健康経営とは?健康経営への投資効果は3倍!具体的なメリットと実践方法

2022-11-14

大後 ひろ子

C-OLING代表 ブランディングコンサルタント

組織組織開発

健康経営とは、「経営管理」と「健康管理」を統合的に捉え、個人の健康増進を行うことを指します。近年の社会や経済構造、そして働き方の変化は、働く人の「心と身体」に大きな影響を及ぼしています。

特に下記のような傾向がある企業は、自社の健康経営について早急に考える機会を持つと良いでしょう。

今回の記事では健康経営の基本的な意味から、企業が健康経営に取り組むメリット、そして企業で健康経営を取り入れるための実施方法について解説します。

健康経営とは

企業において欠かせない健康経営の基本的な意味と、根本的な目的について解説します。

また、労働人口が低下する中、将来に向けた労働力の確保や従業員の定着、活躍の重要性が求められている。そうした中、多くの企業では従業員の健康増進を重要な経営課題と位置づけ、積極的に対応を進める動きが広がっている。その際のキーワードが「健康経営」である。

健康経営の定義


健康経営とは、「経営管理」と「健康管理」を統合的に捉え、個人の健康増進を行うことを指します。そもそもはアメリカの臨床心理学者・ロバート・ローゼン博士が提唱した概念「ヘルシーカンパニー」に基づいた経営方針です。従業員の健康を経営的視点から考え、互いに“Win-Win”の関係を実現する「経営手法」を戦略的に実施するものとして生まれました。

健康経営の目的

健康経営に関心が高まっている背景として、下記のような日本の構造的課題が挙げられます。

  1. 生産年齢人口の減少と従業員の高齢化 
  2. 深刻な人手不足
  3. 国民医療費の増加

これらの国家的課題に対して、企業も従業員の高齢化に伴って病気や定年による優秀な人材が継続して働けなくなるリスクや、国民医療費の増加が企業の社会保険料負担の増加リスクを抱えています。また少子化による深刻な人材不足の課題も深刻です。
そのためこれからの日本で継続した企業活動を行うには、長くいきいきと企業で働いてもらえる環境を作り、健康経営への取り組みが不可欠であると考える経営者が増えているのです。

企業が健康経営に取り組むメリット
 

 

企業が健康経営に取り組むメリットについて4つのポイントから解説します。

生産性の向上

従業員が心身ともに健康な状態で業務に取り組むことができれば、集中して良いパフォーマンスを発揮することができます。体の不調や悩み事は、知らず知らずに脳の働きを阻害し、集中できずミスを起こしたり、作業スピードが落ちるなどのパフォーマンスを下げてしまう要因になります。

健康日本21フォーラムが発表した「疾患・症状が仕事の生産性などに与える影響に関する調査」によると、「健康な状態での業務遂行能力を100としたとき、メンタル面で不調があると業務遂行能力は約半分に低下、肉体の不調があると約7割に低下」という調査結果が出ています。

そのためにも、職場環境の改善によるメンタルケアや、健康診断や運動習慣の呼びかけによる身体のケアを行うことが重要です。


従業員が心身ともに健康的に働くことができれば、ストレスが軽減し、業務の効率化が図られ、生産性の向上が期待できます。  職場環境の改善や健康増進により、従業員一人一人の仕事へのモチベーションも高まり、職場全体の活性化にも繋がります。  

リスクマネジメント

先の生産性の向上のためにも健康経営は欠かせませんが、心身の「出勤して仕事はできるけれど不調」は周囲から気づきにくく、メンタルを崩してうつ症状に陥ってしまったり、最悪の場合、心筋梗塞やくも膜下出血などの命に関わるリスクがあります。

そういった症状を発症した人材が欠勤や入院に至った場合、企業はすぐに代わりの人材を確保するために大きなコストがかかります。また、心身の疲労は通勤中や勤務中のミスを引き起こしやすくします。慢性的な睡眠不足による運転事故や、業務的に大きな損失を生んでしまう恐れがあります。そのための リスクマネジメントとしても健康経営が注目されています。

従業員の欠勤・休職・離職率の低下 

従業員にとって働きやすい職場環境の改善は、心身の不調の予防に効果をもたらします。その結果、従業員の欠勤・休職の低下が望めるため、人事業務にかける時間やコストを大幅に削減することができます。 また企業側から健康に配慮する取り組みを行うことで、従業員の企業に対するエンゲージメントが高まり、離職率の改善にもつながります。

