有限会社 正司建設

INTERVIEW

代表者名

正路 正司

所在地

神奈川県横浜市青葉区大場町930-112

設立年

1994年

事業内容

  • 建築・工事業
  • 土木・建築設計
  • 住宅・事業所向け設備
  • 居住用リフォーム
  • 事業用リフォーム
  • 建造物解体工事
  • 注文型住宅建築
  • ビル建設

リモートワークの普及や働き方の多様化に伴い、慢性的な人手不足に悩む業界は少なくない。古くから“3K”のイメージがつきまとう建設業界もその一つで、近年は作業効率化やコスト削減なども大きな課題になっている。横浜市青葉区の正司建設で代表を務める正路氏は、一級建築士であり腕利きの職人をまとめる現場監督だ。耐久性に優れた建物づくりに力を注ぐ正路氏に、現場で直面した困難や建設業界の今後の展望などを聞いた。

INTERVIEW

有限会社 正司建設代表取締役正路 正司

私たちの「会社」BUSINESS

どこにも負けない品質を武器に、設計・施工・メンテナンスをトータルサポート

会社の事業内容や設立までの経緯、この分野を選んだ理由をお聞かせください。

正司建設は建物の設計から施工、さらに施工後のメンテナンスまでをトータルに手がける建設会社です。設計事務所さんから個人住宅の施工を依頼されることがあったり、自分たちが手がけたマンションの定期メンテナンスを請け負うことがあったり。戸建てから集合住宅まで幅広く対応しています。 私は岩手県の出身で、兄は地元で大工をしていました。私も兄を手伝うことがあったりして、もともと建築の仕事には興味を持っていました。とはいえ自分としては手を動かすより頭を動かすほうが得意だったと言いますか(笑)。学校の勉強では理数系が好きでしたし、実際にものづくりに携わるよりも、緻密な計算のもとに構造物を設計するほうが向いているように思えたのです。昼は働きながら夜は専門学校に通って二級建築士の資格を取り、一級建築士の試験に合格したのは32歳のときでした。 正司建設を設立したのは1994年の秋、バブルがはじけて建設会社の倒産・合併が続いた時期でした。ご多分にもれず私が勤めていた会社もなくなってしまい、せめて自分と関わりのあったお客様だけでも何とかしなければとの思いで独立を決めました。はじめは以前の会社で一緒に働いていた営業マンと2人でスタートし、今では社員が5人にまで増えました。

この仕事や業界の魅力、やりがいをお聞かせください。

すこし前になりますが、大手建設会社のCMのコピーに「地図に残る仕事」というものがありました。私たちの仕事はまさにこれにあたり、道路や橋といったスケール感はないものの、個人住宅やマンションなどを完成させれば必ず地図に記載されます。また、出来上がった建物をご覧になったお客様が喜んでくださる姿を見ることは、この仕事をしていて何よりもうれしい瞬間です。工事中は本当に大変な思いをする場面もあるのですが、建物が完成したときの達成感は何ものにも代えがたいです。ですからぜひ、若い世代の方々にもこの仕事の醍醐味を味わってほしいと思っています。 私が専門学校で建築を学んだように、今も大学などで建築学を専攻している学生が多くいることでしょう。ところが最近の若者たちはキレイな職場・快適な環境を求めて設計事務所などに就職する傾向があり、どうしても工事の現場は敬遠されがちです。でも私自身がそうだったように、現場に出るからこそ知識や経験が豊かになり、人脈が広がっていくものです。若者たちにも実際に工事の現場に携わり、自分の手がけた仕事が形になる喜び、完成した建物が地図に残るというやりがいを体験してほしいですね。私たちはお客様が何十年と暮らしていく“人生の宝物”をつくっているのですから。

