株式会社フューチャリズムワークス
INTERVIEW
事業内容
- IT業
- クラウド・フィンテック
- システム受託開発
- Web制作
- Webサービス・アプリ運営
レンタルサーバーやネットワーク構築などインターネット関連事業を幅広く展開するフューチャリズムワークス。“未来派”という意味を込めた会社を立ち上げたのは、当時まだ大学生だった加倉井氏だ。着実に成長した同社は官公庁からの依頼を受けるまでになり、2002年には東京大学・小柴栄誉教授のノーベル物理学賞受賞をサポートした。両親と同じ起業の道を選び「35歳でリタイアするつもりだった」と話す加倉井氏に秘蔵エピソードなどを聞いた。
INTERVIEW
株式会社フューチャリズムワークス代表取締役加倉井靖久
私たちの「会社」BUSINESS
提案から構築の全てを手がけることができる。システム関連のことなら何でも対応可能
御社の事業内容や設立までの経緯、この分野を選んだ理由をお聞かせください。
僕たちの会社ではレンタルサーバー、ネットワーク、サーバーなどインターネット関連の業務を幅広く手がけています。実は子どもの頃から「将来は自分の会社を作ろう」と考えていて、その言葉どおり大学在学中に起業しました。我が家は両親がともに“社長”という珍しい家庭で、2人がそれぞれ会社のトップとして忙しく働いていたんです。そうした環境のためかコンピュータは僕にとって “おもちゃ”のようなものだったんですね。中学生のときには父と母それぞれの会社の顧客名簿作りを請け負ったり、業務アプリケーションの手伝いをしたりしていました。 大学に入るとネットワークの管理・基盤作り・設計などネット関連のバイトを掛け持ちし、このころからコンピュータを仕事として意識するようになりました。周囲にも「自分は独立する」と話して回り(笑)、実際に起業したのは大学3年生のときでした。最初は僕とバイト仲間の2人でスタートし、それからすぐに今副社長をしている斎藤が入りました。彼は中学からの友人でサッカー部の仲間だったんです。 ありがたかったのは、まだ駆け出しの僕たちを周りの大人がサポートしてくれたことです。派遣会社経由で受けていた仕事を直接契約に切り替えてくださったり、バイトの頃から担当していたネットワーク管理の仕事が今も続いていたり。毎月一定の金額が入ってくる“レンタルサーバー事業”のおかげで収支が安定していたことにも助けられました。当時はちょうどインターネットが伸びてきた時代でしたから、タイミングもよかったのでしょう。“未来派”という意味を込めた「フューチャリズムワークス」という社名どおり、未来へ向けて意気揚々とスタートを切ったという感じです(笑)。
この仕事や業界の魅力、やりがいなどをお聞かせください。
インターネット関連ビジネスの醍醐味は、自分が作ったものを世界中の人が使ってくれる可能性があるという点です。自分が手がけたものが大きく広がっていく様子を目の当たりにしたときの何ともいえない清々しさ、達成感はほかでは味わえないものだと思います。 僕はこの仕事を“サービス業+モノづくり”だと考えています。クライアントに向けていろいろなご提案をして、お互いに密にやり取りしながら、期待されている以上のものを作り上げていく。自分たちが納品したものに満足し、クライアントが喜んでくださったときは素直に嬉しいですし、何よりもやりがいを感じます。そうしてつい夢中になっているうちに、僕はすっかり辞め時を失ってしまいました(笑)。 実は起業した当初の計画では、35歳できっぱりと引退するつもりだったんです。しかしインターネットの進化は目覚ましく、やりたいことが次々に出てきて、仕事をするのが楽しくて仕方がなくて(笑)。毎日いろいろな出会いや発見がありますし、勉強を続けても決して終わりが見えません。でも、とにかくそれが楽しいし、毎日ワクワクした気持ちでいられるんですよね。社長である僕自身が楽しみながら仕事をしていることは社員にも伝わっていると思いますし、きっとこの会社の魅力にもつながっているのではないかと思います。
御社の強みや主力商品の魅力をお聞かせください。
僕たちの会社は決して規模が大きいとはいえません。しかし外部の力を必要とせず、全ての工程を社内で完結できることは大きな強みです。学術系の仕事であっても官公庁の仕事であっても、プロジェクトの一部を担うだけにとどまらず、提案から構築までを一貫して手がけることが可能です。 たとえば開発会社の場合はインフラには対応していないですとか、ネットワークについては外注するといったケースも少なくありません。一方、当社のスタッフはシステム関連について細部にわたって把握していますから、何かトラブルが起こったときにも迅速・正確に対応できます。正直なところスタッフたちにかかる負担は少なくありませんが、クライアントに対しては絶対的な安心感を与えられていると思います。さらに全ての業務を一括して担当することにより、コスト面やスケジュール進行においてもご満足いただけると自負しています。 当社にはちょっとお堅い官公庁などのほか、東京大学から学術系の仕事が継続的に入ってきます。東京大学とご縁ができたのは、2002年にノーベル物理学賞を受賞なさった小柴昌俊先生の資料作りなどをサポートさせていただいことがきっかけです。社内には特に営業スタッフを置いていないのですが、お客様がさらにお客様を呼ぶ“紹介”だけで経営が成り立っていることを見ても、仕事の正確さやトラブルへの迅速な対処が評価をいただいているのだと感じます。
経営者の心に残ったエピソードEPISODE
東京大学・小柴晶俊先生をサポートできて、まさにノーベル賞ものの感動でした!
