ミユキ精工株式会社
INTERVIEW
事業内容
- 製造業
- その他製造関連サービス
ものづくり大国・日本を支える町工場の一つ、東京・足立区に本社を構えるミユキ精工。創業以来一貫してプラスチック成形に携わり、その精密なものづくりは折り紙付きだ。少数精鋭の会社を率いるのは、建築業から転身した小暮氏。道路や河川などスケールの大きなものづくりから、手のひらサイズのものづくりへ……新たなチャレンジに待ち受けていた困難や未来への夢などを語ってもらった。
INTERVIEW
ミユキ精工株式会社代表取締役小暮 孝一
私たちの「会社」BUSINESS
高い技術力を誇るプラスチック成形のプロ集団。企画から製造・組立まで一貫して対応
会社の事業内容や設立までの経緯、この分野を選んだ理由をお聞かせください。
ミユキ精工は創業以来培ってきたプラスチック成形の技術をいかして、玩具をはじめとした工業部品や弱電部品をメインに事業を展開しています。また、自分たちで一から企画・開発した「リポブロック」など自社製品の販路拡大にも努めているところです。まだまだ小さな会社ではありますが、企画・設計・製造・組立を一貫して請け負えることは当社ならではの強みと言えるでしょう。 現在は足立区に事務所兼工場がありますが、1986年の創業当初は千葉県松戸市でインジェクション成形加工を始めたと聞いています。私がミユキ精工に入社したきっかけは創業者の娘である妻との結婚でした。2001年に入社し、インジェクション成形の現場で経験を積みました。 前職も「ものづくり」でしたが今の仕事での「ものづくり」は扱うものの大きさ、寸法精度が全く違いました。前職の建築系の仕事では、1年がかりで新しい道路をつくったり、河川の整備をしたりしていましたが、こちらの会社では手のひらに収まるような製品や部品の製造が主な業務であり、100分の1mmにまでこだわった精密さが求められます。最初の頃は戸惑うことも多かったですが、前社長やクライアント様などに厳しくご指導いただきながら少しずつ成長できた感じがします。
この仕事や業界の魅力、やりがいをお聞かせください。
ものづくりの一番の魅力は、自分が携わった製品を誰かが手に取り、眺めたり、使ってくれることです。私たちがつくる部品は“製品の一部分”ということが多いですけれど、店頭に並んでいたり、たまたま使っている人を見るとじーっと眺めてしまいます。製造しているだけですが、自社商品と同じようにうれしく感じます。 当社の事業の柱になっているのは、創業から携わっている“ゼンマイ式のミニチュアカー”や“デジタルビデオ・カメラなどの一部品”であり、実際に私たちがユーザーから直接評価されることはありません。そのため製品を納めたクライアント様からの評価を自分の会社に対する評価だと受け取り、時に反省したり励みにしたりしています。とはいえやはり、私には自社で作った製品に対してのユーザーの声を直接聞きたいという想いが強くあり、自社製品の開発に取り組みました。小さな町工場でも自信と情熱があれば、「作りたいものが作れる」を実現したいと思っています。そしてそれが、ものづくりをしている会社の魅力だと感じています。
会社の強みや主力商品の魅力をお聞かせください。
「ものづくり」を行う上で、常に「決してあきらめない」という考えでいます。クライアントから依頼された仕事を必ずやり遂げること、100分の1mmまで精密に仕上げたパーツを納品し、その先にいるユーザーの方々に喜んでいただくことが私たちの使命だと考えています。 当社では、他社が断ってしまうような案件を「何とかしましょう」と請け負ってしまうことが多々あります。たとえば一般の方のアイデアを形にするお手伝いをしたり。もちろん企業ですので利益は大事です。ですが、「何とか作ってあげたい」と思ってしまい、いろいろと見合わない部分が後から出てきてしまい苦労するところがあるのです(笑)。 世の中には自分のアイデアを形にしたい方や「どこに依頼したらいいかな?」と困っている方がたくさんいらっしゃるはずです。そうした方々に私たちの会社を見つけてもらうためにも、できるだけ早く多くの方にPRをしていきたいと思っています。
経営者の心に残ったエピソードEPISODE
6面体のブロックが全方向につながり自在に動かせる「リポブロック」の開発に尽力
今まで会社を経営してきた中で、一番心に残っているエピソードをお聞かせください。
私が社長になった2015年、真っ先に取り組んだのが自社製品の開発でした。当社のメイン事業は大手玩具メーカー様からの案件を請け負う、いわゆるOEMです。基本的に製造した弊社が表に出る事はありませんが、販促品やノベルティなどの製作時には取扱説明書に「ミユキ精工」の文字が印刷されることがあります。しかし、知名度はなく、近隣にお住まいの方も当社が何をしている会社なのかお分かりになる方はいないと思います。企業間でのやり取りでしたので、地域の方とのコミュニケーションなどはほとんどない状況だったのです。そこで、創業以来培ってきたプラスチック成形の技術力と製造工場の財産を最大限に生かし、自社ブランドの開発に取り掛かりました。社内で自社商品の企画会議を毎週行った結果、6方向に連結ができて連結部が稼働することが特徴のブロックのおもちゃに決定しました。6面体のブロックから全方向につながり、連結部が360°回転する、自由度の高いブロックおもちゃです。さらに子どもたちが思わぬけがをしないようにブロックの角に丸みをもたせ、玩具の安全基準である“ST基準”をクリアする新感覚のブロックおもちゃ「リポブロック」が出来上がりました。今では会社の外壁に「リポブロック」の看板を貼り付けたおかげで、学校帰りのお子さんや会社の前を通る地域の方に「リポブロック知ってるよ」とか「ここで作ってるんですか?」と声をかけられるようにもなりました。 玩具などの製造には経験も実績もありましたので“つくる”ことに対する不安はありませんでした。一方で、出来上がった製品を“売る”ことについては今も多くの課題が残っています。売る難しさにどっぷり嵌っています(苦笑)。販路拡大にはいまだ苦戦中ではありますが、展示会などでいただく「いいね」の声を原動力にし、新たな販路へ繋がる仕組みを考えたいと思っています。
私たちの「ビジョン」VISION
エコ素材を活用した“クリーンなものづくり”でプラスチックのイメージを変えていく
あなたの会社の仕事で、どのような社会を実現していきたいですか?