会社の強みや主力商品の魅力をお聞かせください。

建物が完成するまでには実にさまざまな工程があり、必要になる技術も多岐にわたります。そうした工事の現場において「プロのノウハウを集結し、どこにも負けないクオリティを提供する」ことが私たちのプライドであり、クライアント様にご支持いただいている理由だと思います。 私はこれまで長く現場監督を務めてきましたが、施工中は必ず毎日現場に足を運ぶようにしています。現場監督は文字どおり、作業がスムーズに進むように現場を管理するわけですですが、要所要所をきちんと押さえて設計図通りの建物を仕上げることも大事な仕事です。たとえば木枠をつくってコンクリートを流し込む際、少しでもゴミが入れば強度に関わり、十分に時間をおいて木枠を外さないとヒビ割れができてしまいます。そのため私が携わる現場では当たり前のことを丁寧に行うことを徹底し、壁紙を貼ってしまえば見えなくなる箇所やコンクリで固めてしまえばごまかせるような部分にも目を光らせています。 とはいえ私が声をかける職人さんはみんな「この道何十年」という技術者ばかりですから、何も言わなくても最高の仕事をしてくれることはよく分かっています(笑)。その道のプロといわれる職人さんたちのおかげで、目に見えるところも・見えないところも一切手抜かりのない工事を行うことができる。それこそが私たちの強みであり、この仕事はまさに“人脈こそ宝”だと感じます。

経営者の心に残ったエピソードEPISODE

極狭道路を突破せよ――ミッション完遂のため隣人宅の門扉を破壊して資材を搬入

今まで会社を経営してきた中で、一番心に残っているエピソードをお聞かせください。

工事の現場は本当にさまざまで、一つとして同じものはありません。そのため現場を取り仕切る監督はその時々の状況に応じて柔軟に対応する必要があり、言ってみれば“コーディネーター”のような役割を担います。職人さんたちを上手にまとめて工期に遅れが出ないようにするのはもちろん、時には近隣にお住まいの方々と交渉したり工事に対する理解を求めたりしなければなりません。現場監督の仕事は実に苦労が多く、忘れられない思い出は数えきれないほどあります。その中で面白いと言ったら言葉が悪いですが、建物を「つくる」はずの私たちが、建物を「壊す」ことになってしまった現場がありました(笑)。 私たちがリフォームを請け負った建物は“再建築不可”といわれるような幅の狭い道路の先にあり、何度トライしても資材を積んだトラックが現場にたどり着けずに立ち往生していました。そうして考えに考えた末「これしかない!」となった方法が、お隣の家の門を壊すというものでした。とはいえ、ある日突然「お宅の門を壊していいでしょうか?」と尋ねられたら、みなさんきっと即座に断りますよね(笑)。そのお気持ちは重々承知なのですが、私たちも門を壊さないことには仕事になりません。そのときはもう平身低頭、誠心誠意お願いをして「壊した門は必ず原状回復いたします」との約束のもと、無事にお許しをいただきました。 「つくる」ことができるからこそ「壊す」という提案ができきる……それもこの仕事ならではのことかもしれません(笑)。今後ももし、施主様や近隣の方にご迷惑をおかけすることがあった場合には、期待以上の満足感を得ていただけるよう心を込めて仕事をしたいと思っています。

私たちの「ビジョン」VISION

“住まい”は人の生活に欠かせないもの。マイナスイメージを一掃して若い力を育てたい

あなたの会社の仕事で、どのような社会を実現していきたいですか?

以前勤めていた会社に入社した当時、建設業は「10人入って8人辞める」と言われるくらいきつい仕事でした。それは今も変わらず、現場仕事はきつい・汚いと嫌われ、建築を勉強した若者たちが設計のほうに流れてしまっているのが現状です。もちろん設計図がなければ工事に着手できませんが、設計図だけあっても工事を担う職人、職人をまとめる現場監督がいなければ完成までたどり着けません。今後も日本の建設業界が安定的に発展していくためには、深刻な人手不足に陥る前に人を育てる必要があるのではないでしょうか。 私たちの仕事は、人が暮らすうえで欠かせない衣・食・住の1つ“住”の部分を担っています。国が定める安全性や耐久性をクリアするというのはもちろんですが、街並みに溶け込むような美しい外観、室内の快適性などにも配慮が行き届いた建物こそが評価されるべきではないでしょうか。今まさに売り出されている物件の中には、職人の手で丁寧に仕上げられた建物もあれば、工期やコストの関係で少々雑につくられた建物もあるかもしれません。工期優先・価格重視とするのか、時間と費用をかけても満足のいくものを手に入れるのか……そこに住まう人が十分に吟味し、納得して購入できるような仕組みができたらいいですね。

