株式会社アプロ
INTERVIEW
事業内容
- 建築・工事業
- 産業用電気設備工事
駅前の再開発プロジェクトや超高層ビルなど、あらゆる現場に駆けつけて迅速で確実な電気工事を行うアプロ。設計・施工・メンテナンスに加えて、事業所運営に欠かせない消防設備や空調設備の工事も担う技術者集団だ。代表の山本氏はまったくの他業種から転身した、たたき上げの苦労人。電気がつくという“社会の当たり前”を支えるための努力、最大のピンチを救ったスタッフへの想いなどを一つひとつ噛みしめるように語ってくれた。
INTERVIEW
株式会社アプロ代表取締役山本太志
私たちの「会社」BUSINESS
超高層ビルや厳しい条件下での電気工事。人々の“当たり前の生活”をそっと支える
御社の事業内容や設立までの経緯、この分野を選んだ理由をお聞かせください。
僕たちの主な仕事は、再開発が進む駅前のビルや超高層ビルの電気工事です。何千個ものコンセントを取り付ける地道な作業もあれば、1t・2tクラスの重いケーブルを引っ張り上げる緊張感を伴う作業もあります。当初は僕を含めて5人ほどのスタッフでスタートし、いろいろ苦労もしましたが何とか頑張ってきたという感じです。 この仕事をする以前は金具メーカーで営業職をしていていました。その後、妻と結婚したタイミングで義父が経営する電気工事会社に入り、電気工事について一から学び始めたのです。営業職から技術職への転身は、思った以上に大変なことでした。仕事をするうえで必要な資格がいくつもあって、覚えなきゃならないことが本当にたくさんありました。とはいえ電気工事は知識だけあればよいわけではなく、技術的なスキルも磨いていかなければなりません。最初はとにかく現場に出してもらい、そこで経験を積ませてもらえたことが今につながっていると思います。 独立の話が持ち上がったのは、義父の会社で働き始めて8年ほどたった頃でした。義父の会社はいずれ義理の兄が継ぐことになっていましたから、仕事の幅を広げるためにも「新しく会社を立ち上げてはどうか」とアドバイスされ、思い切って独立することを決めたのです。
この仕事や業界の魅力、やりがいなどをお聞かせください。
当たり前のように電気がつくようになるまでは本当に大変な思いで作業をするのですが、無事に電気がついた瞬間は何年たっても感動してしまいます(笑)。困難なミッションを成し遂げたときの爽快感や達成感に加えて、超高層ビルの屋上から都心の絶景を一望できることもこの仕事の特権といえるかもしれません。 以前は営業職をしていて人と接することは好きですから、新しい現場で新しい出会いがあることも楽しみにしています。また、照明器具やセキュリティ関連の技術はどんどん進化していますから、最先端のテクノロジーを駆使した現場に関われることも魅力の一つです。僕たちは渋谷駅直結の“渋谷ストリーム”の電気工事にも携わったのですが、メディアなどで紹介される度に誇らしい気持ちになりましたね(笑)。 今の時代「電気がつくのは当たり前」と思われがちですが、これまでに簡単な現場など1つもありませんでした。安全で確実な電気工事を行うためには、あらゆる知識と技術を身につけたうえで、それぞれに異なる環境に柔軟に対応していかなければなりません。当たり前を期待されていることにプレッシャーを感じる部分もありますが、それ以上にやりがいや面白さを感じますし、僕自身もさらにレベルアップしていかなければいけないと思っています。
御社の強みについてお聞かせください。
他社が断るような無理な条件であっても、再開発のような大きなプロジェクトであっても、電気工事に関することであれば「安心してお任せください」と言えることです。もちろん単に仕事を引き受けるだけでなく、タイトなスケジュールであっても遅延なく作業を行い、電気が確実につくところまで責任を持って仕事をしてきました。電気工事にまつわる知識を持ったスタッフがそろい、さまざまな現場に柔軟に対応できることが僕たちの会社の強みだと思っています。 無理な工期であっても必ず駆けつけて確実な工事をする……これが実現できるのはスマホのチャットツールのおかげであり、義兄の会社との連携体制があるからです。当社ではチャットツールを使ってスタッフ同士が常に連絡を取り合い、それぞれがお互いの仕事内容や進捗を確認して迅速に動けるようにしています。もちろん誰が現場に行っても問題ないようにスタッフみんなが一定の知識と技術を持っていますし、もしも手が足りないときは義兄の会社に応援を仰ぐこともできます。 今でこそ社長業にも慣れましたが、独立した当初は会社のトップとして担う役割の大きさに打ちのめされたこともありました。工期・品質・予算などさまざまな制約があるなかで、安全を確保しつつスピーディで確実な工事を行うことはとても大変でした。それでも僕が独立したことで義兄の会社とスタッフの貸し借りができたり、仕事や顧客の幅が広がったりとあらゆる面でプラスの効果が出ていると感じます。
