C-OILING合同会社

INTERVIEW

代表者名

大後裕子

所在地

埼玉県戸田市新曽南3-6-1-1018

設立年

2020年

事業内容

  • コンサルティング業
  • 組織・人事コンサルティング

価格や技術面で海外勢に押されてかつての勢いを失いつつある日本の現状を憂い、“ものづくり大国”の再生を後押しするC-OILING。理念経営とブランディングの力によって、企業が抱えるさまざまな問題を解決に導いている。代表を務める大後氏は、大手生活用品メーカーにて1,200点以上の商品開発に携わってきた人物。「経営者の想いを知るために自らも経営者になった」と話す大後氏に、課題との向き合い方や今後の展望などを聞いた。

INTERVIEW

C-OILING合同会社代表大後裕子

私たちの「会社」BUSINESS

ブランディングとデザインを一貫して手がけ あらゆる経営課題を解決へと導く

御社の事業内容や設立までの経緯、この分野を選んだ理由をお聞かせください。

当社のメインとなる事業は、ブランディングとデザインです。ブランディングは会社の理念を構築したりコンセプト作りを行ったりする“インナーブランディング”と自社の強みを対外的に発信していく“アウターブランディング”とに分けられます。そのため当社の柱となっているのは大きく3つ、インナーブランディング・アウターブランディング・デザインになるでしょうか。まずは、会社の強みを再確認して商品作りに生かすとともにターゲット層を絞り込む。そして、商品の魅力をアピールする言葉やデザインを考え、広く発信していく。こうした一連の流れを全てお任せいただくことにより、会社の売り上げアップや社員のモチベーションアップに貢献しています。 私は大学卒業後、大手生活用品メーカーに就職して商品企画を担当していました。コンセプト作りやターゲットの絞り込みから始まり、カラーリングをはじめとしたアートディレクション、生産管理や販売ルートの確保までをトータルに担当していました。これまでに開発した商品は1,200点以上、店舗導入実績は1,700店以上、総額23億円にも上る商品を世に送り出したことになります。 勤務先の会社は自由な社風だったため楽しく仕事をしていたのですが、7年あまり走り続けているうちに体調を崩してしまいまして……。退職してあらためて自分自身を見つめ直したとき、私の武器は“ブランディング”にあると気付いたのです。そこからはもう転がるようにという感じで(笑)、物事が一気に進み独立に至りました。もっとも、最初は現在のような会社組織ではなくフリーのデザイナーとして活動をスタートしました。しかしデザイナーとして関われる業務にはどうしても限りがあり、ご依頼者のお悩みや会社が抱える根本的な問題まで解決して差し上げることはできません。そのためC-OILINGを立ち上げて、ブランディングからデザインまでトータルに対応できるようにしたのです。

この仕事や業界の魅力、やりがいなどをお聞かせください。

ブランディングを実施するとみなさんの心が晴れやかになり、会社の経営状態もよくなっていくことを実感しています。経営者が見違えるほど自信にあふれ、会社が大きく前進していく姿を目にすることは仕事をするうえでの大きな喜びになっています。 当社のクライアントは中小企業や農家さんなど幅広く、ほかにはない優れた技術を持ちながら、それを生かしきれないでいるケースが少なくありません。日々さまざまな悩みや課題をご相談いただきますが、どのような場合も最初に必ず行うのが“インナーブランディング”と呼ばれるものです。インナーブランディングで重要になるのは、経営者の想いを言語化していく作業です。ご自身の素直な気持ちや会社に対する想いを丁寧に拾い上げ、言葉としてまとめていくのです。 こうして会社の強みや進むべき方向が明らかになったら、次は“ペルソナ”を設定して商品開発を行う“アウターブランディング”へ進みます。ペルソナとはその商品をもっとも喜んでくれる“理想の客”ともいえるターゲットです。自社の強みを生かした商品を喜んでくれるのは誰か・商品を売るためにはどのようなアプローチが必要かといったことを明確にしたうえで “デザイン”の力によって商品を存分にアピールするのです。当社がブランディングをはじめとした一連の作業を手がけた商品の中には、想定をはるかに超えて6倍以上の売り上げになったケースもあったんですよ。

