ダニングクルーガー効果とは?その意味と4つの原因、正しい対策方法!

2022-10-19

大後 ひろ子

C-OLING代表 ブランディングコンサルタント

組織人材育成・マネジメント

ダニングクルーガーとは、能力の低い人が実際の能力を正しく判断できず、自分を高く評価してしまう認知バイアスの一種です。一言で言うと「できないのに、できると思う」過大評価のことです。

今回の記事では、このイニングーガーの意味や陥ってしまう4つの原因と回避するための方法を解説します。

ダニングクルーガー効果とは

ビジネスにおいても、組織内で「能力の低い人が自他の能力を認識できずに、自分の方が優れている」と捉えるダニングクルーガー効果が起きているシーンがしばしば見受けられますが、まずはその意味と歴史について解説していきます。

ダニングクルーガー効果の意味

ダニング=クルーガー効果(Dunning-Kruger effect)とは、容姿や言動・能力などに対して経験・先入観・直感などが作用して、実際の評価と自己評価にズレが生じる認知バイアスの一種です。

※認知バイアスとは、認知心理学や社会心理学で用いられる用語で、自分の思い込みや周囲の環境などの要因により、合理的でない判断をしてしまう心理現象です。

ダニングクルーガー効果の歴史

心理学者のデイヴィッド・ダニング(David Dunning)とジャスティン・クルーガー(Justin Kruger)が「なぜ能力の低い人間ほど自身を素晴らしいと思い込むのか」というテーマを研究したことから命名されました。2000年にはイグノーベル賞の心理賞を受賞した有名な実験です。

ダニングとクルーガーの実験

大学の学生に対して、「ユーモア」「論理的思考」「英文法」の3種目のテストを実施し、自己評価を調べる検証を行いました。

その結果、実際の評価が高かった学生達ほど自身の評価が低く、実際の評価が低かった学生ほど自身を高く評価していました。

ダニングクルーガー効果が発生して起こる問題

ダニングクルーガー効果が発生すると「わかったつもり・できるつもり」になってしまうので、本人の成長の妨げになります。ここではダニングクルーガー効果によって起こる問題について確認していきましょう。

自身を過大評価してしまう

自身の能力を実際のもの以上に評価してしまうと、組織やグループの中でポジションを間違えて捉える原因になります。能力以上の仕事を受けてしまい本人のみならずチームに悪影響を与える可能性もあります。

さらに、実際の成果や数字を加味できずに、「自分はもっと評価されるべきだ!」と合理的な思考ができなくなってしまいます。

知識不足に陥ってしまう

能力が低い人ほど知るべき知識の全体を捉えることができず、自分の知識不足を認知できないことが多いのです。「自分の知識は足りている」という認識のズレが生じているため、勉強や運動、仕事においても、新しく吸収しようという必要性を感じられないのです。

逆に能力のある人は、「まだまだ知識不足だ」と評価を低くしているため、さらに知識を増やすことができるのです。

他者を適切に評価できなくなってしまう

自分の能力を正しく評価できないため、集団の中で「自分のポジションに納得できない」「自分は優れているのにこの評価は不当だ」と言うような、実際の評価と異なる認識をしてしまいます。これは部下に対して上司からだけではなく、上司が部下を正しく評価できない場合にも起こり得る可能性があります。

困難に対処できなくなってしまう

ダニングクルーガー効果が発生していると、大きな困難にも前向きに挑戦する傾向があります。しかし自身の能力を優秀で何でも解決できると思っているため、困難に直面した際に、実力が伴わず問題の解決が難航してしまうおそれがあります。

さらに「自分に乗り越える能力がない」と判明したときに、事実を認めることができず、適応できなくなってしまう可能性があるのです。

ダニングクルーガー効果が発生する4つの原因

ダニングクルーガー効果が発生するのは、メタ認知能力が不足していることが原因だと言われています。自分を客観的に評価・判断することができない4つの原因を解説します。

原因を把握できていない

ミスをした際に、原因は一つではなく、いくつかの要因を含んでいることが多いものです。この場合、自他の要因を分析して次回への改善につなげることが重要ですが、人間は何か問題が起こったとき、自分ではなく他社や外的環境に要因を求めがちです。

