内々定とは何か?内定との違い、取り消しの理由について解説

2022-10-24

大後 ひろ子

C-OLING代表 ブランディングコンサルタント

採用新卒採用

内々定とは

「内々定」とは、主に新卒採用で使われる用語で、内定前の「内定」という意味合いで使われている言葉です。
企業が非公式な内々定を出す理由は、新卒の採用活動においてさまざまなルールが定められている中で、優秀な人材をつなぎとめておきたいという考えがあるからです。

では、「内々定」と「内定」は何が違うのでしょうか。
また、企業側が内々定を取り消すことはできるのでしょうか。

人事の担当者ならば、しっかりとおさえておきたい「内々定」と「内定」について解説していきましょう。

内々定と内定の違い

「内々定」と「内定」は具体的には何がどう違うのでしょう。

多くの企業が10月1日に内定式を開きます。
このことから10月1日以降が「内定」、内定式前の内定状態に対して「内々定」という表現が使われていますが、両者の決定的な違いは、「労働契約の成立」があるかどうかになります。

内々定も内定も、企業側が求職者に対して採用の意思を示すものですが、内々定は労働契約が成立していないため、法的な拘束力はありません。
厳密にいえば、内々定は「労働契約が締結される前段階」であり、この時点では、求職者と企業の間では正式な労働契約が結ばれていません。
つまり、双方間に拘束関係が発生しないと考えられます。

一方、法的な拘束力が発生する内定とは、労働契約書を交わす正式な労働契約のことです。
正式名称は「始期付解約権留保付労働契約」といい、「始期付」は、新卒で就職する場合、4月1日からの就労が予定されているという意味になります。
「解約権留保付」は、就業までにやむを得ない事情が起きた場合であれば、この契約を解約できるという意味です。
つまり、内定は正式な労働契約が成立していると見なされており、企業側が内定取り消しなどを行うことは、解雇に相当するのです。

このことから、企業側は特別な理由がない限り内定を取り消せませんが、内々定であれば取り消すことが可能なのです。

企業が内々定を出すメリット

取り消すことができる内々定を、企業側がわざわざ出すのはなぜでしょうか?
メリットはあるのでしょうか?

企業側は採用したいと考えた求職者(学生)に対し、早めに内々定を出すことで本人の反応を見ることができます。
企業側は採用の意思を受けた際の本人の反応を見ることで、入社の承諾が得られるかどうか、内定辞退が考えられるかどうかなどを判断できます。
また、早々に内々定を出すことで、入社までのフォロー体制を整えることもできます。
企業側からすれば、欲しい人材を内定前から確保しておけるメリットがあるのです。

内々定や内定が取り消されるケース

内々定や内定は、基本的に求職者側からはいつでも取り消すことが可能です。
一方、企業側からは正当な理由がなければ、取り消すことはできません。
それは法的な拘束力のない内々定であっても、拘束力のある内定であっても同様です。

前述したように、企業による内定取消は「解雇」に当たります。
企業側が一方的な理由により内定を取り消せば、求職者側から訴訟を起こされてしまう可能性があります。
また内々定も一方的な取り消しは可能ではあるものの、企業側の求職者への対応は大学の就職指導部やキャリアアセンターに伝わったり、また昨今ではSNSなどで拡散されたりする可能性も秘めており、企業側にはイメージダウンというマイナス面しかありません。

では、どのような理由であれば、内定取り消しが可能なのかを紹介していきましょう。

内定者側が原因の場合

内定者が入社日までに学校を卒業できない

新卒採用の場合、取り消し理由として最も多いのが、「学校を卒業できなかった」です。
内定を出しても、学校を卒業できなければ入社できません。
内定者が卒業できない理由はさまざまですが、

などが挙げられます。

内定通知には期限が設けられており、新卒採用の場合は基本的に卒業年の4月1日に入社が設定されています。
このため、卒業ができなかった場合は期限に間に合わず、取り消しとなるのです。
また、大学卒業を採用の条件にしている場合もあるため、卒業ができないから退学して入社に間に合わせるということも叶わないのです。

内定者の身体的・精神的な面での病気や怪我

内定者は自身の病気や怪我により、内定が取り消される場合があります。
ただし、大きな病気や怪我をしても入社までの完治が可能であったり、薬などで通常の業務には問題ないことが認められたりした場合は、取り消しの対象にはならないでしょう。
しかし、健康上の問題があったにも関わらず企業側に虚偽申告をし、後になって発覚した場合は内定取り消しの可能性も否めません。
内定者は企業に正直に報告し、企業側は内定者の状況を考慮したうえで、慎重に判断する必要があります。

内定者の犯罪行為

内定者が入社までの間に何らかの犯罪行為や刑事罰などを受けた場合、企業側は内定を取り消すことができます。
しかし、内定者が逮捕されたとしても、すぐに内定を取り消すというケースばかりではありません。
例えば不起訴になった場合、企業側が内定者の反省を認めれば取り消しを行わず、入社を了承する場合もあります。

企業側が原因の場合

企業の経営上の問題

企業側が、どうしても受け入れられないような場合にも内定を取り消すことができます。
例えば、

などが挙げられます。
企業側の理由による内定取り消しの場合には、客観的に見て内定取り消しの合理性があるかどうか、弁護士、社労士など、専門家に相談しながら判断する必要があるでしょう。

「内々定」と「内定」を理解する

「内々定」も「内定」も取り消さないこと、取り消すような事態にならないことが望ましいのはもちろんです。
しかし、入社まで何が起きるかわからないのもまた事実です。
その「もしも」が起きた時に求職者と揉めないためにも、企業側は「内々定」「内定」の法的な意味やその違いについてしっかりと理解しておきましょう。
 

WRITER

麻生さきこ

ライター

キャリアアドバイザーとして求職者のカウンセリングや面接対策、就職セミナーなどに携わり、求職者と企業の双方の立場から就職支援、採用支援を行った経験あり。 個人事業主として開業後は、人材分野のほか、学習・教育分野、医療分野、サブカルチャー関連など幅広いジャンルでの執筆活動、インタビュー取材を多数行う。WEB媒体はもとより、広告、新聞、雑誌など紙面での記事執筆経験あり。硬軟使い分けたコラム、エッセイも得意。