御社の強みについてお聞かせください。

ブランディングの手法を用いて会社が抱える問題を根本的に解決できること、経営者をはじめとしたスタッフの心身の健康に貢献できることが私たちの強みだと思います。当たり前のことかもしれませんがフリーのデザイナーだった頃は、商品パッケージなどを考えるデザインの段階から参加することがほとんどでした。ブランディングを川の上流とするなら、デザインは間近に海が迫る下流の部分です。たとえばこの時点でお客様が「腰が痛い」と訴えたとしても、私には湿布を貼ってあげることくらいしかできません。腰痛の原因が背骨にあるなら背骨の治療を優先するべきなのに、私はただ湿布を貼ることしかできなかったのです。 せっかく独立したというのに、デザイナーのままではお客様の悩みを根本的に解決できないことが分かり、私は自分の立場を変える必要性を感じました。湿布を貼って痛みを和らげる対症療法ではなく背骨の歪みを治す根本治療を行うため、私が選んだのがブランディングという手法だったのです。さらに「自分が経営者にならなければ経営者の悩みは理解できないだろう」と考えてこの会社を立ち上げました。ブランディングからデザインまで一貫して携わることは達成感ややりがいを得られる反面、大変な思いをする場面も多くあります。特に経営者の人生や想いに触れるインナーブランディングは根気のいる作業です。しかし私たちにはそれを乗り切るためのノウハウがあり、仕事をするうえで大きな武器になっていると感じます。

経営者の心に残ったエピソードEPISODE

想定の6倍以上の売り上げ!大きな反響にブランディングの力をあらためて実感

今まで会社を経営してきた中で、一番心に残っているエピソードをお聞かせください。

ある町工場の経営者からご相談を受けてブランディングを行ったときのことです。その会社は非常に優れた特殊技術をお持ちでしたが、それまでは商品を特定の企業に販売する、いわゆるBtoBと主としていました。そんな会社から私たちにご相談があったのは、広く消費者に向けた「BtoCブランドを立ち上げたい」というものでした。このときもまた、ほかにはない素晴らしい技術をどう伝えるのか、商品のターゲットをどこに置くのかといったことを決めるため、インナーブランディングやペルソナの設定を行いました。特殊な技術を日用品に落とし込み、ターゲットの心に響くパッケージやロゴデザインを考え、販売ルートを確保して。そうしていざ商品の販売を開始してみると、なんと売り上げが想定の6倍以上にもなったのです。 この結果には私たちも驚きましたが、何よりも社長さんがとても喜んでくださったことをよく覚えています。企業間取引のBtoBではどうしてもお客様との距離が遠くなりがちですが、BtoCブランドであればお客様の声が会社に直接届きます。社長さんもスタッフの方々も、「お客様の反響をダイレクトに感じることができて嬉しい」と口々に言ってくださいました。私としてもブランディングの力を再確認するとともに、自分たちの仕事に確かな手ごたえを感じられた出来事でした。

私たちの「ビジョン」VISION

ブランディングを通じて豊かな社会を実現し、子どもたちの未来を明るく照らしたい

御社の事業を通して、どのような社会を実現していきたいですか?

古くから受け継がれる伝統的な技術や地域に根づいた文化を生かしつつ、精神的にも金銭的にも豊かな社会を目指したいと思っています。そのためにも私たちはブランディングによってさまざまな課題を解決へ導くと同時に、経営状況の改善にも貢献したいと考えています。 日本人は古くから“言わぬが花”を美徳とするところがあって、特に中小企業の経営者は自分たちの技術や商品を積極的にアピールすることが得意ではありません。でも、せっかく素晴らしい商品があってもお客様に届かなければ意味がありませんし、商品が売れないために高い技術力を持つ町工場がなくなってしまったりしたら、日本経済にとって大きな損失になるでしょう。誤解されてしまうことも多いのですが、ブランディングは決して商品を華美に見せるための手法ではありません。自分たちの強みを理解して積極的に発信することで、お客様との間にグルーブ感をもたらすものです。さまざまな課題を解決して、たくさんの人の未来を明るくするためにも、日本にはもっとブランディングの力が必要だと感じます。 当社はこれまでブランディングを中心に展開してきましたが、次に考えているのが未来を担う子どもたちの学びの場を作ることです。町工場の職人さんをはじめ“その道のスペシャリスト”といえる方々にご協力いただいて、日本経済を支えてきた製造業の魅力やモノづくりの楽しさを知ってほしいと思っています。 多様な働き方が広がりつつある今、これから社会に出ていく子どもたちの足元には確実なレールが敷かれているわけではありません。ですから学びの中で子どもたちが心から好きだと思えるものを見つけられるような、子どもたちが“好き”を仕事にできるようなカリキュラムを作りたいと考えています。これからどれだけAI(人工知能)が発展しても、日本経済を支えてきたモノづくりは決してなくらないでしょう。「男の子だから」「女の子だから」ではなく、好きなもの・得意なことを仕事にして皆がいきいきと輝けるような未来になったらよいなと思っています。