最近は世界的に「プラスチックは悪」といった風潮がありますよね。しかし問題視されていたのは、レジ袋やお弁当を買うと貰えたスプーンなど“使い捨てプラスチック”です。耐久性をはじめとしたプラスチックの長所をよく知っている私たちとしては、プラスチック製品に対する正しい理解が広まることを願うばかりです。 とはいえこれからの時代、環境に配慮したものづくりは必須です。私としてもクリーンなものづくりにシフトしたい気持ちではあるものの、現行品では耐久性が求められる製品である事と石油由来のプラスチックと同等の性能・コストの素材に出会えていないのが現状です。現在のところ環境に配慮した素材を使用すれば採算が合わないですし、思い切って新素材を使っても商品コンセプトによっては市場に受け入れられない可能性があります。消費者のニーズにマッチしない製品をつくって売れ残れば、結局はゴミになってしまいます。慎重に可能性を探っていく必要があると考えています。これから先いろいろな素材で試行錯誤を繰り返しながら、クリーンなものづくりが少しでも増やせていけたらよいと思っています。
私たちの「SDGs」SDGs
足立区の子どもはみんな「リポブロック」育ち――そんな未来に夢をつなげたい
SDGsの取り組みについてお聞かせください。
これは自社製品の「リポブロック」に限られますが、製造過程において射出成形では、原料(プラスチック樹脂)を金型に射出し、冷やし固め(冷却)て出来上がった製品に“ランナー”という成形時には必要で成形後には不要になってしまう部分があります。その“ランナー”を細かく粉砕し、品質に問題がないようバージン材に混ぜ再度成形に利用しています。 当社ならではの取り組みとしては、地元である足立区のイベントに「リポブロック」で参加したり、NPO団体に協賛したりといったことをしています。せっかく縁あって足立区で仕事をさせていただいていますので「足立区の子どもたちはみんなリポブロックで遊んで育った」といった未来をつくっていきたいと思います。
私たちの「チーム作り」TEAM
待遇と知名度の向上を実現し、スタッフがやりがいを持って働ける魅力的な会社に
スタッフの成長をサポートする取り組み、能力を引き出すために工夫していることをお聞かせください。
“射出成形技能士”など製造の現場で必要になる資格取得について、社員がスクールや勉強会などに参加できる環境を整えています。実務経験を積んで受験資格をクリアした社員については、技能試験に向けたサポートをしていきたいと考えています。そして、先輩を超える技術者を目指してもらいたいと思っています。 日々の業務の中では、できるだけ広く社員の話を聞くようにしています。テレビで『カンブリア宮殿』などを見ては、ほかの経営者が実践なさっている手法を取り入れたりして(笑)。社員たちの意見に耳を傾け、新しいことにもどんどんチャレンジしていきたいと思っています。ですからもしも「こんなものが作りたい!」といった意見やアイデアがあれば、遠慮なく提案してほしいですね。
もしも自分自身が会社の社員だったら、会社に期待することは何ですか?
社長になったときの私がそうだったように「自社でつくった製品を世に出してほしい」とお願いすると思います。当社は現在のところ正社員とパートがそれぞれ半分ずつで、総勢10名程度といった体制です。社員たちは企画・開発・製造など幅広く活躍できる一方、パートさんの管理業務などが加わって結構大変な思いをしているはずなんです。それでも、自社の製品を喜んでくれるユーザーの声を聞くことができれば、やりがいを持って働けると思いますから。 当社の正社員の平均年齢は40~50歳ほどですが、これには若い世代が定着しないといった側面があります。プラスチック成形の技術を身につけるには2~3年の時間が必要になるため、一人前にならないうちに「つらくて大変な仕事だ」と思われてしまうのかもしれません。ですから社長である私の役割は、社員のモチベーション向上に努めることであり、そのためにも「ミユキ精工」の名前を広くアピールしていかなければと思っています。
最後に、スタッフに向けた感謝の言葉や社外に向けたメッセージをお願いします。
入社から十数年にわたってプラスチック成形の現場を経験したものの、私は企画もできなければCADやイラストレーターなどの操作もできません。何もできない僕を支えてくれているのは間違いなく社員やパートのみなさんです。いつも感謝の気持ちでいっぱいです。 と言いながら、私はコミュニケーション能力が高いほうではなく素直になれない部分があり、普段から感謝の気持ちを伝えることができていません。ですからぜひ、この場を借りて言わせていただきます。「いつもありがとう、みんなのおかげでとても助かっています。これからもよろしくお願いします。」 ※上記記事は2022年12月に取材したものです。時間の経過による変化があることをご了承ください。
ミユキ精工株式会社代表取締役小暮 孝一
- 出身地
- 埼玉県
- 趣味&特技
- バスケットボール
- 好きな本・愛読書
- 活字は苦手です。
- 好きな映画
- アクション映画
- 好きな言葉 座右の銘
- 「青は藍より出でて藍より青し」
- 好きな音楽
- J-POP
- 好きな場所・観光地
- 神社仏閣