ミニイク株式会社

INTERVIEW

代表者名

黒川雄介

所在地

東京都豊島区西池袋2-1-2

設立年

2020年

事業内容

  • IT業
  • Web制作
  • Webサービス・アプリ運営
  • 医療・福祉業
  • その他医療・福祉関連サービス

Be a HERO.――世界中の動物たちのヒーローになることを理念に掲げるミニイク株式会社。代表の黒川氏は少年時代の夢を叶えて獣医師になったものの、わずか半年で現場を離れることになった、自身のつらい体験を踏まえ、動物病院に特化した電子カルテシステムを開発するに至った。「獣医療の手の届かない動物や過酷な現場を支える獣医療スタッフを救いたい」と語り、世界進出を見据える黒川氏にその熱い思いを聞いた。

INTERVIEW

ミニイク株式会社CEO/獣医師黒川雄介

私たちの「会社」BUSINESS

獣医療にまつわる情報を集約・連動することで、業務負担の軽減とコストダウンを実現

会社の事業内容や設立までの経緯、この分野を選んだ理由をお聞かせください。

私は小学生の頃から「獣医さん」に憧れ、中学・高校・大学とただひたすらに獣医師になる夢を追いかけていました。幸いにも長年の夢が叶って獣医師になり、北陸・石巻の小動物病院で診療を始めたのですが、過酷な労働環境の中で肉体も精神もすっかり疲弊してしまって……。約半年という短い期間で、獣医療の現場から遠ざかることになりました。 9歳から24歳までの15年間、獣医師になることだけを考えて過ごしていましたから、このときは本当に目の前が真っ暗になりました。自分にはもう小動物の診療ができないとわかり、生活のために仕方なく塾講師などをしていた時期もありました。それでもすこし冷静になって自分の原点に立ち返ったとき、やはり心の中にあったのは「動物たちを助けたい」という気持ちでした。改めて獣医師の自分に何ができるかを考え、保健所で仕事をすることになったのですが、この選択が大きなターニングポイントになりました。 保健所に所属する獣医師の役割は大きく2つあって、1つが「食品の安全を守る」こと、もう1つが「人と動物が共に生きる社会を実現するための啓蒙活動や相談対応」などです。動物愛護法に基づいて動物たちが適切に飼育されているかどうかを確認し、動物たちの健康と安全を見守っていくことも私たちの大事な仕事でした。そうした中であるとき「多頭飼育が崩壊している」との相談があり、業務の一環としてあるご家庭を訪問したことがありました。 その家の内部は言葉にするのもはばかられるような劣悪な環境で、糞尿による悪臭は鼻だけでなく目にも刺激を与えるほどでした。目をそむけたくなるような状況にもめげずに各部屋をチェックしていくうち、家の奥まった所にある風呂場のバスタブの底で、息絶えた子犬を見つけたのです。バスタブの淵には「ここから出たい」と足掻いたと思われる傷が無数に残り、胸に抱き上げた子犬はあまりにも軽くて驚いたことを今も覚えています。もっと早くこの子に手を差し伸べることができていたら……。そんな悲しみや情けなさが入り混じったような気持ちが沸き上がり、それが自分を起業へと向かわせたと言っていいかもしれません。バスタブの中で亡くなっていた子犬のように、まだ医療につながっていない子を「見に行くから待っていて」という思いを胸に、自分を含めたスタッフ5人でミニイク株式会社を立ち上げました。

この仕事や業界の魅力、やりがいをお聞かせください。

犬や猫など人間と暮らす動物のことをコンパニオンアニマル(companion animal)と呼びますが、もしも彼らの命に何らかの役割があるとしたら、それは人々の人生に彩りを添えることだと言えるでしょう。そして、彩りのある人生や動物たちと過ごす幸せな時間を支えているのが、獣医師をはじめとした獣医療ワーカーです。飼い主さんを幸せにするはずの動物たちが苦しみながら亡くなることになれば、楽しかった時間がつらい思い出に変わってしまいかねません。私は志なかばで現場を離れましたが、これまで多くの獣医療ワーカーが「すべては動物たちのため」という自己犠牲のもとに獣医療を支えてきたことは確かです。 たとえば手術を担当した獣医師は、その後の経過管理のためにプライベートな時間を割いて彼らの様子を見に行くことがあったりします。これをもしリモートで行うことができれば、十分な休息をとった後でまた新たな気持ちで診療に向かうことができるでしょう。これまでアナログで管理していた書類をデジタル化できれば、雑務に追われて本来の業務がおろそかになることもなくなるはずです。当社が開発した『ミニイク』によって獣医療ワーカーのみなさんが健康的な生活を送れるようになれば、それが私たちにとっては何よりの喜びです。 獣医療に関わる者であれば誰もが「動物たちのため」という気持ちを持っています。しかし、真面目な人ほど頑張り過ぎてしまい、肉体的にも精神的にも追い込まれてしまうことが多いのです。1人の獣医師が生涯診療する動物の数を考えれば、たった1人の獣医師も失うわけにはいきません。私と同じように大きな夢と希望をもって獣医療の世界に入った後輩たちに、いつまでもキラキラと輝いていてほしい……。そんな思いが今の私の原動力になっています。