私たちの「SDGs」SDGs

じっくり時間をかけて丁寧な仕事を徹底し、長く快適に過ごせる家づくりを

SDGsの取り組みについてお聞かせください。

工事の現場ではさまざまな種類の廃棄物が出るため、それらをきちんと仕分けして、リサイクルして、という点は現場監督として管理を徹底しています。また建築を通して街づくりに参加させていただいている者として“地域社会への参画”も意識しており、つい先日も特殊詐欺防止啓発の一環として広告を出し、表彰されたことがありました。 一方でSDGsを語るなら、私たちが携わる全ての建物が“持続可能なもの”であることこそ大事だと思っています。最近はとかく予算ありきで業者が選定され、工期ありきで施工計画が立てられることも多いと聞きます。たしかに契約者の多い大規模なマンションでは致し方ない部分もありますが、個人住宅に関してはじっくり時間をかけて、長く快適に暮らせる家をつくりたいというのが私の思いです。施工は時間をかけてこそ……です。これから30年、50年と暮らしていくことを考えれば、工期が1週間や10日延びたところで何を急ぐ必要があるでしょうか。急いだがためにどこかに不具合が出るのなら、真面目な仕事をしてお客様に心からご満足いただきたい。そんなふうに考えながら日々取り組んでいることが、私なりのプライドと言えるかもしれません。

私たちの「チーム作り」TEAM

失敗から学べることはたくさんある。常にチャレンジする姿勢で成長してほしい

スタッフの成長をサポートする取り組み、能力を引き出すために工夫していることをお聞かせください。

私は一級建築士の資格を持って仕事をしていますけれど、ほかにも工事の現場ではクレーンの運転免許が必要になったり、安全帯(墜落制止用器具)を正しく使用するための講習を受けたりしなければなりません。そうした業務を行ううえで必須の資格に関しては、会社が費用を負担するなどのサポートをしています。 一方で、社員たちが働く環境をよりよいものにしていくことも私の大切な役割だと考えています。建築関係の仕事はどうしても、きつい・汚い・危険といったイメージがつきまとい、若者たちに敬遠されがちです。ですからせめて自分の会社だけでも働きやすい環境を整えてあげて、やりがいを持って仕事をしてもらいたいのです。たとえば週に2日は必ず休めるようにしたり、サービス残業をゼロにしたり、しっかり休んでリフレッシュできる環境を整えたうえで、労働に見合った報酬を得られるようにしたいです。私たちの仕事はどうしても天候に左右されることが多いため難しい面もあるのですが、大切な社員のためにもしっかり取り組まなければと思っています。

もしも自分自身が会社の社員だったら、会社に期待することは何ですか?

私は昔ながらの職人といいますか「見て覚えろ」みたいな所があるため、自分が社員だったら「もっと細かく教えてください」と言うかもしれませんね(笑)。この業界では“墨出し”といって、建物をつくる際の基準となる線を引いていく作業があったり、所々正確に寸法を測る必要が出てきたりします。そうした作業は教え込むというよりも、誰かの作業を見て覚え、実際に自分でやってみて、失敗しながら学んでいってもらわなければなりません。 社員たちのことはかわいいですし、それぞれが大きく成長してほしいと願っています。ですからみんなには「失敗したからこそ学べることがある」という気持ちで、結果を恐れずにチャレンジしてほしいです。私自身も社員の立場で物事を考えるようにして、できる限りのサポートをしたいと思っています。

最後に、スタッフに向けた感謝の言葉や社外に向けたメッセージをお願いします。

あまり面と向かって褒めたりすることはないのですが、社員たちを見ていると「毎日がんばっているな」と思います。どんな仕事でもそうですが、建築関係の仕事は覚えることが山ほどあります。墨出しの仕方、職人さんたちの取りまとめ、役所に出す書類の作成、周辺住民との折衝など業務は多岐にわたり、技術だけでなく勤勉さやコミュニケーション能力なども求められます。 施工中は本当に、本当に大変な思いをするのですけれど(笑)、完成した建物を目にした瞬間は全ての苦労がパーッと吹き飛ぶものです。そして、そんな達成感を社員みんなで共有できることを私はとても嬉しく思っています。新しい現場が始まれば、また新たな困難が待っているかもしれないけれど、みんなで力を合わせてがんばっていきましょう。これからもよろしくお願いします。

有限会社 正司建設代表取締役正路 正司

生年月日
昭和28年8月30日
出身地
岩手県
血液型
O型
趣味
ゴルフ