企業価値・イメージの向上 

健康経営に関する取り組みを社外にも発信することによって従業員を大切にする会社というイメージの向上にもつながります。さらに経済産業省の「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」に選出されることで、求職者からの印象や金融機関や関連企業からも評価されやすくなるなど、社会的な価値が高まるというメリットがあります。

企業での健康経営の実施方法

企業での健康経営の実施方法について解説します。

健康経営宣言を社内で行う

まず最初に、健康経営を経営理念の中に明文化し、社内広報やプレスリリースで健康経営を行うことを社内・社外に宣言します。企業のトップが健康経営の重要さを十分に理解し明文化した上ですべてのステークホルダーに発信することが理想的です。
この時、加入している全国健康保険協会や健康保険組合では、健康宣言事業所を募集している場合があるので、確認して「健康企業宣言」にも参加すると良いでしょう。

実施できる組織を整える

次に健康経営に取り組むための組織を整えます。担当者や担当部署を設置するなど、健康 経営に取り組みやすい組織体制を作ります。具体的には、人事部などに担当者を配置したり、外部健康経営アドバイザーなどの手を借りるなどします。また、新しい担当や担当部署の設立の場合は知識がないケースが多いので、企業の健康管理のための研修を行うことも必要になるでしょう。また企画段階から役員会で取り上げるなどすぐに行動ができる状態を作ることが重要です。

課題を確認する

健康経営を進める上で、従業員の健康課題を把握することが必要です。課題の把握のためには、健康診断やストレスチェックテストの結果や、有給休暇の消化率や残業時間の累計・月平均・週平均についても洗い出してデータ化します。これらのデータから健康経営の課題を把握する上での基礎データを導き出します。

この基礎データをもとに、残業の多い部署や人物、高いストレスを抱えている従業員の存在を割り出すことができます。

具体的な計画と実行 

自社の健康課題を明らかにし、この基礎データを導き出すことができたら、課題を打破するための具体的な施策を計画・実行します。

必要な改善内容に合わせて実行する施策を決め、改善目標を達成できるような計画を従業員に対し告知し、取り組みを実施します。

取り組みの評価を行う

取り組みの実施後、一定期間が経過したら次の計画の参考になるよう結果の測定を行いましょう。その時、「実施した項目」「Before/Afterの数値」をデータに残すことも重要です。具体的に取り組みの効果を確認・評価することで、次の取り組みに生かしていきます。

健康経営を取り組むための注意点
 

 

健康経営に取り組むための注意点について解説します。

健康経営の重要さを全社に浸透させる必要がある

健康経営には多くのメリットや様々な実施方法がありますが、その意識が企業全体に浸透しなければ効果を発揮しません。自身の身体のケアに無頓着な人や、大きなストレスを抱えている人などが行動を起こせることが重要です。そのためにも、組織内の影響力がある人物を巻き込み、職場環境に浸透させることで、いつの間にか多くの人々が健康経営に参加していた、という自然な流れを作るよう心がけましょう。

トップの理解必要不可欠

健康経営を企業が行う上で重要なことは、健康管理の大切さを企業のトップが十分に理解し実践することです。 企業として健康経営に人・モノ・カネといった経営資源を割り当て、企業全体の取り組みとして全社で認知され、実行されるような仕組みづくりが重要です。

まとめ

健康経営を取り組むには多くの課題もありますが、企業経営において長期的な視点から大きなメリットがあります。働き方改革の推進や生産的な業務遂行において必要不可欠な経営手法です。今回の記事を参考に、自社の健康状態の現状の把握から始めてみましょう。
 

WRITER

大後 裕子

C-OLING代表

生活用品メーカーで10年間企画職に従事し、企画立ち上げから海外工場との商談、販促まで商品開発のゼロから一貫して行い、多くの商品をブランディングし、リリース。 8年販売され続けるヒット商品を始め、開発商品点数累計約1,200点、約1,700店舗へ導入。ブランディングを主軸とした、経営コンサルティング、 社内教育の3つの事業を通して、多くの人の生活に豊かさを提供ができる企業を社会に増やしたいと考えています。