会社の強みや主力商品の魅力をお聞かせください。

私たちの会社はクラウド型オールインワン電子カルテシステム『ミニイク』を中心に展開し、新たに動物病院を開設する際のコンサルティング、ホームページ制作なども請け負っています。『ミニイク』は電子カルテ・レセプト・オンライン予約のほか、スタッフの勤怠管理や顧客データを活用にしたマーケティングなどさまざまな機能を1つに集約し、動物病院の運営を幅広くサポートするサービスです。獣医療の現場に欠かすことのできない情報を連動させることによって、予約・診察・会計などをスムーズに行っていただけます。 従来はこうしたサービスを利用しようと思うと、それぞれ異なる業者と契約する必要がありました。また、電子カルテや患者情報を紙で管理する場合には、どうしても転記ミスが生じたり、業者とのやりとりが煩雑になったりして、受付をはじめとしたスタッフに大きな負担がかかっていました。『ミニイク』には獣医療にまつわるあらゆる情報が集約されていますから、紙から紙へと転記をする必要はありません。人為的なミスを未然に防げるだけでなく、雑務が大幅に削減されることによってスタッフそれぞれが本来の業務に集中できます。さらにLINEのオンライン予約を活用すれば、診察後のフォローアップをしたり、健康診断キャンペーンの告知などを行ったりすることも可能になります。 とはいえ、獣医療ワーカーの中にはアナログからデジタルに切り替えることに不安を感じる方も少なくないでしょう。そのためアナログならではのメリットを考慮して、『ミニイク』の電子カルテは紙のカルテと同じようにスケッチやメモを自由に書き込めるようになっています。また、機械の操作が苦手な方にも手軽にお使いいただけるよう、直感的な操作を可能にし、スピーディなデータ処理によって快適性を高めています。『ミニイク』をお使いいただくことで獣医療ワーカーに余裕が生まれて、これまで以上に動物をかわいがったり、獣医療にさらなる情熱を傾けてくださったりしたら嬉しいです。

経営者の心に残ったエピソードEPISODE

獣医療界のビッグネームと契約! 思いがけないご縁に感謝し、さらなる高みを目指す

今まで会社を経営してきた中で、一番心に残っているエピソードをお聞かせください。

獣医療の世界は狭いと言いますか、知り合いが別の知り合いにつながっていたりすることが良くあります。実は『ミニイク』を最初に導入してくださったのは、そのような繋がりからご紹介いただいた著名な先生でした。その先生は、この世界では知らない人はいないほどの地位と権威のある方なのですが、私たちの理念に共感してくださり、記念すべき最初のご契約者となりました。 このときはもうとにかく嬉しく、ありがたく、人のあたたかさに触れた思いがしました。最初はシステムの不備などがあって謝罪に伺う場面も多々あったのですが、それでも私たちを応援してくださる先生の期待に応えるためにも、さらなるサービスの充実に努めたいと思っています。

私たちの「ビジョン」VISION

世界中の動物たちのヒーローになり、誰もが幸せに暮らせる社会の実現を目指す

あなたの会社の仕事で、どのような社会を実現していきたいですか?

ホームページにも明記していますが、当社のビジョンは「Be a Hero.」世界中の動物たちと獣医療ワーカーのヒーローになることです。獣医療の現場が抱えるさまざまな課題をテクノロジーの力で解決することにより、動物たちも、動物に関わる人たちも、みんなが幸せに暮らせる社会をつくりたいと思っています。 この大きな目標を達成するためにメンバーたちと協力して日々プロダクトづくりに励んでいるわけですが、すべての軸となるのは「HERO」と「WHY」の2つのキーワードです。自分たちがヒーローであるためには何をすべきかを考え「なぜ?」と疑問に思ったことを解決するための手段を考える。そうして生み出したプロダクトの品質を高めることによって、ユーザーを増やしていきたいと考えています。 かつて私自身が経験したように、獣医療にまつわる労働環境は非常に厳しいものでした。また海外に目を向けると、日本よりさらに過酷な環境で仕事をしている獣医療ワーカーも少なくありません。そのためまずは日本、そしてアジア、ヨーロッパへと『ミニイク』を広め、すこしでも多くの動物と獣医療ワーカーのお役に立ちたいと思っています。