今まで会社を経営してきた中で、一番心に残っているエピソードをお聞かせください。
僕だけでなく日本中の人の心に残っていると思いますが、2002年に東京大学の小柴昌俊先生がノーベル物理学賞を受賞なさったときのことはい今も鮮明に覚えています。当社が担当したのは資料作りなどの細々した作業でしたが、大きな研究のサポートができているというだけで毎日ワクワクしましたし、それまで経験したことのない貴重な体験ができました。 小柴先生とは何度かお会いした程度でしたが、普段はとてもフランクな方でした。世間話のようなおしゃべりも楽しかったですし、何よりも偉大な仕事を成し遂げた方の素顔を垣間見ることができて嬉しかったですね。みんなでノーベル賞の発表を待っていたときはもうドキドキが止まらず、受賞が分かった瞬間は感動のあまり我を忘れました(笑)。 このときの仕事がきっかけで小柴先生の後輩や教え子の方々とのパイプができ、今も継続して仕事をいただけていることは非常にありがたく思っています。学術系の仕事は未来への希望をつなぐといった側面があり、自分たちが“未来への夢”に関われることにやりがいを感じます。会社としても仕事の幅が広がると同時に規模拡大にもつながり、このご縁には感謝しかありません。
私たちの「ビジョン」VISION
最先端であることを常に意識することが重要。理想は1人1人が強みを持った“技術集団”
御社の事業を通して、どのような社会を実現していきたいですか?
次々に生み出される新しい技術に対応できる人材を育成し、未来を担う子どもたちがオンラインでも対面でも快適に教育を受けられるようなシステムを作っていくことも僕たちの使命だと思っています。インターネットの仕事を通して日本の教育の発展をサポートすることができたら嬉しいですね。 コロナ禍を経て人々の意識や働き方、学びの形は大きく変化しました。さらにこれから先の10年は、インターネットを含めてあらゆる環境の変化が加速していくことでしょう。そうしたなかで僕たちは、マルチに仕事ができる技術集団として最先端のインターネットシステムを推し進めていかなければなりません。後追いではなく常に“最先端”であることを意識して1人1人がスキルアップに努め、あらゆるニーズに対応できるよう成長していかなければならないと考えています。 たとえば、スパコンの上をいく次世代型のコンピュータとして期待される“量子コンピュータ”というものがあります。これを気象の世界で活用できれば天気予報の精度が格段に上がるだけでなく、いくつかの環境問題を解決できる可能性があります。しかし現段階では量子コンピュータを使いこなせる人材が育っておらず、使用用途さえ決まっていません。新しい技術に対応できる人材の育成は、当社に限らず業界全体にとって急務と言えるでしょう。 こうした大きな目標を実現するためには、やはり“個の力”では難しい面があります。僕たちの会社はこれまで1人1人の個の力を尊重してきましたが、今後はチームワークを重視する必要があると思っています。たとえば開発の仕事であればアイデアを出す人、マネジメントする人、実際に動く人など個々が持つ最大限の力を結集させなければ目標達成には至らないでしょう。これまでどおりトラブルがあれば全社一丸となって迅速に対処するというのはもちろんですが、それぞれがスキルを磨き、実績を積み重ねて、チーム全体のレベルを底上げしていかなければと思っています。
私たちの「SDGs」SDGs
産業と技術革新の基盤づくりをサポートし、量子コンピュータで気候変動に立ち向かう
SDGsの取り組みについてお聞かせください。
最近の仕事の1つに東京大学とIBMのコラボによる量子コンピュータのサイト作りがあります。量子コンピュータをうまく活用することができれば、きっと気候変動や環境問題といった分野で活躍してくれるだろうと期待しています。 社内的な取り組みとしては省エネ(省電力)が挙げられますが、ここはまだまだ工夫が足りないかもしれません。また、業種的にも社員は男性がほとんどで女性はたった2人という状況がありますので、今後は女性社員を増やしていきたいという気持ちがあります。僕たちの仕事はオフィスにいなくてもできますし、やる気さえあれば大歓迎です。男女を問わずスタッフみんなによい仕事をしてもらえるように、僕もトップとして環境整備に努めたいと思います。