私たちの「SDGs」SDGs

1つ1つの課題と丁寧に向き合いながら次の世代にバトンをつなぎたい

SDGsの取り組みについてお聞かせください。

SDGsについては常に「何ができるか」を考えています。商品開発をする際には使用する材料1つにも心を配りますし、商品がお客様のもとに届いた後のことまで考えてモノづくりを進めるようにしています。またブランディングやデザインといった日々の業務を行う中では、スタッフたちに働きがいや安定的な生活を提供できているかなと思います。 今後のビジョンとして掲げている“子どもたちの教育”では、活動を通して経済格差がなくなり、性別に関係なく誰もが自分らしく生きられる社会になることを期待しています。子どもたちが心から好きだと思えることを見つけて、それを仕事にして収入を得る。男性であっても女性であっても、自分が得意とすることや納得して取り組める仕事ができる社会を実現したいと考えています。

私たちの「チーム作り」TEAM

素直さと学び続ける姿勢があれば大丈夫。経営者の人生に触れ、大きく成長してほしい

スタッフの成長をサポートする取り組みなどについてお聞かせください。

スタッフたちには常々「美しい仕事を心がけよう」と話しています。“神は細部に宿る”という格言がありますが、まさにそのとおりだと思います。お客様に商品をお届けする際にほどこすデザインは、受け取る側に対する心遣いであり、相手を想う心です。モノづくりを行う際には材料や色などについても「本当にこれでよいのか?」と立ち止まって考え、1つ1つ丁寧に選んでいくよう指導しています。 「美しい仕事」には言葉づかいや挨拶など、仕事をするうえでの全てが含まれます。私たちの仕事は企業の創業者・経営者・生産者さんたちの想いに触れ、お互いの人生を豊かにするものです。常に相手の立場で考え、お互いに気持ちよく仕事ができるように心を配りながら日々の業務にあたってほしいと思っています。

もしも自分自身が会社の社員だったら、会社に期待することは何ですか?

私が会社のトップに求めるのは本当の意味での“有言実行”です。会社員時代からこれまで、上司と呼ばれる立場にある方や経営者などたくさんのリーダーを見てきました。その中で気付いたことは“有言”と“実行”の両方がきちんとできていないと、チームはうまく機能しないということです。 有言実行のNGパターンは大きく2つあります。1つは「これをします」と言いながらまったく違う方向を向いて仕事をするケースで、こちらは大企業といわれるような会社に多いです。もう1つは周囲になにも言わずに1人で突き進んだり、悩みを抱え込んだりするパターンで中小企業の経営者に多くみられます。“不言実行”ともいえるこちらのケースでは、経営者が熱い想いを持っていても社員には伝わらず、何のために仕事をしているのか誰も分かっていない状況に陥ってします。 私が今手がけているブランディングは、まさにこの悪循環にメスを入れるものです。経営者の想いを言語化して社内に広く浸透させること、経営者のビジョンを全員で共有して同じ目的に向かって進んで行くこと。“有言”があるからこそ“実行”に移せるのであり、やはりこの2つはセットでなければならないと実感しています。そして会社のトップである私自身も“有言実行”を徹底しなければいけないと思っています。

最後に、スタッフに向けた感謝の言葉や社外に向けたメッセージをお願いします。

ブランディングから始まる一連の業務は私一人だけの力でできるものではありません。ベースとなる部分がしっかりと出来上がったら、商品をお客様に届けるためデザインチームと連携してコンセプトを形にしていきます。彼らにはいつも支えてもらっていますので、本当に感謝の言葉しかありません。 感謝という意味では、これまでお付き合いさせていただいたクライアントの皆さまに、ぜひお礼の言葉を伝えたいです。小さな町工場には素晴らしい技術があり、農家さんには独自のノウハウがあり、それらは次の世代に受け継がれるべきかけがえのない財産です。日本の宝を守り続けるためにも、皆さまと手を取り合って豊かな文化が育つ社会を育んでいきたいと思います。 ※上記記事は2022年8月に取材したものです。時間の経過による変化があることをご了承ください。

C-OILING合同会社代表大後裕子

出身地
千葉県
趣味・特技
トロンボーン演奏
好きな本
エッセイ
好きな映画
CHEF
好きな音楽
インストゥルメンタル
好きな場所・観光地
本屋・渓流