私たちの「SDGs」SDGs

差別のない環境づくりに積極的に取り組み、共に働くメンバーたちのヒーローに

SDGsの取り組みについてお聞かせください。

会社の性質上、DXの推進や技術革新というのは日々の業務の中心になっている部分です。そのほかは当社のテーマでもある「ヒーローならばどうするか?」という視点で考えると、取るべき行動が明らかになってきます。 たとえばジェンダーフリー。ヒーローであれば男性・女性にかかわらず、人類すべてを応援するはずです。当社としても性別を超えてたくさんの仲間を迎えたいと思っていますし、キャリアプランを明確にして、たとえライフステージの変化などがあっても長く一緒に仕事をしたいと考えています。また社内のハラスメントについてもトラブルが起こる前に未然に防ぐことを徹底しています。特にセクハラ・パワハラに関しては最初に手をつけ、社内の公式な文書で明確な規定を設けています。

私たちの「チーム作り」TEAM

何でも言い合い、十分なコミュニケーションをとり、1人1人の活躍を見守る

スタッフの成長をサポートする取り組み、能力を引き出すために工夫していることをお聞かせください。

『ミニイク』を開発した目的の1つが獣医療ワーカーの職場環境を改善することでしたので、当社としても率先して働きやすい環境づくりに努めています。勤務形態はフルリモート・フルフレックスで、コアタイムは設けていません。たとえば朝、子どもが起きる前にササッと仕事をしたり、家族が寝た後の夜間に仕事をしたり……。目安として1日7時間、週に35時間労働をクリアしてもらえれば、時間帯や曜日を問わずいつでも仕事をしていいことにしています。 自分のライフスタイルに合わせて自由に働ける環境を提供するのはもちろん、トップとしてはメンバーのみんなに安心して働いてもらえるようにしなければいけないと思っていて、何でも言いやすい雰囲気づくりというのは特に意識していますね。とはいえ普段は直接顔を合わせることがないので、HP上に「MiniWiki」というページをつくって、あらゆることを明文化しています。そうした取り組みのおかげか、メンバーが自発的に「お菓子会」などを企画してくれて、みんなでインターネット上の仮想空間に集まって話をしたりしています(笑)。そんなふうにメンバーのみんなと十分なコミュニケーションをとりながら、1人1人の成功を支えていくことが自分の仕事なのかなと思っています。

もしも自分自身が会社の社員だったら、会社に期待することは何ですか?

私は獣医師として動物たちを救う道を閉ざされ、自分の無力さを痛感したことで獣医療を支える側に回ろうと決めました。獣医師として過ごす中で、飼い主さんに愛され大切にされて暮らしている動物たちがいる一方、医療の手の届かないところに置きざりにされている動物がいることを知りました。大きな夢と希望をもって獣医師になりながらも現場を離れてしまった人がいること、獣医療ワーカーが置かれている厳しい労働環境もよく分かっています。だからこそ、現状を変えるきっかけをつくりたいと思ったのです。 動物を中心に、動物に関わる人たちみんなが幸せに暮らせる社会をつくること。そんな大きな目標を掲げたのだから、多少大変な思いをすることがあってもやり遂げてほしい、やり抜いてほしいというのが私の願いです。頑張り抜いた先にはきっと、獣医療ワーカーたちにとって働きやすい世界が広がっているはずですから。何があっても諦めず、そして日々の体調には十分に気を付けて(笑)目の前にある課題を1つずつクリアしていってほしいなと思います。

最後に、スタッフに向けた感謝の言葉や社外に向けたメッセージをお願いします。

日々の業務はフルリモートなので、メンバーと直接顔を合わせるのは忘年会など年数回に限られます。そのため何事も言葉にして残すようにしているのですが、メンバーにきちんと伝わっているかというと自信がありません。改まって話をするとなると少々照れますけれど(笑)この会社に来てくれてありがとう、と、心から思っています。 2019年に会社を立ち上げた当初は、この先どうなっていくのか自分自身も分かりませんでした。そんな会社を選んでくれて、同じ目標に向かって頑張ってくれて、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。これからも言いたいことを言い合い、1人1人が活躍できる環境をつくっていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

ミニイク株式会社CEO/獣医師黒川雄介

出身地
埼玉県
趣味
読書
好きな音楽・アーティスト
ボンジョビ、アヴリル・ラヴィーン、マリリン・マンソン、あいみょん、フジコ・ヘミングなどなど、ジャンル関係なく、色々聴きます。
好きな場所・観光地
公園や、出張先のホテルの部屋など、一人になれるところ