フィードバックを受けない

業務を進める上で、上司やチームメンバー、或いは部下からのフィードバックを受ける機会が少ない。またその機会を拒む状況が多いと、周囲の評価と自身の評価に差が生まれ、クルーガー効果に陥りやすい原因になるのです。また信頼関係が構築できておらず、正しいフィードバックを受けられないことも、ダニング=クルーガー効果に陥りやすい原因のひとつです。

他者の能力を正しく評価できていない

本来自己評価は、他人の能力を見て自分の能力を測るものです。しかし判断基準である他者への評価が偏っていると、自分の能力も正しく評価することができないのです。他者をみくびるような行為は、ダニング=クルーガー効果に陥りやすい原因のひとつです。

自分のコンフォートゾーンに止まっている

コーチングや心理学などで用いられるコンフォートゾーンとは、本人にとって安心でき、心理的に自身のコントロール下にあると感じられる領域を指しています。ダニングクルーガー効果が発生してしまうと、慣れ親しんだ環境や学問に対して、絶対的な自信を持っていながら成長をしようとしなくなるのです。

ダニングクルーガー効果を回避する方法

人の成長を阻む可能性のあるダニングクルーガー効果。では、回避するにはどうしたら良いかポイントを解説していきます。

①ダニングクルーガー効果の原因を知る

まず、ダニングクルーガー効果が発生してしまう原因は、「フィードバック不足」「自己評価の誤りと他責」「他人を正しく評価できない」の3つです。これらのどれが当てはまるか確認を行い、対処方法を実施します。

②フィードバックを積極的に受けられる環境をつくる

他者からフィードバックを受けられることで、自他の評価のバランスを取り戻すことにつながります。研修やコーチング、従業員サーベイなどから、意図的にフィードバックされる仕組みを作り、自身の現状の能力を知るきっかけを作りましょう。

③メタ認知(客観視)能力を養う

メタとは「より高次の」という言葉。認知とは、思考や知覚、行動のことを指します。そこからメタ認知能力とは、現在自分がしている行動や思考そのものを認知の対象として、自分自身を客観的に認識する能力をとよびます。

メタ認知能力を養うことで、自己評価の誤りと他責が起きることを防ぎ、他人を正しく評価できない問題を改善していくことにつながります。

ダニングクルーガー効果を利用する

デメリットや支障が多いように見受けられるダニングクルーガー効果ですが、1つだけメリットも存在するので解説します。

自信を持ってチャレンジできる

ダニンググルーガー効果は自己評価を高く捉えるため、「根拠なき自信」を生み出すことができます。その結果、未開拓のジャンルに飛び込んでいくことも可能なのです。

しかし、失敗に終わるケースも大いに考えられるので、チームや組織にリスクのある場合は、上司やマネージャーが役割の割り当てを検討することも必要です。

まとめ

今回はダニング=クルーガー効果の存在とその原因、ダニング=クルーガー効果を回避するための対策について考えてみました。  「能力不足で能力不足に気づかない」というのは仕方のないこと。まずはそういう傾向があることを知りましょう。
日本企業ではめったなことでは降格がなく、転職市場での客観的な評価を受けたことがない管理職が多いため、ダニングクルーガー効果に抗う方法である「自身の能力の欠如を認識する機会」が構造的に少なく、このような事象が発生しやすくなっています。

WRITER

大後 裕子

C-OLING代表

生活用品メーカーで10年間企画職に従事し、企画立ち上げから海外工場との商談、販促まで商品開発のゼロから一貫して行い、多くの商品をブランディングし、リリース。 8年販売され続けるヒット商品を始め、開発商品点数累計約1,200点、約1,700店舗へ導入。ブランディングを主軸とした、経営コンサルティング、 社内教育の3つの事業を通して、多くの人の生活に豊かさを提供ができる企業を社会に増やしたいと考えています。