私たちの「チーム作り」TEAM
“機会を与える”ことを重視して未経験者にもどんどん仕事を与えています
スタッフの成長をサポートする取り組みなどについてお聞かせください。
スタッフたちが参加したいと申し出た研修費、勉強に必要な書籍や資料の費用は会社で出すようにしています。僕は勉強でも仕事の現場でも、なるべく”機会を与える”ということを大切にしています。スタッフ1人1人の能力をしっかりと把握して、頑張ってもらえるだろう判断すれば、どんどん仕事を割り当てるようにしています。 最近はテレワークの社員も増えてなかなか難しいですが、彼らに対しては日常的に声をかけるようにしています。仕事面でも金銭面でも1人1人の活躍にきちんと応えられるように、トップとして常に全体を見回すようにしていると言いますか。何かよいところ見つければ「これいいね!」と褒めたりして、積極的にコミュニケーションを取るよう心がけています。社員たちにはみんなで同じ船に乗ったつもりで、チームワークを大切にしながらまだ見ぬ楽園を目指してほしいと思っています。そのためにもみんながポジティブな気持ちで仕事に取り組めるような環境を作らなければなりませんし、仕事以外でも一緒に取り組めることを企画したいと思っています。
もしも自分自身が会社の社員だったら、会社に期待することは何ですか?
まずは会社が進むべき方向性をしっかりと提示してほしいです。これまで僕は1人1人の“個の力”を尊重してきたため、チームワークの面では多少の不安があります。組織としての目標や指針となるものが定まっていないために、やりにくさを感じている社員も少なくないでしょう。だからこそ社長には、組織として物事をどのように進めていくのかをきちんと確認したいと思います。 もう1つは、1on1ミーティングの実施です。どれだけ風通しのよい会社でも、社長と社員が1対1で話せるチャンスはなかなかないものです。僕自身、社員と直接話す機会を設けることをここ数年怠っていましたし……。そうした反省の気持ちも込めて、1人1人の成長につながるような面談の場を最低でも年1回は作ってもらいたいと思います。そして自分自身が成長したと思えたら、給料アップの交渉もしたいですね(笑)。 それからこれは社長の立場から社員へのメッセージなりますが……。この会社でスキルを身につけて「どこでもやっていかれる」と思えたら、遠慮せずに会社を辞めてもらって大丈夫です(笑)。社員が離れることは会社にとってマイナスばかりではなく、新たな仕事が生まれるなどのメリットをもたらす場合もあります。過去には他社で実績を積んだ社員が再びこの会社に戻り、大きな戦力になってくれたケースもありました。社員には1つの会社に縛られずに自身のキャリアアップを目指してほしいですし、社長としては多様な価値観を受け入れたいと思っています。
最後に、スタッフに向けた感謝の言葉や社外に向けたメッセージをお願いします。
彼らに対しては日常的に声をかけるようにしています。最近はテレワークの社員も増えてなかなか難しいですが、よいところ見つけては「これいいね!」と褒めたりして積極的にコミュニケーションを取るよう心がけています。“褒める”ことと“感謝”では少々ニュアンスが異なるかもしれません。でも、感謝の気持ちがあるからこそ常に全体を見回して、1人1人の活躍にきちんと報いたいと思っています。 社員たちにはみんなで同じ船に乗ったつもりで、チームワークを大切にしながらまだ見ぬ楽園を目指してほしいですね。そのためにもみんながポジティブな気持ちで仕事に取り組めるような環境を作らなければなりませんし、仕事以外でも一緒に取り組めることを企画したいと思っています。創立10周年のときのような沖縄旅行であったり、バーベキューやカラオケ大会であったり。コロナ禍以前のイベントを復活させて、楽しみながら結束力を高めていきたいですね。 ※上記記事は2022年8月に取材したものです。時間の経過による変化があることをご了承ください。
株式会社フューチャリズムワークス代表取締役加倉井靖久