経営者の心に残ったエピソードEPISODE
ビル屋上へのケーブル運搬中にトラブル発生。そのまま飛び降りようかと思いました
今まで会社を経営してきた中で、一番心に残っているエピソードをお聞かせください。
今でも忘れられないのは、ケーブル工事をしていたときの大きなアクシデントです。自分たちの技術力不足のために元請け会社さんに迷惑をかけてしまい、労務的にも800万円ほどの損失を出してしまったことがありました。 そのときの作業は20階建てのビルの屋上まで、1t近い重さのケーブルを地下から引っ張り上げるというものでした。ケーブルは少しでも傷が付くと中を通る電気が漏れ出てしまいますから、絶対に傷つけないように運ばなければなりません。僕たちは直径1cmほどのワイヤーと3tの重さまで対応するウィンチという道具を用意し、万全の体制で臨んだつもりだったのですが……ケーブルが屋上に着いたときには既にボロボロの状態になっていたのです。それを見た瞬間は本当にショックでしたし、これからどうしたらよいのだろうと生きた心地がしませんでした。 このときは結局、もう一度ケーブルを発注して工期にもギリギリ間に合ったのですが、その後の5年ほどは大きなケーブル工事を任せてもらう機会はありませんでした。ただし当時一緒に仕事をしていたスタッフが辞めずに残ってくれたため、同じ失敗を繰り返さないように意見を出し合って工事の方法や使用する機材の見直しなどを進めました。今になっては、あのときの失敗があったからこそ自分たちも進化できたのだと前向きに考えられるようになりました。
私たちの「ビジョン」VISION
若い力のある会社に成長し世の中をやさしい明かりで包みたい
御社の事業を通して、どのような社会を実現していきたいですか?
僕たちが扱う“電気”は人々の生活に直結するものであると同時に、町の景観や安全にもつながっています。おしゃれな町にも、一般の家庭にも、人の命を守る医療機関などにも当たり前にあるもの……その“当たり前”を維持していくことが僕たちの使命なのだと思っています。 これから先、環境の変化とともにエネルギーのカタチも変わっていくかもしれませんが、いつでも・どんな場所にも変わらずに電気が明るく灯っている世の中であってほしいと思います。そのためにも会社の規模を少なくとも倍にして、今よりもっと大きな仕事を請け負えるようにしたいと考えています。さらに技術の進歩などにも柔軟に対応することで、町の景観や環境への影響が少ない“地球にやさしい電気工事”を実現したいですね。 そのためには、当たり前のように電気がつくこと。この“当たり前”を維持していくことはとても大変です。体力面や技術面を含めスタッフ1人1人のスキルアップが欠かせませんし、新しい資格を取ることも必要になってくるでしょう。最近は本当にいろいろな資格があって、中には持っていないと仕事にならない資格もあります。おかげさまで今は毎日仕事に追われるような状態で、スタッフたちに十分な勉強時間を与えられないのですが……。たとえどんな現場であっても仕事を請け負えるよう、しっかりと準備しておかなければいけないと考えています。 僕たちの会社は今のところ“孫請け”のようなポジションの仕事が多いですが、これからはお客様から直接注文をいただけるような “子請け”の仕事を増やしていきたいというのが今の希望です。そのためにも日々駆け回り、お客様が抱える問題を解決するために頑張りたいと思っています。CADを使って設計ができたり、現場監督ができたりするスタッフを育てながら、来るべきチャンスに備えたいと考えています。
私たちの「SDGs」SDGs
時代やエネルギーの変化を見据えながら自分たちの意識も進化させていきたい
SDGsの取り組みについてお聞かせください。
