウドシステムの活用
従業員の勤怠管理や給与計算をする際に「表計算ソフトを使っている」という人も多いでしょう。しかし、多様な働き方への対応や従業員数の増加などを考慮すると、やはり労務管理ソフト(システム)のほうが優れているといえます。労務管理ソフト(システム)には、初期費用を抑えられる「パッケージシステム」、自社にフィットするシステムを作れる「オーダーメイドシステム」が用意されています。
3)業務委託(アウトソーシング)
労務管理には労働法規に関する専門的な知識が求められる一方、どれだけ効率化しても会社に利益をもたらす業務とはなり得ません。そのため、労務管理を専門にする会社に業務を委託するというのも一つの考え方です。
労務管理は会社の必須業務。自社に合った管理方法を見つけよう!
労務管理の主な業務は、従業員の労働環境や労働条件を管理することです。すべての会社にとって重要な業務であるとともに、業務の範囲が多岐にわたるため、担当部署には大きな負担がかかります。しかし、これまで紙で管理していた情報をデータベース化したり、管理業務を外部に委託したりすることにより、業務の効率化を図ることが可能です。あなたの会社にはどのような管理方法が適しているのか、ぜひ確認してみてください。