最近は環境問題などの関係でエネルギーのカタチがどんどん変化しています。これを踏まえて自分たちの意識も変えていかなければならないと分かっているものの、たいしたことは何もできていないのが現状です。持続可能な取り組みといっても、交代制で会社の周りを掃除しているくらいですけれど(笑)。これから先の将来を見据えて、経営者として意識を高く持たなければいけないと思っています。 SDGsの項目に該当する可能性がありそうなのは健康診断の実施であったり、業務に必要な資格や免許を取得するための費用を会社が負担していたりすることでしょうか。スタッフたちには日々の業務の中で町づくりを支えていることを実感し、働きがいを持って仕事に取り組んでほしいと思っています。
私たちの「チーム作り」TEAM
風通しがよく何でも対等に話し合えること。それが社員の成長にもつながっています
スタッフの成長をサポートする取り組みなどについてお聞かせください。
未経験のスタッフが多いこともあり、月に1回は2時間ほどかけて勉強会を兼ねた進捗報告会を行っています。たとえば僕はスタッフの成長を期待して、実力よりも少し上のレベルの現場を任せることがあるんですね。進捗報告会では現場で困ったことを持ち寄ったり、改善に向けて意見を出し合ったりと対等な立場で話し合えるので、若手スタッフの学びの場にもなっているようです。以前は僕もスタッフの悩みに寄り添う“聞き役”になっていたのですが、最近は先輩にあたるスタッフがその役割を担ってくれているようで頼もしく思います(笑)。 スタッフのサポートは精神面のほかに金銭面でも行っています。電気工事ではさまざまな資格が必要になりますので、参考書を買ったり試験を受けたりする費用をすべて会社が負担するようにしています。今後もスタッフたちがいきいきと活躍できるよう、サポート体制をいっそう充実させていきたいと考えています。
もしも自分自身が会社の社員だったら、会社に期待することは何ですか?
そうですね……社長や上司にくっついて遊びに行きたいですし、いろいろな所に連れて行ってもらいたいですね(笑)。食事でも、会社でも、もちろん仕事の現場でも。お客さんとどんな話をするのか? 出張先でどんなホテルに泊まっているのか? きっと見られたくない部分もあると思いますけれど(笑)、まだ僕が知らないことを何でも教えてもらって自分の世界を広げていきたいです。 反対に、会社のみんなには自分のことを知ってほしいと思います。迅速・柔軟な対応が求められる僕たちのような仕事では、社内の風通しをよくして円滑な人間関係を作っておくことが大事になります。そのためにはお互いのストレスにならない程度に、プライベートなことも、趣味の話も、仕事の悩みも何でも打ち明けられるような関係でいることが理想です。ですから社長にはぜひ、スタッフ全員が楽しめる機会を作ってもらいたいですし、僕も何か考えないといけないなと思っています(笑)。
最後に、スタッフに向けた感謝の言葉や社外に向けたメッセージをお願いします。
同じ現場で一緒に働くスタッフたちには、感謝の気持ちでいっぱいです。彼らに出会えたことで僕自身も成長でき、今の自分があると思っています。もしも彼らがいなかったら僕はここまで頑張れなかったと思いますから、本当にみんなと出会えてよかったと思います。長く一緒に働く中でそれぞれが成長し、安心して現場を任せられるスタッフが増えました。仕事の大小にかかわらず、どんな環境でも全員が同じ方向を向いて取り組むことができる……そんな会社に成長できたのではないかと思います。 彼らとの関係は仕事だけに限らず、プライベートでもいろいろなことを教えてもらっています。音楽のことや趣味に関することなど、これからも僕を仲間外れにしないで(笑)一緒に楽しめたら嬉しいです。年齢的には先輩でも、若手スタッフから教わることはたくさんあります。この歳になっても新たな発見があり、まだまだ成長できると感じますし、そんな気付きを与えてくれる彼らは僕にとって本当に頼もしい存在です。 ※上記記事は2022年8月に取材したものです。時間の経過による変化があることをご了承ください。
株式会社アプロ代表取締役山本太志
- 出身地
- 東京都
- 趣味・特技
- ゴルフ
- 好きな本
- 少年ジャンプ
- 好きな映画
- トップガン
- 好きな言葉・座右の銘
- 一石二鳥
- 好きな音楽
- チューブ
- 好きな場所・観光地
- ハワイ